虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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四章 呪いと反乱

93.誰でもない私

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「う、うっぁああああ!」

謎の悲鳴で目が覚めました。
見覚えのある天井、
私以外誰もいない私室。

妹様の気配はありません。
姿も声も、何もありません。
彼女の痕跡は綺麗サッパリなくなっています。

やはり、さっきのは夢だったのでしょう。
夢、なんて可笑しなもの、見た経験はありませんでしたが。
何が出ようと、生きている私をどうこうできる存在ではないのなら、どうでもいいことです。

今の私の気持ち、ですか。
妹様の質問は、はっきりと記憶に残っていますが、彼女を納得させられそうば答えは見つけられていません。
いえ、納得というより期待する答え、でしょうか。

まあ、どうでもいいです。
所詮は夢です。
私しか知らないし、その私でさえ、すぐにこのことは忘却の檻へと格納してしまうことでしょうから。

ーーそれより、目覚めの原因となったあの悲鳴は何だったのでしょう?
また黒い誘拐犯でも現れたのでしょうか。
声質的にはお兄様のそれな気がしますが……どうしましょうか。
わざわざ確認しにいく程のことでもないでしょうし、オルコットになってからは、お兄様は意識的に私のことを避けているような気がします。

なら、ここは放置しておくのがお互いのためでしょう。
それが最適解です。

外を見れば、まだ夜の闇が広がっています。
暗い暗い、暗闇。
なら、この時間に目が覚めたのは丁度良かったのかもしれません。
本当は、チャンドラさんの進捗を確認してから、状況を進めていこうと思ったのですがーーこれも機会ですね。
神のお告げ、というやつかもしれないです。

まあ、私は神さまなんて欠片も信じていませんし、
私がこれからすることは、一般的な神さまは許さないことでしょうけれど。

部屋の片隅に畳んであった、特別な衣装に袖を通します。
併せて、オルコットの象徴でもある金の被り物も外します。
これで私はオルコット=マーテルロでなくなりました。
ここにいるのは、誰でもない私。

社会的に存在すら認知されていないフォルテシア=マーテルロでも、
一時的にお兄様に反旗を翻したオルテシアでもなんでもない。
名前もない、ただの私。
無色透明ではなく、ただ黒く黒い私。

「さて、行きましょうか」

私は短く呟いて、夜の街へと繰り出します。
踏み出す一歩は、お屋敷の扉ではなく。

私室の、窓からです。
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