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13.負け戦と思ったら、臨機応変に方向転換!
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「緑人の生贄にされるのはいいとして、いつまでここに監禁されるのかな」
「さてな! あんたらのことを緑人が嗅ぎ回っていると村長は言ってたから、すぐだろう! 明日かもしれんし、今日かもしれん!」
「なるほどね。じゃあどっちにしろ落とし穴戦法は難しいね、時間かかるし、しんどいし。別の選択肢をとろうか」
何のけなしに言うと、妹は自身の拘束をほどいだ。
最初から、拘束なんてされていないかのように。
するりと自由の身になる。
「嬢ちゃん、どうやってその拘束を解いた?」
「ノリと勢い(笑)」
と冗長っぽく言って、そのまま私とファザさんの拘束をほどいた。
「縄抜けは乙女の嗜みってね。まあ、こんなものは簡単な手品みたいなものだよ」
さてと、と妹は伸びをして体をほぐす。
「ファザさん、アリシアちゃん連れて、私と兄さんこの村から出ませんか?」
急な方向転換。
村を裏切り、逃走への誘い。
呼びつけた末に、目的の生贄がいないとなれば、その後の惨状は予想できる。
最悪で村は壊滅、
良くて見せしめに数人犠牲が出る。
「クリア条件の変更だよ。当初は、村人一丸で緑人と戦争だ!と私も張り切ってたけど、みんなのテンションがあれじゃあね。勝てる戦も勝てないよ。負け戦だと分かっているのに、それでも戦う将は敵より始末が悪いってね」
妹は続ける。
ファザさんがその選択をとれば、村がどうなるかは。
想像することは、難しくはない。
「ファザさんも、今回の件で愛想が尽きたでしょ。村長はもちろん、村人さんたちにもさ。ここぞと言う時に助けてくれないなら、それは本当の仲間じゃあない。ましてや、仲間を売ってまで敵に媚び諂い、自分たちが生き残りたいって連中はさ。ただの隣人だよ。一緒に滅んでやる義理はない」
ファザさんは黙った。
考えているのだろうか。
村人のこと。
これからの生活のこと。
娘のアリシアの日常のこと。
「おい、そんな言い方はないだろ。ファザさんの立場も考えてやれって」
「兄さん、半端な言葉でファザさんの考えを邪魔しちゃダメだよ」
妹の制止に、私は黙った。
ファザさんを見つめる。
彼の決断には、時間はそう必要なかった。
沈黙が10秒。
「ーー分かった。俺もついていく!」
そうして、夜闇に紛れて村を出た。
アリシアは眠っていたので、眠ったままにファザさんの背中に乗せていくことにした。
年端もいかない彼女に、この選択をさせるのは残酷だから。
ーー
ファザさんは道中、道案内のとき以外、特に話をしなかった。
快活な笑顔と雰囲気が嘘のようだ。
彼はきっと泣いているのだと思う。
妹が提示した、残酷な選択肢。
否、あれは選択肢ではなかった。
私たちが逃げる、ということは囚われているとはいえ、私たちを見逃す、ということだ。そのまま生贄となり、罪をせおえばアリシは生きながらえる可能性がある。けれど、私たちが逃げ出せば、村人あるいは緑人は怒りその矛先が彼女に向かう可能性がある。か弱い彼女は、それを抗する手段を持っていない。
優先順位の問題だ。
どちらがどれだけ重要か。
残酷な判断。
けれど、選ばないという選択は、自らで最悪の結末を選ぶことになる。
彼が選んでくれた私たちと一緒にくるという選択が、せめて良かったと思える道中になればと、私はいるかどうかもわからない、神に祈った。
ーー
村を出て、ファザさんの大雑把な道案内をもとに隣街まで逃げることにした。
隣街、といっても1番近くにある街というだけで、山を一つ超えるレベルだった。
自動車のありがたさを見に染みて味わう逃避行だった。
「お父さん……ここは……?」
寝惚けた風のアリシアがファザさんに尋ねる。
「遠いところさ!アリシアが来たことがない、遠いところに行く途中さ!」
「そう……村の外……あんまり出たことないから、楽しみ……」
そう言い残すと、アリシアはまた、眠りにつく。
次目覚める時には街についていればいいな、と私は願った。
「さてな! あんたらのことを緑人が嗅ぎ回っていると村長は言ってたから、すぐだろう! 明日かもしれんし、今日かもしれん!」
「なるほどね。じゃあどっちにしろ落とし穴戦法は難しいね、時間かかるし、しんどいし。別の選択肢をとろうか」
何のけなしに言うと、妹は自身の拘束をほどいだ。
最初から、拘束なんてされていないかのように。
するりと自由の身になる。
「嬢ちゃん、どうやってその拘束を解いた?」
「ノリと勢い(笑)」
と冗長っぽく言って、そのまま私とファザさんの拘束をほどいた。
「縄抜けは乙女の嗜みってね。まあ、こんなものは簡単な手品みたいなものだよ」
さてと、と妹は伸びをして体をほぐす。
「ファザさん、アリシアちゃん連れて、私と兄さんこの村から出ませんか?」
急な方向転換。
村を裏切り、逃走への誘い。
呼びつけた末に、目的の生贄がいないとなれば、その後の惨状は予想できる。
最悪で村は壊滅、
良くて見せしめに数人犠牲が出る。
「クリア条件の変更だよ。当初は、村人一丸で緑人と戦争だ!と私も張り切ってたけど、みんなのテンションがあれじゃあね。勝てる戦も勝てないよ。負け戦だと分かっているのに、それでも戦う将は敵より始末が悪いってね」
妹は続ける。
ファザさんがその選択をとれば、村がどうなるかは。
想像することは、難しくはない。
「ファザさんも、今回の件で愛想が尽きたでしょ。村長はもちろん、村人さんたちにもさ。ここぞと言う時に助けてくれないなら、それは本当の仲間じゃあない。ましてや、仲間を売ってまで敵に媚び諂い、自分たちが生き残りたいって連中はさ。ただの隣人だよ。一緒に滅んでやる義理はない」
ファザさんは黙った。
考えているのだろうか。
村人のこと。
これからの生活のこと。
娘のアリシアの日常のこと。
「おい、そんな言い方はないだろ。ファザさんの立場も考えてやれって」
「兄さん、半端な言葉でファザさんの考えを邪魔しちゃダメだよ」
妹の制止に、私は黙った。
ファザさんを見つめる。
彼の決断には、時間はそう必要なかった。
沈黙が10秒。
「ーー分かった。俺もついていく!」
そうして、夜闇に紛れて村を出た。
アリシアは眠っていたので、眠ったままにファザさんの背中に乗せていくことにした。
年端もいかない彼女に、この選択をさせるのは残酷だから。
ーー
ファザさんは道中、道案内のとき以外、特に話をしなかった。
快活な笑顔と雰囲気が嘘のようだ。
彼はきっと泣いているのだと思う。
妹が提示した、残酷な選択肢。
否、あれは選択肢ではなかった。
私たちが逃げる、ということは囚われているとはいえ、私たちを見逃す、ということだ。そのまま生贄となり、罪をせおえばアリシは生きながらえる可能性がある。けれど、私たちが逃げ出せば、村人あるいは緑人は怒りその矛先が彼女に向かう可能性がある。か弱い彼女は、それを抗する手段を持っていない。
優先順位の問題だ。
どちらがどれだけ重要か。
残酷な判断。
けれど、選ばないという選択は、自らで最悪の結末を選ぶことになる。
彼が選んでくれた私たちと一緒にくるという選択が、せめて良かったと思える道中になればと、私はいるかどうかもわからない、神に祈った。
ーー
村を出て、ファザさんの大雑把な道案内をもとに隣街まで逃げることにした。
隣街、といっても1番近くにある街というだけで、山を一つ超えるレベルだった。
自動車のありがたさを見に染みて味わう逃避行だった。
「お父さん……ここは……?」
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「遠いところさ!アリシアが来たことがない、遠いところに行く途中さ!」
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次目覚める時には街についていればいいな、と私は願った。
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