7 / 121
一章 黒髪令嬢の日常
5.浴室への道
しおりを挟む
私は香り豊かな衣類のまま、自室へと引き返しました。
妹様は芸術活動の疲れで、お休みになられたので。
私の自由、再び、です。
ただ、この服についた匂いはいただけません。
それに、粉系の調味料も服にこべりついています。
これでは、私の楽園が汚されてしまいます。
まだ、私が使っていい時間ではないですが、仕方がありません。
優先順位の問題。
理由を説明すれば、きっと見つかっても、数回ぶたれるだけで済むかもしれません。
「では、行動開始です」
私はそろりそろりと浴室へと足を進めます。
廊下は広いですが、隠れる場所はありません。
視界に入ればお終いですし、今の私は匂いでも分かってしまいます。
犬さんや猫さんが室内にはいなくて助かりました。
今の私はいつも以上に襲われやすい状態にあるので。
そう考えると、浴室へ忍び込むという私の選択は正しかったですね。
起こりうる、別の不幸への対処も兼ねているのですから。
浴室に辿りつくと、仄かに湯気が見えました。
直前に誰かが使っていたのかもしれません。
私は注意深く近くを警戒します。
聴覚と視覚に感覚を集中させます。
ーーよし、誰もいないようですね。
足音もしません。
先に入った方はもう出たようです。
この時間だと、使用人の方の誰かでしょうか。
お父様やお母様は遅いし、
妹様はお休み中だし、
お兄様は朝派ですからね。
私は全速力で汚れた衣類を脱ぎます。
脱衣場の大鏡に私の体が映ります。
黒髪の女の子。
痣と火傷、
切り傷や瘡蓋。
ぼろぼろの、使い古されたお人形さん。
そんな比喩が似合うような姿。
それが私、です。
「でも、お人形さんなら髪の色は金か銀ですよね」
黒髪なんて、不吉ですし。
さしずめ私は呪いのお人形さんなのかもしれません。
力なく笑う姿を、大鏡はそのままに映しています。
妹様は芸術活動の疲れで、お休みになられたので。
私の自由、再び、です。
ただ、この服についた匂いはいただけません。
それに、粉系の調味料も服にこべりついています。
これでは、私の楽園が汚されてしまいます。
まだ、私が使っていい時間ではないですが、仕方がありません。
優先順位の問題。
理由を説明すれば、きっと見つかっても、数回ぶたれるだけで済むかもしれません。
「では、行動開始です」
私はそろりそろりと浴室へと足を進めます。
廊下は広いですが、隠れる場所はありません。
視界に入ればお終いですし、今の私は匂いでも分かってしまいます。
犬さんや猫さんが室内にはいなくて助かりました。
今の私はいつも以上に襲われやすい状態にあるので。
そう考えると、浴室へ忍び込むという私の選択は正しかったですね。
起こりうる、別の不幸への対処も兼ねているのですから。
浴室に辿りつくと、仄かに湯気が見えました。
直前に誰かが使っていたのかもしれません。
私は注意深く近くを警戒します。
聴覚と視覚に感覚を集中させます。
ーーよし、誰もいないようですね。
足音もしません。
先に入った方はもう出たようです。
この時間だと、使用人の方の誰かでしょうか。
お父様やお母様は遅いし、
妹様はお休み中だし、
お兄様は朝派ですからね。
私は全速力で汚れた衣類を脱ぎます。
脱衣場の大鏡に私の体が映ります。
黒髪の女の子。
痣と火傷、
切り傷や瘡蓋。
ぼろぼろの、使い古されたお人形さん。
そんな比喩が似合うような姿。
それが私、です。
「でも、お人形さんなら髪の色は金か銀ですよね」
黒髪なんて、不吉ですし。
さしずめ私は呪いのお人形さんなのかもしれません。
力なく笑う姿を、大鏡はそのままに映しています。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる