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2章 第2の婚約者

40.兄の責務

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知のクリスティア。
クリスティア=ステノンは写真で見るより美形だった。
色白の眼鏡男性であることは写真のままだが、180cm以上あろうかという長身と程よく引き締まった肉体が、彼の美を強調していた。

なんだろう、
この世界の権力者には美に関する遺伝子が改良されているのではなかろうか?
いや、実際彼の弟であるバルバトロスは改良されているのか。

「それで、相談というのは?」

「バルバトロスを封じて欲しい」

弟は兄を殺せと頼み、
兄は弟を封じろと頼む。
死刑か終身刑かの違い。
この兄弟の確執は大きいらしい。

「貴女の話は聞いている。アルベルトの小僧が利用していた火龍を一瞬で葬ったという話も」

上流階級には真実が出回っているようだ。
聖アルベルト伝説は通じないらしい。

「魔法、既存の法則では捉えることができない、基本再現性のない超常的な力。選ばれし者しか使用を許されない、力の塊。それがよりにもよって、貴女のような美しい女性が手にするとは」

「もしかして、私口説かれてます?」

「失礼、貴女が余りにも魅力的だったので。見たままの感想を直接述べたまでです。どうか、お許しを」

クリスティアさんは丁寧に一礼し自身の行為を非礼と謝罪した。
随分と腰の低い権力者のようだ。
知のクリスティア、文官ということなのだろうが、言葉遣いや所作の端々から彼の人格者要素が滲み出ている。
奔放なアルバトロスとはえらい違いだ。

「話を戻します。先程、弟と会ったかと思いますがーーどうでした?」

「どうでしたも何も、無茶苦茶でしたよ。私の使用人を拘束するは私の魔法攻撃から回復するは無理なお願いをされるはで大変でしたよ」

「無理なお願い、というのは私クリスティアと長兄アルバリア、その二人の殺害のことですよね」

知っているらしい。
ため息混じりに、クリスティアさんは言った。

「信仰上ーー民の管理方法上、領主殺しはできませんからね。やらせるならば、他国の者に任せることでしょう。貴女が拒絶したら、きっと他家の者が後続となるでしょう。貴女が選ばれたのはただの順序と興味です」

「順序と興味?どういうことですか?」

「たまたま弟が一番最初に声をかけたのが、あなたのお父様であるゴットファザ氏であった、そして、あなたが弟と同じように人間以上の力を持っていた。弟は人間を辞めていますから、同じような立場の人間だったものと話をしてみたい、そんな程度の興味です」

「そもそも、どうしてバルバトロスはあんな能力を持っているんですか?」

「それは、父が彼を助けるためにやったのです」

クリスティアさんは伏せ目がちに、彼の過去を語り始めた。
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