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二章 誘拐と叛逆

43.鼻歌交じり

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たん、

「くぅぅっ」

たたたん、

「やめてって!」

たんたん、

「ぎゃあえぇ」

たたたん、

「ごめん、なさいっ」

たん♪

「やめて、くだ、さい」

鼻歌、というやつでしょうか。
歌詞も知らない、
正しい譜面も分からない、
謎の名曲を口ずさみます。

合いの手ように、妹様の言葉が混じります。
嗚咽もあれば、
謝罪もあります。

ですが、私は止まりません。
切って、
割いて、
殴って、
刺して。

刃物一つでできることを、思いつくだけやります。
私の一挙一動に併せて、妹様の体は壊れていきます。
崩れていきます。
その姿はどこか退廃的で、
どこか言葉にできない美しさを感じます。
これが、芸術というものなのでしょうか?

最初は分からなかった妹様の気持ちが、
徐々に、
少しずつ分かっていく感じがします。

たくさんの傷痕、
たくさんの痣、
たくさんの血。

だけれど、当てがう布は既になく、私の目的も最早そこにはありません。
いつの間にか、この一方的に暴力を行使する立場に酔ってしまったようです。
確かにこれは、抗い難い気持ち良さです。

だけど、楽しい時間はいつかは終わります。
ガチャリ、と背後で錠が解かれれる音がします。
黒かった先輩さんーーではなく、黒いまんまの後輩さん。
装備は解かず、私と妹様を見つめています。

「これは……どういうことですか?」

刃物を構え、私に相対します。
これは、良くないです。
私も刃物を持っているとはいえ、その身体能力は年端もいかない少女のそれ。
対して、目の前の彼女はプロまではいかないでしょうけど、それなりに戦闘経験を積んでいる大人の女です。
まともに戦っては、私に勝ち目はありません。
一方的に蹂躙されてしまいます、
いつものように。

何か、
なにか考えないとーー

「お願い……助け、て」

妹様が力なく叫びました。
困りました、ますます私が悪者みたいな状況です。
やばいです、
とっても。
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