虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

文字の大きさ
77 / 121
三章 領主と領民

75.交渉の基本

しおりを挟む
交渉の基本、
それは自身を信頼してもらうことにあると書物から学びました。
では、その信頼というあやふやなものをどのように勝ち取るか。
そこが肝要かつ困難なところです。

「あの時、レオリーゼさんは私を殺そうとしていました。併せて、お父様の介入もあり、私にはあなたを助ける手段はありませんでした」

「それはーーそうかも、しれない、けど」

「私は助けたかったのです。短い時間だったとはいえ、この地獄のような牢獄から救い出してくれた貴方達を」

「そんな、嘘をついて、どうするつもりだ?」

彼女は目に見えて動揺しています。
言葉は継ぎ接ぎに、
語気は曖昧に。

「どうもしませんよ。それ以前に、この言葉のどこにも嘘はありません。1から10まで全て真実です。落ち着いて考えてみてください。拘束され、拷問の毎日の貴方に対して、私が嘘をつくメリットがありますか?」

「いや、メリットはないけどーー」

「だから、この言葉は真実なのです。付け加えるなら、仮に私が嘘をついていたところで、貴方にデメリットはありません。今の貴方には失うものもないでしょうから」

私は皮肉っぽく言いました。
『嘘つき側にメリットがないならば、嘘はつかない』
そんな命題が真ではないことぐらい、
いつもの、
かつての、
天才肌のレオリーゼさんならすぐに論破できるはずなのでしょうけれど。

拷問で疲弊しきった頭脳では、難しいようです。

「……話だけでも聞いてやる」

ほら、持ち合わす言葉がなかったところから、話を促すレベルまで超進化です。
人は、自らを救うチャンスを棒に振ることはできない。
考えれば考える程、思考の沼にはまっていきます。

ずぶずぶと、
どろどろと。

否定の思考から入った頭も、気づけば肯定に足る理由を探しに行くのです。

『このチャンスを逃したら、次はないかもしれない』
『この人に嘘をつく理由もメリットもない、だから真実を言っている』
『私は知らずにかつてこの人を助けた善行の過去があるのかもしれない』

思考するからこそ、
言葉で意思疎通を行うからこそ、
人は本質を、真実を見失います。

とっても、とっても愚かな生き物です。
私たちが使役し、食している動物さんよりもずっと。

上に立つべきは、
使役するべきは、
私たちのような人間ではなく、動物さんたちなのかもしれません。

ーーなら、虐げられている人を上に添えるよりも、動物さんたちを上に置いた方が、この国は面白可笑しくなるかもしれませんね。
人よりも、動物さんたちが上に位置する国。

誰かを害する言葉もなく、
誰かを陥れる制度もなく、
ただ生きて、
ただ死ぬだけの国。

国という名前の枠組みを持った地域。
ええ、
ええ、
ええ♪

そんな国があったら、
とても、
とても、
素敵だと思います。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

処理中です...