虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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二章 誘拐と叛逆

37.この手を汚したい

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黒い先輩さんは、黙っています。
いや、考え込んでいるようです。
額に手を当て、唸っています。

「私の知識だと、この程度ですが。ーー質問への回答は、これで十分ですか?」

「ああ、十分だ。金持ちの考え方に嫌気が差しただけだ。忍び込んだ時に、殺しておけば良かった」

怒気のこもった言葉。
右手が拳を作っています。
少し、煽りが過ぎたかもしれません。
ただの誘拐犯程度に、マーテルロ家当主が討ち取れるとは思いませんが、それは私の仕事なので、遠慮して欲しいかもしれません。

……おかしいですね。
あの人が消えるなら、誰がやっても同じなのに。
私は自分でやってしまいたいと考えている。
虐げられたその時ならまだしも、
こんな状況で、そんな風に思うなんて。

欲張りになってます。
良くないです。

「そういえば、あれからどのくらいの時間が経ったのでしょうか。ーーつまり、私たちを誘拐して、どのくらいの時間が経過したのか、という質問なのですが」

「だいたい、3時間程度だ。某家から供給してもらった『アレ』のおかげで、馬を使うよりは大分速く、楽にいけたからな」

3時間、ですか。
なら、まだ時間はありそうですね。
私も妹様も、基本は個人主義。
そこまでは干渉・監視はされずに生活されてきましたからね。
特に、私は。

「それがどうかしたのか?」

「大事なことです。いくら特殊装備で、穏便に事を済ませたと言っても、私たちはマーテルロ家。このような事態が過去になかった訳ではありません」

過去に二度、お兄様相手に類似の事例がありました。
その度に警護を厳しくし、
その度に見せしめを激しくしました。
だけれど、今回は半外部勢力。
その対策の効果は然程なかった、ということでしょうか。
せいぜい、回収部隊の編成が早まる程度でしょう。

対策はあくまで類似事例に対し効果をもたらすもの。
知らない技術や考え方の前には、無価値です。

犬さんが怖いからと言って柵を作っても、
鳥さんが襲ってくれば柵はただの飾りに過ぎません。

「撹乱作戦をしましょう。あちらが準備をするより先に、状況を確定させるのです」

状況を開始しましょう。
私が、勝つために。
私だけが、勝つために。
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