39 / 121
二章 誘拐と叛逆
37.この手を汚したい
しおりを挟む
黒い先輩さんは、黙っています。
いや、考え込んでいるようです。
額に手を当て、唸っています。
「私の知識だと、この程度ですが。ーー質問への回答は、これで十分ですか?」
「ああ、十分だ。金持ちの考え方に嫌気が差しただけだ。忍び込んだ時に、殺しておけば良かった」
怒気のこもった言葉。
右手が拳を作っています。
少し、煽りが過ぎたかもしれません。
ただの誘拐犯程度に、マーテルロ家当主が討ち取れるとは思いませんが、それは私の仕事なので、遠慮して欲しいかもしれません。
……おかしいですね。
あの人が消えるなら、誰がやっても同じなのに。
私は自分でやってしまいたいと考えている。
虐げられたその時ならまだしも、
こんな状況で、そんな風に思うなんて。
欲張りになってます。
良くないです。
「そういえば、あれからどのくらいの時間が経ったのでしょうか。ーーつまり、私たちを誘拐して、どのくらいの時間が経過したのか、という質問なのですが」
「だいたい、3時間程度だ。某家から供給してもらった『アレ』のおかげで、馬を使うよりは大分速く、楽にいけたからな」
3時間、ですか。
なら、まだ時間はありそうですね。
私も妹様も、基本は個人主義。
そこまでは干渉・監視はされずに生活されてきましたからね。
特に、私は。
「それがどうかしたのか?」
「大事なことです。いくら特殊装備で、穏便に事を済ませたと言っても、私たちはマーテルロ家。このような事態が過去になかった訳ではありません」
過去に二度、お兄様相手に類似の事例がありました。
その度に警護を厳しくし、
その度に見せしめを激しくしました。
だけれど、今回は半外部勢力。
その対策の効果は然程なかった、ということでしょうか。
せいぜい、回収部隊の編成が早まる程度でしょう。
対策はあくまで類似事例に対し効果をもたらすもの。
知らない技術や考え方の前には、無価値です。
犬さんが怖いからと言って柵を作っても、
鳥さんが襲ってくれば柵はただの飾りに過ぎません。
「撹乱作戦をしましょう。あちらが準備をするより先に、状況を確定させるのです」
状況を開始しましょう。
私が、勝つために。
私だけが、勝つために。
いや、考え込んでいるようです。
額に手を当て、唸っています。
「私の知識だと、この程度ですが。ーー質問への回答は、これで十分ですか?」
「ああ、十分だ。金持ちの考え方に嫌気が差しただけだ。忍び込んだ時に、殺しておけば良かった」
怒気のこもった言葉。
右手が拳を作っています。
少し、煽りが過ぎたかもしれません。
ただの誘拐犯程度に、マーテルロ家当主が討ち取れるとは思いませんが、それは私の仕事なので、遠慮して欲しいかもしれません。
……おかしいですね。
あの人が消えるなら、誰がやっても同じなのに。
私は自分でやってしまいたいと考えている。
虐げられたその時ならまだしも、
こんな状況で、そんな風に思うなんて。
欲張りになってます。
良くないです。
「そういえば、あれからどのくらいの時間が経ったのでしょうか。ーーつまり、私たちを誘拐して、どのくらいの時間が経過したのか、という質問なのですが」
「だいたい、3時間程度だ。某家から供給してもらった『アレ』のおかげで、馬を使うよりは大分速く、楽にいけたからな」
3時間、ですか。
なら、まだ時間はありそうですね。
私も妹様も、基本は個人主義。
そこまでは干渉・監視はされずに生活されてきましたからね。
特に、私は。
「それがどうかしたのか?」
「大事なことです。いくら特殊装備で、穏便に事を済ませたと言っても、私たちはマーテルロ家。このような事態が過去になかった訳ではありません」
過去に二度、お兄様相手に類似の事例がありました。
その度に警護を厳しくし、
その度に見せしめを激しくしました。
だけれど、今回は半外部勢力。
その対策の効果は然程なかった、ということでしょうか。
せいぜい、回収部隊の編成が早まる程度でしょう。
対策はあくまで類似事例に対し効果をもたらすもの。
知らない技術や考え方の前には、無価値です。
犬さんが怖いからと言って柵を作っても、
鳥さんが襲ってくれば柵はただの飾りに過ぎません。
「撹乱作戦をしましょう。あちらが準備をするより先に、状況を確定させるのです」
状況を開始しましょう。
私が、勝つために。
私だけが、勝つために。
1
あなたにおすすめの小説
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる