虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

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二章 誘拐と叛逆

38.むむ、むむむーむ、むむむ

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「むむむ、むーむー、むっむむむー!」

「まあまあ、元気に騒いでるね。あんたの姉さんは」

私たちの存在に気づいたのか、妹様は暴れます。
芋虫さんのようのに、手も足も出ない体で頑張っています。
今は口も封じられているので、言葉も交わせません。

獣です。
最早、人ではありません。
私としては、好ましい限りですけれど。

「それで、撹乱作戦ってどうするつもりだ?」

「マーテルロ家は動物を操作する術に優れています。ここに来るかもしれない、回収部隊にも多数の動物が導入されるはずです。だから、人には感知できない、匂いなどの痕跡を追われる、ということです」

私はそこで言葉を区切ります。

「刃物、ありますか?」

「当然あるが、どうするつもりだ?」

黒かった先輩さんは、不思議そうな顔のまま、道具を取り出します。
黒塗りの刃物、
特に躊躇いもなく、手渡してくれました。
はい、私に相応しいカラーリングです。

でも、人質に武器を渡すなんて愚行、普通はしないと思いますけど。
自信か、
余裕か、
油断か、
同情か。

まあ、どれでもいいです。
大事なのは事実だけです。
現実だけです。
目に見えない気持ちとか、理由とかは、どうでも良いです。
あったところで、何も変わりませんから。

「刃物ですから、切るんですよ」

「何を?」

「彼女を」

そう言って、私は妹様の足に一太刀加えます。
皮膚を断つ感触、
肉を断つ感触、
血が傷口から滲みます。
何故でしょうか、この光景、綺麗に思えます。
これが芸術、美的感覚、というものなのでしょうか。

「むむっ、むむむむー!」

悲鳴のような『む』が聞こえてきます。
痛そうです。

「何してんだ?」

黒かった先輩さんが尋ねます。
しかし、私は無視して質問します。

「何か布的なやつはありますか?」

「あるけど……」

私は手渡された白布で、妹様の傷口を塞ぎました。
それは妹様の血を吸い、赤く黒く染まります。

「いくつか作りますので、もっと布を持ってきてください。あと、それを収納する入れ物も持ってきてください」

「何をするつもりだ?」

「だから、撹乱作戦です。マーテルロの血は特別だと言いましたよね。屋敷の中には、私たちの血液も保管されているんです。輸血用だったり、儀式用だったり。今回は、それを元に、匂いで追いかけてくると思います」

嘘です。
というか、私はそんなこと知りません。
適当に思いついたこじつけの理由です。

「だから、これをまるで関係のない家にばら撒きます。すると、どうなるでしょうか」

私はまた語ります。

「無実の罪で、その家の人が容疑者になります」

語ります、

「結果、私含め、あなた達への追手は妨げられます」

騙ります。

だって、私は悪い子なのですから。
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