こんな時どうする? 異世界兄妹物語

くわっと

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42.旅行は陰鬱な気分を吹き飛ばす特効薬

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「さてと、タクミさんの疲労も大分回復したようですし、そろそろ出発しますか」

ライナスさんは両手を3回合わせ、クラップ音軽快に打ち鳴らす。
ポックルを出現させ、その背に跨った。

「さあ、ヘーゲルさんは僕の後ろに乗ってください。タクミさんはヒカリさんを乗せてあげてください」

促されるまま、私もポックルを出して妹と二人乗りをする。
ぎゅっと私を抱きしめる妹。
振り返ると悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

「ねえ、ドキドキする?」

「実の妹に欲情なんかしないよ」

「なんだ、つまんないの」

と言いつつ、妹は抱きしめる力を弱めない。
まあ、落ちたら危ないし安全第一だからな。

「すみません。本当は一人一羽召喚できればいいのですけど、僕の力では三羽が限界なので」

「残りの一羽はどうしたんですか?」

妹の問いに、ライナスさんは苦笑する。

「お礼代わりにアリシアちゃんに渡してきました。お父さんの力をお借りしたせめてものお礼です」

「なるほど。そういうことか。ーーでも、アリシアちゃんとのお別れ、寂しかったな。あんな美少女、滅多にお目にかかれるものでもないし。ファザさんみたいなゴリマッチョも、そうそうお目にかかれないだろうし。目の保養がダブルで消失かぁ。私の精神衛生上良くないなー」

ぶーぶーと妹は残念がった。

「まあ、とりあえず美少女の代わりは美女にお願いすることにしようか。ね、ヘーゲルさん!」

「うるさい、俺は美女などではない!変に褒めるな!」

「えー、本当のことなのに。素直じゃないなー」

なごやかなコントのような雰囲気。
ほのぼのとしている。
現実世界で働いているときよりも、よっぽど今の方が平和だ。
楽しい、と感じているのかもしれないな。
この非日常世界での日常を。

「それで、どこに向かうんですか?」

「ロットンという街です。あまりいい噂を聞く街ではありませんが、それ故に犯罪人である僕たちも容易に生活できる場所です」

ライナスさんは、ぱかぱかとポックルで歩を進めながら言う。
私たちもその後ろをついて行く。
ロットン、か。

「グラッセは厳格でシンプルなルールの下に平和を保たれている場所でした。ロットンはその逆。ルールがないからこそ、お互いがその均衡を壊さないように平和を保つ、そんな感じです」

「ルールがない?」

「僕もあの街について詳しい訳じゃないので、確実なことは言えませんが。場所は昔アルベイスに教えてもらっているので分かるのですが、実際に行ったことはありません。それにアルベイスが僕にどこまで本当のことを教えてくれたのかも分かりません。何分彼女は適当な師匠だったので」

「それは……その……不安しかないな」

不確かな情報を頼りに進む、か。
仕方がないとはいえ、気は抜けない状態だな。
このほっこり日常漫画のようなテンションは終わりにしないといけない。
でないと、また救出劇や脱出劇を演じる羽目になるかもしれない。

「まあ、それが旅の醍醐味だよ。知らないからこそ、面白い!」

と妹は私の思考とは全く逆の発言をした。
再度振り返って見ると元気るんるん、楽しそうな笑みを浮かべている。

「そう言ってもらえると有難いです。僕もご存知の通り、基本引きこもり生活を送っていたので、あまりこういう分野は得意じゃなくて」

「なら、ライナスさんのリハビリにも丁度いいかもね。旅行は陰鬱とした気分を吹き飛ばすには効果あるからさ。知らない場所へ行くなら、余計に。新しい景色、新しい経験、新しい価値観。今までの自分と違う視点を持つことが、楽しみながらできるからね」

あっけらかんと妹は言う。
ライナスさんもそれなり「そうですね」と同意した。
ヘーゲルさんはぶっきらぼうに「まあなるようになるか」と併せた。

こうして旅行気分の私たちグラッセ脱走組はロットンへ向けて進んでいく。
その後に待ち受ける展開を予期することなど、誰にも不可能だった。
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