追放された悪役令嬢は残念領主を導きます

くわっと

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三章

25.罠と盾と

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蛮族の戦力は多少は削れた。
心理工作、物理工作による罠により分断と一部無力化に成功した。
だが、まだ全然足りていない。
警戒して距離をとられてはいるが、まだまだ多勢に無勢。
注意深く近づき、
ある程度犠牲覚悟で攻められれば、敗北する。
これがただの盤上の勝負であれば、そのような結末しか残っていない。
戦いを始めるまでもなく、詰んでいる。

だが、駒には意思があり命がある。
痛みを感じ、恐怖を感じる。
故に、盤上のような展開にはなり難い。
そこにパトリシアの生きる道が残される。

「さあ、どうした? 仲間の仇を討ちたくはないのか?」

伝わらない言葉で叫ぶ。
仰々しく、
上から目線で。
煽るように、乱すように。
体の震えを隠すように。

蛮族たちは数歩退く。
だが、それは彼女の期待する撤退ではなく。

「弓に火器ーー飛び道具か」

戦術の変更。
近いて罠にかかるなら、近づかなければいい。
遠距離から、数で叩けばいい。
単純かつ明快な回答。

彼らは弓に、引き金に力を込める。
そして恨み憎しみを込めて、それぞれの殺意を放つ。
乾いた音、風を切る音が響く。
だが、それは彼女の赤に当たらない。

「想定済みだ、蛮族よ」

彼女は足元の仕掛けを使用した。
両手は自由なままに、大地を踏み締めることで発動させた。

「×××、×××ーー」

彼女を守る、大きな盾。
いや、盾というには余りに大きく、広い。
最早壁と言っていい。
弓矢はその壁に刺さるのみ、鉛玉はその壁にめり込むのみ。
一部は、取り付けられた装飾を傷つけた。
彼女には届かない。
まるで届かない。
どころかーー

「仲間の亡骸を自分たちでさらに痛めつけるとは。流石は蛮族、やることが違う」

演じるように、
台本を読み上げるように彼女は言う。

彼女を守る盾、いや、壁には装飾が施されていた。
無論、ただの飾りではない。
絵でもない。
本物の人間の死体が、単純の貼り付けられていた。
何も言わず、彼女を守る肉の盾となっていた。

「まだ、続けるか?」

声を張り上げ、恫喝する。
お願いだから、ここで終わりにして欲しい。
お願いだから、もう帰って欲しい。
これ以上私を醜くさせないで。

心の中で何度も祈りながら。
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