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三章
28.悪役の味方
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死んだな、と思った。
叫び声と、何かが振り下ろされたと思われる風を感じて。
命乞いをする時間はなかった。
言葉での交渉は成立しようもなかった。
何もかもが、絶対的に足りてなかった。
私の人生、こうゆうことばかりだ、と彼女は思った。
いつも予想外の事態に振り回されて、計画が潰れる。
あの時も、
あの時も、
あの時も。
不都合や不合理、
予想外や想定外が積み重なって。
私のこれまでの努力を砕く。
いつだって。
今回みたいに。
神様にも嫌われているのだろうと、思った。
生まれた時から、誰からも求められていなかった。
仮に求められたとしても、それは私の家柄や能力、外見的特徴であり私ではない。
私に付随する価値。
ありのままの自分、本当の自分というものを受け入れて、または求められた覚えはない。
例外もあったが、それはその者の存在が例外なだけだった。
今度は彼女は言葉を紡がなかった。
惨めさも見苦しさも逃走中に飽きるほどにした。
もう、空っぽだった。
決めたはずの覚悟も消え失せた。
戦う覚悟、
生きる覚悟、
殺す覚悟。
何もない。
故に、単純な疲労で目を閉じる。
世界が黒で塗りつぶされる。
最後の一瞬、
不意に過去の記憶が頭を過ぎる。
ほとんどがいい思い出ではない。
むしろ悪いそればかりだ。
家族の記憶、
宿敵との記憶、
想い人との記憶。
そしてーー
その一瞬はとても長く感じた。
これは、死を前にすると人は誰しもーーということではなく。
実際に、
現実に、
一瞬が一瞬ではなかった、
という話だ。
振り下ろされたはずの武器は、彼女の体に触れることはなく。
どころか、その持ち主たちを彼方へと飛ばしていた。
武器が散らばり、人が倒れ。
目を開けた世界は、少しだけ変わっていた。
絶望の色が、少しだけ消えていた。
「×××、×××!」
あくまで、彼女にとっての。
蛮族の戦士たちは、絶望していた。
それと同時に驚愕していた。
目の前に現れたそれに。
自分たちと異なる姿、
そしてーーその圧倒的な戦力に。
だが、彼女だけは知っていた。
その存在を知っていた。
名前も知っていた。
ただ、分からないことが一つ。
「どうしてーー貴方がここにいるんですか?」
『彼』がここにいる理由。
そして、もう一つ。
「どうしてーー私を助けたんですか?」
彼は答えない。
パトリシアにとっての敵対者を圧殺するのみ。
それこそが彼のーー
『暴食のアンドレア』
『動く肉塊アンドレア』
『お肉大好きアンドレア』
『残念貴族アンドレア』
『アンドレア・アンドレア』
彼女の祈りは神には届かなかった。
彼女の叫びは神には届かなかった。
だが、彼にだけは届いていたのかもしれない。
そして、ここまで導いたのかもしれない。
アンドレア・エーテルザット。
この辺境の領主が、愛しい人の前に現れた理由である。
叫び声と、何かが振り下ろされたと思われる風を感じて。
命乞いをする時間はなかった。
言葉での交渉は成立しようもなかった。
何もかもが、絶対的に足りてなかった。
私の人生、こうゆうことばかりだ、と彼女は思った。
いつも予想外の事態に振り回されて、計画が潰れる。
あの時も、
あの時も、
あの時も。
不都合や不合理、
予想外や想定外が積み重なって。
私のこれまでの努力を砕く。
いつだって。
今回みたいに。
神様にも嫌われているのだろうと、思った。
生まれた時から、誰からも求められていなかった。
仮に求められたとしても、それは私の家柄や能力、外見的特徴であり私ではない。
私に付随する価値。
ありのままの自分、本当の自分というものを受け入れて、または求められた覚えはない。
例外もあったが、それはその者の存在が例外なだけだった。
今度は彼女は言葉を紡がなかった。
惨めさも見苦しさも逃走中に飽きるほどにした。
もう、空っぽだった。
決めたはずの覚悟も消え失せた。
戦う覚悟、
生きる覚悟、
殺す覚悟。
何もない。
故に、単純な疲労で目を閉じる。
世界が黒で塗りつぶされる。
最後の一瞬、
不意に過去の記憶が頭を過ぎる。
ほとんどがいい思い出ではない。
むしろ悪いそればかりだ。
家族の記憶、
宿敵との記憶、
想い人との記憶。
そしてーー
その一瞬はとても長く感じた。
これは、死を前にすると人は誰しもーーということではなく。
実際に、
現実に、
一瞬が一瞬ではなかった、
という話だ。
振り下ろされたはずの武器は、彼女の体に触れることはなく。
どころか、その持ち主たちを彼方へと飛ばしていた。
武器が散らばり、人が倒れ。
目を開けた世界は、少しだけ変わっていた。
絶望の色が、少しだけ消えていた。
「×××、×××!」
あくまで、彼女にとっての。
蛮族の戦士たちは、絶望していた。
それと同時に驚愕していた。
目の前に現れたそれに。
自分たちと異なる姿、
そしてーーその圧倒的な戦力に。
だが、彼女だけは知っていた。
その存在を知っていた。
名前も知っていた。
ただ、分からないことが一つ。
「どうしてーー貴方がここにいるんですか?」
『彼』がここにいる理由。
そして、もう一つ。
「どうしてーー私を助けたんですか?」
彼は答えない。
パトリシアにとっての敵対者を圧殺するのみ。
それこそが彼のーー
『暴食のアンドレア』
『動く肉塊アンドレア』
『お肉大好きアンドレア』
『残念貴族アンドレア』
『アンドレア・アンドレア』
彼女の祈りは神には届かなかった。
彼女の叫びは神には届かなかった。
だが、彼にだけは届いていたのかもしれない。
そして、ここまで導いたのかもしれない。
アンドレア・エーテルザット。
この辺境の領主が、愛しい人の前に現れた理由である。
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