虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

文字の大きさ
49 / 121
二章 誘拐と叛逆

47.武装動物兵

しおりを挟む
「おいおいおい、おいおいおいーーおいおいおいおいおい、あれは何だよ!」

「私にも分かりません。武装動物なんて、噂には聞いてましたけど、あんな感じなんですか?」

外を覗きながら、2人が叫んでいます。
武装動物……ということは、間違いなくマーテルロ家の強襲部隊。
私も直に見たことはありませんが、存在していることは知っていました。

「いや、移動手段としての動物利用なら、俺たちだって経験も知識もある。だが、あれは何だ?最早兵団じゃねぇか?あの猿、剣とか槍とかーー弓まで持っているやつもいる」

「おい、お前!あれが何か分かりますか!?」

黒い後輩さんが私に尋ねます。
何か分かったところで、どうにもならないと思いますが。
まずは何をするか、その行動選択の優先順位の決定が大事でしょう。

籠城か、
撤退か、
戦闘か。

どれを選んでも、死あるいは苦痛、はたまたその両方について、早いか遅いかの違いしかないとは思いますが。
私を人質にして籠城を選べばジリ貧でしょうし、
あの謎の箱で撤退をしても、どこかで追いつかれて終了でしょうし、
戦闘を行えば、物量差で押しつぶされる。

ーーこの人たちに、先はない。
支援していると言っていた黒幕は気になりますが、この状況はその助けを待つ暇を与えてはくれないでしょう。

となれば、今考えるべきは、私がどう生き残るか。
妹様亡き今のマーテルロ家での扱いに期待をかけるか、というところですかね。

「地面に伏せていては視界が悪いです。大方、予想はつきますが、ちゃんと見て確認しないと、確実なことは言えません」

「面倒な奴だなっ!」

舌打ちしつつ、黒い後輩さんは私の首根っこを掴み、扉の隙間部分へと連れて行きます。

縦長の視界に映る世界。
犬さんに騎乗した、武装したお猿さん。
嘴を鋭利に研がれた、鳥さん。
空と大地の戦力。
それぞれ、15~20。
……いや、違いますね。
その背後に、馬さんに乗った多数の人の姿が見えます。
武装動物はその先遣隊、といったところでしょうか。

「お前を追って来たんだよな、あいつらは」

「間違い無いでしょうね。どういう原理でこの場所が分かったのかは不明ですが、あんな部隊を持っているのは我が家くらいなものでしょう」

そこだけは分かりかねます。
いくら犬さんたちの嗅覚が優れているとはいえ、これだけ離れてしまえば追跡は不可能なはず。
血の匂いと言っても、その索敵範囲は限度があるはずです。
不用意に家出を計画しなくて、良かったです。
また一つ、勉強なりました。
身をもって。

「ど、どうします、先輩?」

「焦るな、状況は悪いが最悪には程遠い。利用できる『モノ』もいくつかあるからな」

黒かった先輩さんは、扉から離れ妹様のところへ向かいます。
既に命が終わった、妹様のところへ。

「俺は正直、呪いとかそういうの、あまり信じないタイプでね」

そう言って、刃物を妹様の腕に突き立てます。
振動で、彼女ーー彼女だった体が震えます。

「さっきの嬢ちゃんの話が本当なら、嬢ちゃん自身にやってもらいたいが、時間が足りねぇ。解体作業は女には……お嬢様には時間がかかるからな」

ざくり、
ざくり、
ざくり。

「死んじまったなら仕方がねぇ。最大限利用させてもらう」

黒かった先輩は、妹様の濁った血を浴びながら言います。
取り急ぎ、切り取った右腕を見つめながら。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...