虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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二章 誘拐と叛逆

26.誘拐

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お互い、無言のまま数秒の時間が流れます。
私は言葉を紡ぎませんし、相手も驚いているようで、あれから何も話しません。
『マーテルロの娘は1人』
その言葉から考えると、もしかしてこの人は、誘拐犯さんかもしれません。

誘拐、
それは良家の子供である限り避けられない宿命。
強き力を持つ一族の、弱き者。
対外的に存在を隠されている私には、無縁のことだと思っていましたが。

「まあいいや、とりあえず連れて行こう」

そう言って黒い人は、私に近づいてきます。
短い刃物のような物を取り出し、私の首筋へと当てがいます。
ひんやりとした冷たさが、どこか心地よいです。

「お前、刃物が怖くないのか?それとも、怖すぎて動けないのか?」

「いえ、見慣れてますので」

私は落ち着いた風に言葉を返します。
この状況は初めてだし、驚いてはいます。
知らない人に、刃物を突きつけられている状況も、それなりに怖いです。

ですがーー

「ここで私を殺すことはしないでしょう?殺してしまえば、その後の交渉に差し支えると思いますし、逃げ道もなくなる」

自身の分析を、語ります。
誘拐犯さんの心情、実際に会って聞いたことはありませんが、本で読んだことはあります。
誘拐という行為の目的は、あくまでその後の金銭交渉。
殺してしまえば、お金を取れません。
泥沼の殺し合いになります。
それをただのお金持ちではなく、マーテルロ家相手に行うとなれば、相当な覚悟と相応のリスクが伴います。

「なかなかの嬢ちゃんだな。流石は名家の娘。だけど、さっきのとは大違いだな」

感心した風に黒い人は言います。
ということは、妹様は既に回収済みということでしょう。

「ええ、彼女は出来損ないですから。その立ち振る舞いから分かるように、マーテルロ家の恥です」

私は、そう言って、ある作戦を思いつきました。
勢いだけ、
その場で思いついた場当たり的な計画。

だけれど、今は絶好の機会なんだと思います。
ならば、実行しましょう。
次に同じようなチャンスが来るとは限りませんし、
それまで生きていられるとも、限りませんから。
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