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二章 誘拐と叛逆
30.神さまと世界の意見
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彼らの目的は、やはり身代金誘拐。
まあ、当然ですよね。
予想通り、というところです。
愉快犯、政治犯、そんな可能性もありましたが、定番どころ。
これなら、対策も立てやすい。
相手の勝利条件はお金を得ること、尚且つその後の安全が保証されること。
そこを犯さない限り、
それに利をもたらす存在である限り、
私へ危害を加える可能性は低い。
少なくとも、このオルコット=マーテルロについては。
「それで、オルコットちゃん、でいいのかな。私みたいな平民に対等に言葉を交わすのは不愉快かもしれないけど、そこは許してね」
「はい、私はお父様やお兄様のように狭量ではありませんので、ご安心を」
妹様も、という言葉は当然出さない。
役柄を演じる。
対外的なオルコット=マーテルロを。
表舞台に出ない、良家の令嬢のイメージを創り上げる。
仮想の仮面を、被る。
「それは助かるね。金持ち連中、特に良家の連中は何かと私たちを下に見がちだから。まあ、彼らのお恵みなしには生きていられないから、当然かもしれないのだけど」
「あなた方は、いつもどんな生活を過ごしているのですか?」
素朴な疑問を投げかけてみます。
コミュニケーションは大事です。
必要なことだけを、必要な分だけ、というのでは、信頼関係は築けません。
言葉が通じる人間には、言葉を使いましょう。
過不足ありで、
人間らしく。
少なくとも、この人たちは私の言葉を聞いてくれる。
意味を、理解しようとしてくれるのだから。
少し躊躇いを見せつつ、
黒い後輩さんは、ため息混じり答えてくれます。
「普通だよ。まあ、オルコットちゃんは知らない、見えない世界の住人だけどさ。基本は動物の世話をしたり、物を安く仕入れて高く売ったり。でも、それだけじゃあ生きるに足りないから、こうして悪いこともしている。何かを盗んだり、何かを奪ったりして、生活の糧にしてる」
「何か、じゃないだろう?人の命、人の人生、人の大事なもの。きちんと悪になりきれよ。自分がまだ救われる、良い人でいたい、なんてことを考えるな」
黒い先輩がぶっきらぼうに指摘しました。
そして、彼は私を見つめます。
私に向けて、言葉を紡ぎます。
「俺たちは悪い人だ。盗み、奪い、殴り、時には殺す。仕方がない、俺たちの特技はそれだったんだ。あんたらが政治や商売が得意なように、俺たちは暴力が得意、ただそれだけだ。だけど、神さまは、世界はそれを悪いことだと言う。俺たちに苦手分野で戦えと言う。そして、負ければ努力が足りない、やり方が悪いと言う。不条理だと思わないか?」
黒い先輩は続けます。
演説をするように、
世界に向けて抗議をするように。
「才能、血筋、家庭環境、この世界は不平等の塊だ。それならせめて、出来損ないの存在を許してくれよ。ただ生きることを許してくれよ。許してくれないなら、さっさと殺してくれーーっと、愚痴っぽくなったな。すまない、歳をとると説教臭くなっていけねぇ」
「そうですよ。近頃の若いものより、最近の中年の方がやばいです。色々と、思想も体臭も」
「うるせぇ、1人じゃ何もできないひよっ子は黙ってろ」
と、黒い後輩さんのコメントで、元の和やかな雰囲気に戻りました。
ですけど、私は彼の意見には共感できました。
お父様の説教よりは、よっぽど。
まあ、当然ですよね。
予想通り、というところです。
愉快犯、政治犯、そんな可能性もありましたが、定番どころ。
これなら、対策も立てやすい。
相手の勝利条件はお金を得ること、尚且つその後の安全が保証されること。
そこを犯さない限り、
それに利をもたらす存在である限り、
私へ危害を加える可能性は低い。
少なくとも、このオルコット=マーテルロについては。
「それで、オルコットちゃん、でいいのかな。私みたいな平民に対等に言葉を交わすのは不愉快かもしれないけど、そこは許してね」
「はい、私はお父様やお兄様のように狭量ではありませんので、ご安心を」
妹様も、という言葉は当然出さない。
役柄を演じる。
対外的なオルコット=マーテルロを。
表舞台に出ない、良家の令嬢のイメージを創り上げる。
仮想の仮面を、被る。
「それは助かるね。金持ち連中、特に良家の連中は何かと私たちを下に見がちだから。まあ、彼らのお恵みなしには生きていられないから、当然かもしれないのだけど」
「あなた方は、いつもどんな生活を過ごしているのですか?」
素朴な疑問を投げかけてみます。
コミュニケーションは大事です。
必要なことだけを、必要な分だけ、というのでは、信頼関係は築けません。
言葉が通じる人間には、言葉を使いましょう。
過不足ありで、
人間らしく。
少なくとも、この人たちは私の言葉を聞いてくれる。
意味を、理解しようとしてくれるのだから。
少し躊躇いを見せつつ、
黒い後輩さんは、ため息混じり答えてくれます。
「普通だよ。まあ、オルコットちゃんは知らない、見えない世界の住人だけどさ。基本は動物の世話をしたり、物を安く仕入れて高く売ったり。でも、それだけじゃあ生きるに足りないから、こうして悪いこともしている。何かを盗んだり、何かを奪ったりして、生活の糧にしてる」
「何か、じゃないだろう?人の命、人の人生、人の大事なもの。きちんと悪になりきれよ。自分がまだ救われる、良い人でいたい、なんてことを考えるな」
黒い先輩がぶっきらぼうに指摘しました。
そして、彼は私を見つめます。
私に向けて、言葉を紡ぎます。
「俺たちは悪い人だ。盗み、奪い、殴り、時には殺す。仕方がない、俺たちの特技はそれだったんだ。あんたらが政治や商売が得意なように、俺たちは暴力が得意、ただそれだけだ。だけど、神さまは、世界はそれを悪いことだと言う。俺たちに苦手分野で戦えと言う。そして、負ければ努力が足りない、やり方が悪いと言う。不条理だと思わないか?」
黒い先輩は続けます。
演説をするように、
世界に向けて抗議をするように。
「才能、血筋、家庭環境、この世界は不平等の塊だ。それならせめて、出来損ないの存在を許してくれよ。ただ生きることを許してくれよ。許してくれないなら、さっさと殺してくれーーっと、愚痴っぽくなったな。すまない、歳をとると説教臭くなっていけねぇ」
「そうですよ。近頃の若いものより、最近の中年の方がやばいです。色々と、思想も体臭も」
「うるせぇ、1人じゃ何もできないひよっ子は黙ってろ」
と、黒い後輩さんのコメントで、元の和やかな雰囲気に戻りました。
ですけど、私は彼の意見には共感できました。
お父様の説教よりは、よっぽど。
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