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4章
37.解釈の仕方
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「あの……パトリシア様、大丈夫ですか?」
「あ、はいーー大丈夫、です」
気がつくと、膝を着いていた。
落とした手紙を再度拾い上げ、改めて内容を確認する。
あの人の文字、
あの人の言葉、
あの人の温もり。
見覚えのある筆跡が語りかけてくるよう。
だが、その言葉は残酷の一言に尽きる。
「何が書かれていたのですか? 差出人が……その……あの有名なお方だったのですが」
「いえ、大したことではありません。まだーー」
言いかけた所で、言葉を切った。
駄目だ、動揺している。
胸の鼓動が早まるのを、
頬が熱を帯びるの感じる。
それどころでは、そんな状態ではないのに。
「とりあえず、少し考えたいことがあるので」
言いつつ、パトリシアは使用人を部屋から追い出した。
やんわりと、それでいて強引に。
怪訝そうな表情のまま、素直に追い出された。
「ふぅ、これで一安心。内容が内容だけに、他人に気を使う余裕はありません」
一呼吸ついて、
額の汗を拭う。
椅子に腰掛け、内容の理解に努める。
記された内容の理解は容易だ。
単純なる死刑宣告。
心は動いていても、理性は十分に稼働している。
物わかりの良い彼女の頭は、感情とは別で稼働している。
ただ、多少の誤作動、不調を誘発させるのだが。
「それにしても、難民、ですか」
引っ掛かる点はいくつもあった。
だが、一番はそこであった。
あの蛮族と呼称され疎まれていた連中が、住処を失いさまよう難民であったーーということになっている。
それはないはずだ。
彼らの外見的特徴、衣類の嗜好性から裏づけは取れている。
それにパトリシアが威嚇に用いた彼らーー亡骸を目にした時の反応からも、その同族であることは明らかだ。
言葉は理解出来なくとも、ある程度は伝わる。
ならば、どうだろうか。
蛮族が難民へと扱いが変化したということなのだろうか。
時間の流れとともに、何らかの理由で彼らの拠点が崩壊、結果住処を持たない流浪の民になったと。
それで平和裏にこのアンドレア・エーテルザットが統治する地域を抜けようとした、と。
ーーあり得ない。
彼らは武装をしていた。
槍で、弓で、火器で。
道中の獣を追い払うため、とはとても言い難い。
前面に侵略の意思が見て取れていた。
力で奪い、支配してやろうという意思を感じた。
……って、感覚的なものばかりだ。
何一つとして、証拠として扱えるものが見当たらない。
どの事実も、見方を変えればどうとでも解釈できる。
これではいつまでたっても解答に辿りつかない。
無駄な時間。
「あ、そうだ」
思考を中断して、彼女は言う。
唐突に閃いた、という風に。
「あの子に確認してみよう」
関係者に確認する、という至極真っ当な行動を。
「あ、はいーー大丈夫、です」
気がつくと、膝を着いていた。
落とした手紙を再度拾い上げ、改めて内容を確認する。
あの人の文字、
あの人の言葉、
あの人の温もり。
見覚えのある筆跡が語りかけてくるよう。
だが、その言葉は残酷の一言に尽きる。
「何が書かれていたのですか? 差出人が……その……あの有名なお方だったのですが」
「いえ、大したことではありません。まだーー」
言いかけた所で、言葉を切った。
駄目だ、動揺している。
胸の鼓動が早まるのを、
頬が熱を帯びるの感じる。
それどころでは、そんな状態ではないのに。
「とりあえず、少し考えたいことがあるので」
言いつつ、パトリシアは使用人を部屋から追い出した。
やんわりと、それでいて強引に。
怪訝そうな表情のまま、素直に追い出された。
「ふぅ、これで一安心。内容が内容だけに、他人に気を使う余裕はありません」
一呼吸ついて、
額の汗を拭う。
椅子に腰掛け、内容の理解に努める。
記された内容の理解は容易だ。
単純なる死刑宣告。
心は動いていても、理性は十分に稼働している。
物わかりの良い彼女の頭は、感情とは別で稼働している。
ただ、多少の誤作動、不調を誘発させるのだが。
「それにしても、難民、ですか」
引っ掛かる点はいくつもあった。
だが、一番はそこであった。
あの蛮族と呼称され疎まれていた連中が、住処を失いさまよう難民であったーーということになっている。
それはないはずだ。
彼らの外見的特徴、衣類の嗜好性から裏づけは取れている。
それにパトリシアが威嚇に用いた彼らーー亡骸を目にした時の反応からも、その同族であることは明らかだ。
言葉は理解出来なくとも、ある程度は伝わる。
ならば、どうだろうか。
蛮族が難民へと扱いが変化したということなのだろうか。
時間の流れとともに、何らかの理由で彼らの拠点が崩壊、結果住処を持たない流浪の民になったと。
それで平和裏にこのアンドレア・エーテルザットが統治する地域を抜けようとした、と。
ーーあり得ない。
彼らは武装をしていた。
槍で、弓で、火器で。
道中の獣を追い払うため、とはとても言い難い。
前面に侵略の意思が見て取れていた。
力で奪い、支配してやろうという意思を感じた。
……って、感覚的なものばかりだ。
何一つとして、証拠として扱えるものが見当たらない。
どの事実も、見方を変えればどうとでも解釈できる。
これではいつまでたっても解答に辿りつかない。
無駄な時間。
「あ、そうだ」
思考を中断して、彼女は言う。
唐突に閃いた、という風に。
「あの子に確認してみよう」
関係者に確認する、という至極真っ当な行動を。
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