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三章 領主と領民
75.交渉の基本
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交渉の基本、
それは自身を信頼してもらうことにあると書物から学びました。
では、その信頼というあやふやなものをどのように勝ち取るか。
そこが肝要かつ困難なところです。
「あの時、レオリーゼさんは私を殺そうとしていました。併せて、お父様の介入もあり、私にはあなたを助ける手段はありませんでした」
「それはーーそうかも、しれない、けど」
「私は助けたかったのです。短い時間だったとはいえ、この地獄のような牢獄から救い出してくれた貴方達を」
「そんな、嘘をついて、どうするつもりだ?」
彼女は目に見えて動揺しています。
言葉は継ぎ接ぎに、
語気は曖昧に。
「どうもしませんよ。それ以前に、この言葉のどこにも嘘はありません。1から10まで全て真実です。落ち着いて考えてみてください。拘束され、拷問の毎日の貴方に対して、私が嘘をつくメリットがありますか?」
「いや、メリットはないけどーー」
「だから、この言葉は真実なのです。付け加えるなら、仮に私が嘘をついていたところで、貴方にデメリットはありません。今の貴方には失うものもないでしょうから」
私は皮肉っぽく言いました。
『嘘つき側にメリットがないならば、嘘はつかない』
そんな命題が真ではないことぐらい、
いつもの、
かつての、
天才肌のレオリーゼさんならすぐに論破できるはずなのでしょうけれど。
拷問で疲弊しきった頭脳では、難しいようです。
「……話だけでも聞いてやる」
ほら、持ち合わす言葉がなかったところから、話を促すレベルまで超進化です。
人は、自らを救うチャンスを棒に振ることはできない。
考えれば考える程、思考の沼にはまっていきます。
ずぶずぶと、
どろどろと。
否定の思考から入った頭も、気づけば肯定に足る理由を探しに行くのです。
『このチャンスを逃したら、次はないかもしれない』
『この人に嘘をつく理由もメリットもない、だから真実を言っている』
『私は知らずにかつてこの人を助けた善行の過去があるのかもしれない』
思考するからこそ、
言葉で意思疎通を行うからこそ、
人は本質を、真実を見失います。
とっても、とっても愚かな生き物です。
私たちが使役し、食している動物さんよりもずっと。
上に立つべきは、
使役するべきは、
私たちのような人間ではなく、動物さんたちなのかもしれません。
ーーなら、虐げられている人を上に添えるよりも、動物さんたちを上に置いた方が、この国は面白可笑しくなるかもしれませんね。
人よりも、動物さんたちが上に位置する国。
誰かを害する言葉もなく、
誰かを陥れる制度もなく、
ただ生きて、
ただ死ぬだけの国。
国という名前の枠組みを持った地域。
ええ、
ええ、
ええ♪
そんな国があったら、
とても、
とても、
素敵だと思います。
それは自身を信頼してもらうことにあると書物から学びました。
では、その信頼というあやふやなものをどのように勝ち取るか。
そこが肝要かつ困難なところです。
「あの時、レオリーゼさんは私を殺そうとしていました。併せて、お父様の介入もあり、私にはあなたを助ける手段はありませんでした」
「それはーーそうかも、しれない、けど」
「私は助けたかったのです。短い時間だったとはいえ、この地獄のような牢獄から救い出してくれた貴方達を」
「そんな、嘘をついて、どうするつもりだ?」
彼女は目に見えて動揺しています。
言葉は継ぎ接ぎに、
語気は曖昧に。
「どうもしませんよ。それ以前に、この言葉のどこにも嘘はありません。1から10まで全て真実です。落ち着いて考えてみてください。拘束され、拷問の毎日の貴方に対して、私が嘘をつくメリットがありますか?」
「いや、メリットはないけどーー」
「だから、この言葉は真実なのです。付け加えるなら、仮に私が嘘をついていたところで、貴方にデメリットはありません。今の貴方には失うものもないでしょうから」
私は皮肉っぽく言いました。
『嘘つき側にメリットがないならば、嘘はつかない』
そんな命題が真ではないことぐらい、
いつもの、
かつての、
天才肌のレオリーゼさんならすぐに論破できるはずなのでしょうけれど。
拷問で疲弊しきった頭脳では、難しいようです。
「……話だけでも聞いてやる」
ほら、持ち合わす言葉がなかったところから、話を促すレベルまで超進化です。
人は、自らを救うチャンスを棒に振ることはできない。
考えれば考える程、思考の沼にはまっていきます。
ずぶずぶと、
どろどろと。
否定の思考から入った頭も、気づけば肯定に足る理由を探しに行くのです。
『このチャンスを逃したら、次はないかもしれない』
『この人に嘘をつく理由もメリットもない、だから真実を言っている』
『私は知らずにかつてこの人を助けた善行の過去があるのかもしれない』
思考するからこそ、
言葉で意思疎通を行うからこそ、
人は本質を、真実を見失います。
とっても、とっても愚かな生き物です。
私たちが使役し、食している動物さんよりもずっと。
上に立つべきは、
使役するべきは、
私たちのような人間ではなく、動物さんたちなのかもしれません。
ーーなら、虐げられている人を上に添えるよりも、動物さんたちを上に置いた方が、この国は面白可笑しくなるかもしれませんね。
人よりも、動物さんたちが上に位置する国。
誰かを害する言葉もなく、
誰かを陥れる制度もなく、
ただ生きて、
ただ死ぬだけの国。
国という名前の枠組みを持った地域。
ええ、
ええ、
ええ♪
そんな国があったら、
とても、
とても、
素敵だと思います。
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