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2章 第2の婚約者

25.目覚めた後に

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「おはようございます、お嬢様」

「ああ、おはよう」

ふやけた体(実際にはそうでもなく、もちもち美肌のままだったが。やはりこの肉体は凄い)に服を通しながら、メノウに答える。
リヒーは私が目覚めたことに気づくと、一礼して退却。
入れ替わりにメノウが登場し、私の手入れを実施。
その後服を着せつつ、今に至る。
状況としてはそんなところだ。

「ゴットファザ様がお戻りになりました。後でお話があるとのことなので、ご記憶を」

「ああ、分かった」

気の無い返事をする。
頭が少し、呆けている。
惚けている、というべきなのかもしれない。
誰かに包まれて、肌を触れあわせながら夜を超えた経験など、ついぞ一度もなかったからな。
蟹の如く、
海老の如く、
硬い殻に覆われた生き物の『内側』が悉く柔らかいように、私の精神という内側も随分と柔らかいのかもしれない。

だが、ぼうっとばかりはしていられない。
とうとう『お父様』とやらに会えるのだ。
彼ならば、この珍妙不可思議な状況について把握している可能性は高い。
別段、恨みもない。
むしろ感謝すべき相手であるかもしれない。
あのまま私が滅んでいたら、自殺が成功していたら、こんな気持ちも思いも味わうことなく、文字通り『終わって』いたのだから。

だが、安心はできない。
たまたま転生先が美しかったというだけで、『お父様』には別の目的があるのかもしれない。
慈善事業でやっているわけではない。
ビジネス、あるいは生き様か。

一つの領地を統治するための手段。
あるいは、他の領地を全て蹂躙し尽くして、一国を統治するための手段として、私を使うのかもしれない。
美と力を持つ、私に。

「念のためご報告しておきますが、アルベルト様は例のお部屋にて軟禁中です。ご指示があれば、いつでもお楽しみできるよう、準備は整えてあります」

アルベルト?
ーーああ、いたか、そんな奴。
リヒーのおまけ的な奴が。

「彼の基本的な身の回りのお世話も、片手間に済ませられますので、ご心配なく」

「ああ、よろしく頼むよ」

適当に返答し、思考をまだ見ぬ『お父様』に集中する。
彼はどんな男で、
私をどうしようと、
私をどう使おうとしているのか。

何を聞き、
これからどうすべきかを、私は考える。
呆けた頭で、
惚気た思考で、
火照った体で。

「……まあ、いいか。場当たり主義のスタンドプレーで行こう」

「お嬢様?」

「気にするな、ただの独り言だ」

キョトンとするメノウをそのままに、気持ちを切り替える。
失敗したからどうなのだ、
うまくいかなかったからどうなのだ、
どうでもない。
これは夢みたいもの。
哀れだった私に神さまがくれた、ボーナスステージ。
気楽にいこう、気楽に。
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