こんな時どうする? 異世界兄妹物語

くわっと

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6.物を捨てるときは、罪悪感を抱きつつ、捨てよ! それが未来の無駄遣いを防ぐ!

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「ミズーリの村へようこそ! 何もない村ですが、どうぞくつろいでください!」

 ガハガハと効果音がつきそうなくらい、快活に笑う男。
 ハリウッドスターに出てきそうな、筋骨隆々な男。腕周りは特に太く、丸太のようだった。
 こんな男が父親ならば、その娘もさぞ体育会系の見た目をしていることだろう。だが、残念な事実が一つ。
 彼はアリシアの父なのである。
 
 ーー

 あれから仲良く手をつなぎながら歩くこと1時間、アリシアの住む『ミズーリ村』に到着した。
 平野の中にぽつんと存在する、孤立しているような村。
 家のような建物はいくつかあって、そこで家族単位で住んでいるそうだ。アリシアの家に着く前に、妹の提案で一通り村を案内してもらった。
 畑、キャベツのようなものがたくさん生えていた。
 道具屋、野菜っぽいものをはじめ、食べ物やナイフっぽいものなど日用品らしきものが陳列されている。剣とか弓矢などの古風な武器も並んでいた。見た感じだと、銃や爆弾などの近代兵器はなさそうだ。アリシアの尋ねると、道具屋での買い物は金属でできた貨幣を使うとのこと。
教会、歴史の資料集で見たことがある感じの建物。だが、何を信仰しているのかはよくわからない。アリシアに尋ねたが、昔からあった、とだけ答えた。
集会場、お祭りとか村全員がかかわることを決めるときはここを使うらしい。内装は殺風景で、何も物は置かれていない。ただのがらんどうとした、空間だけが広がっている。
主だった場所は一通り見て回った。
 文字は明らかに日本のそれではないし英語でもドイツ語でもなかった。だが、それが意味するところはありがたいことに日本語で理解できた。これも妹が言うところ『ご都合主義』的な要素なのだろう。
 雰囲気としては、中世ヨーロッパの田舎町、という感じだろうか。
 昔、この景色と同じようなものを、これもだが、歴史の資料集の挿絵で見た覚えがある。
 
 最後に、アリシアの家に到着した。
 そして、今に至る。

ーー

「なるほど、なるほど! 森の中でアリシアと会ってお友達になったと! それは素晴らしい! 我が娘アリシアは見た目はこんなに可愛いが、お友達がいなくてな!」

 声が大きく、一文一文に『!』がつきそうな口調。

「おっと! 自己紹介がまだでしたな! 俺の名前はゴットファザ! 気軽にファザさんとも呼んでくれ!」

 ファザさんは、そう言って快活に笑った。
 妹も、それに応えるように笑い返した。
 私は苦笑いで返した。

「ところで、お二人はどこから来られたのか!? 見たことがない格好だが!」

「日本から来ました」

 と、妹はふつうに返した。
 そこは『遠い所』とか『あっちのほう』とかで適当に誤魔化すべきではないのだろうか。
 ファザさんは、その返答に少しキョトンとしていた。
 だが、待つこと2秒。

「ニホン、か! 知らない名前だが、遠いとこから来たんだな!」

 と勝手に納得してくれた。
 妹はその様子をにこにこ笑顔で眺めていた。
 まるで緊張感がなかった。

「そうなんですよ。日本はここから凄く遠くて。それでいきなりなんですけど、今晩私と兄をここに泊めてくれませんか?」

 いきなりだった。
 たしかに、野宿は嫌だと思ったが、まさか一般家庭の家に泊まる運びにするとは。まさかの異世界にてホームステイである。

「いいぞ!」

 即答であった。
 いや、ありがたいけど。
 そして、妹も返答を聞くや否や「流石はアリシアちゃんのお父様、懐が広い!」と抱きついていた。

「だが、空いている部屋は一つしかない! そしてかなり散らかっているが、そこは我慢するか、掃除でもしてくれ!」

 ファザさんは、思い出したように立ち上がり、私たちを部屋まで案内した。
 本人の申告通り、部屋は荒れ果てていた。
 古びたベット、
 散乱した衣類、
 用途不明の道具、
 埃、
 蜘蛛の巣。

「部屋の中の物は、不要なものばかりだからな! 捨てにいくのも面倒だから、とりあえずこの部屋に適当に放置している! 村のゴミ捨て場はアリシアが知ってるから、案内してもらえ!」

 ばたんと、豪快にドアを閉めるとそのままファザさんはどこかへ行ってしまった。
 残されたアリシアは申し訳なさそうにこちらを見ている。
 この部屋の惨状に責任を感じているのかもしれない。確かに、彼女の細腕では埃や蜘蛛の巣を払うことはできても、不要物の廃棄までは困難だろう。

 そして、妹は言うとわなわなと震えていた。
 武者震いだろうか。
 そういえば、こいつはかなりの綺麗好きだったな。私の部屋も、散らかる前に掃除してくれていたっけ。
 
「アリシアちゃん、掃除の極意を教えてあげよう!」

 ファザさんの如く、妹の声に強さが混じる。
 そして、震える人差し指をぴんと立てた。

「まとめて捨てるという考えは、捨てなさい! いらないものは、いらないと思ったときに捨てる! これが大原則!」

 そう吐き捨てるようにいうと、手近にあったよくわからない物を窓から放り投げた。不要物とはいえ、所有者の許可もとらず、何の躊躇もせず投げ捨てるとは。

「そして、ここまで汚くなった部屋を片付けるときは! 一気にやる! 明日やろうとか、今日はここまでとかない! 終わるまでやる!綺麗になるまでやる!」

 そう続けると、周囲の謎の道具たちを手当たり次第に窓から外へ放りなげる。その狂気染みた様子に、アリシアは少し震えていた。

「ほら、アリシアちゃんも見てないで手伝って! そして、自らの手でこの謎の道具たちにトドメを刺して! そのとき『もったいない』とか『高かったのに』とか『まだ使えるかもしれないのに』とかの罪悪感が、無駄な買い物は二度としまいという意思につながるの!」

「は、はい……わかり……ました」

 アリシアは怯えつつも、ゆっくりだが妹の廃棄作業を手伝った。
 私も、外に仮廃棄された謎の道具とかを近くにあった荷台のようなものに積んだりして、助力した。

「ほらほら♪ どんどん捨てて部屋が綺麗になっていくよ! 気持ちよくない!? 清々しくない!?」

 妹がハイになっている。兄ながら、妹のあの姿はちょっと心配になる。いつもの冷静に知識を教えてくれる彼女の姿はどこへ行ったのか。
 
ーー

「お兄さん……ヒカリさんは……いつもあんな感じ……なのですか?」

 整理作業から戻ると、アリシアは不安げに尋ねた。

「いや、基本はもっと落ち着いているけど。状況が状況だからな」

 と私は笑って誤魔化した。
 部屋を除くと、まだ妹はハイテンションを維持していた。タフなやつだ。

 

 
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