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二章 誘拐と叛逆
29.お金くれないと、
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さり気なく、私は質問文の中に自己紹介を含めます。
そこで名乗るのは、本名ではなく、妹様の名前。
最初の誤解を、さらに加速させます。
妹様と私の存在を入れ替える。
誤認させる。
マーテルロ家において、表舞台にいるのはお父様とお兄様だけ。
妹様は、存在こそ告知されていますが、その姿を公の場に晒したことは一度もありません。
まだ修行中の身、加えてあの性格です。
外に出したら、どんな問題が出るか分かりません。
だからこそ、この方法が使える。
存在が知られていない私と、
存在しか知られていない妹様。
私と彼女の関係性は、きっと目覚める頃までに確定していることでしょう。
可哀想な妹様。
だけれど、仕方がありません。
世の中は弱肉強食なのです。
こんな状況ですやすや眠っているあなたが悪いのです。
重ねて言えば、私を今まで虐げてきたあなたが悪いのです。
少しでも、
ちょっぴりでも、
私に優しくしてくれていたらーー
私はこんなことをしなかったと思います。
「ああ、理由、理由、理由……おい、何だっけ?」
黒い先輩さんは、黒い後輩さんに聞きます。
適当な人のようです。
「先輩、しっかりしてくださいよ。頭まで武器詰まってるんですか?」
「武器は詰まってねぇよ。夢と希望が詰まってるんだよ」
「はいはい、先輩の頭の中がお花畑ということは分かりました」
「花はいいね。お前は、全然似合わないけどな。もう少し、女らしさを出した方がいいぜ」
「私、花嫌いですから」
またコミカルな会話が続きます。
この人たち、一体何なのでしょうか。
悪いことをしている実感、ないのでしょうか。
この余裕、
この緩い雰囲気。
「あ、あの……」
私はたどたどしく、言葉というか声を出して催促をかけます。
「ごめんね。先輩、適当だから。だから、私から言うね、君たちを攫った目的」
黒い後輩さんは、そう言って続きの言葉を口にします。
「お金のためだよ。お姉さんたちは貧しいからね。お金が足りなくて、明日のご飯も食べられない。だから、君たちのお父さんにお願いする。お金、くださいってね。でも、普通に言ってもきっと断られる。だからーー」
黒い後輩さんは、声のトーンを下げます。
さっきまでの緩い雰囲気は消え、
光が消えたように暗い目になります。
「お金くれないと、娘さんの命はないぞって、お願いするの」
状況を再確認。
うまく交渉できないと、私たちの命はないようです。
先にオルコット=マーテルロになっておいて良かったです。
フォルテシア=マーテルロはあくまで保険、
その価値のなさは、言うに及ばず、というやつです。
そこで名乗るのは、本名ではなく、妹様の名前。
最初の誤解を、さらに加速させます。
妹様と私の存在を入れ替える。
誤認させる。
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妹様は、存在こそ告知されていますが、その姿を公の場に晒したことは一度もありません。
まだ修行中の身、加えてあの性格です。
外に出したら、どんな問題が出るか分かりません。
だからこそ、この方法が使える。
存在が知られていない私と、
存在しか知られていない妹様。
私と彼女の関係性は、きっと目覚める頃までに確定していることでしょう。
可哀想な妹様。
だけれど、仕方がありません。
世の中は弱肉強食なのです。
こんな状況ですやすや眠っているあなたが悪いのです。
重ねて言えば、私を今まで虐げてきたあなたが悪いのです。
少しでも、
ちょっぴりでも、
私に優しくしてくれていたらーー
私はこんなことをしなかったと思います。
「ああ、理由、理由、理由……おい、何だっけ?」
黒い先輩さんは、黒い後輩さんに聞きます。
適当な人のようです。
「先輩、しっかりしてくださいよ。頭まで武器詰まってるんですか?」
「武器は詰まってねぇよ。夢と希望が詰まってるんだよ」
「はいはい、先輩の頭の中がお花畑ということは分かりました」
「花はいいね。お前は、全然似合わないけどな。もう少し、女らしさを出した方がいいぜ」
「私、花嫌いですから」
またコミカルな会話が続きます。
この人たち、一体何なのでしょうか。
悪いことをしている実感、ないのでしょうか。
この余裕、
この緩い雰囲気。
「あ、あの……」
私はたどたどしく、言葉というか声を出して催促をかけます。
「ごめんね。先輩、適当だから。だから、私から言うね、君たちを攫った目的」
黒い後輩さんは、そう言って続きの言葉を口にします。
「お金のためだよ。お姉さんたちは貧しいからね。お金が足りなくて、明日のご飯も食べられない。だから、君たちのお父さんにお願いする。お金、くださいってね。でも、普通に言ってもきっと断られる。だからーー」
黒い後輩さんは、声のトーンを下げます。
さっきまでの緩い雰囲気は消え、
光が消えたように暗い目になります。
「お金くれないと、娘さんの命はないぞって、お願いするの」
状況を再確認。
うまく交渉できないと、私たちの命はないようです。
先にオルコット=マーテルロになっておいて良かったです。
フォルテシア=マーテルロはあくまで保険、
その価値のなさは、言うに及ばず、というやつです。
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