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終章
108.物語の終わり
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「遅かった……な、フォルテシア……」
お父様はそうして、私の名前を呼びました。
オルコット、ではなく。
フォルテシアと。
今は黒髪状態なので、当然といえば当然ですが。
「これは、どういうことでしょうか?」
異形に成り果てた体、その右手には剣が握られていました。
その剣は、既に赤い血で濡れていました。
赤い、赤い、血の色です。
まだ外に出て間もないのでしょうか、乾くこともせず、ピタピタと床へと流れ動いています。
因みにその血の持ち主は、ぐったりと、力なく倒れています。
よく見る必要もなく、私の知り合いの方です。
ーーおっと、状況説明がまだでしたね。
私は屋敷に戻ってきたのです。
理由、という程ではありませんが、やり残していたことを思い出したのです。
反乱分子を排除して、
マーテルロ家の財産であり戦力である動物さんたちを全て解放して。
その後は、流れに任せて街を気分のままに蹂躙でもしようかと思っていましたが、それよりも先にやるべきことがあったのです。
それは、お父様とお兄様の殺害です。
お父様はこの前見た時には既に死に体、私が手を下すよりも先にその命が消えてしまうかもしれませんでした。
お兄様は謎の半端な感染で、まだまだ元気にうごいていました。
ならば、彼はしっかりと苦痛をもって殺すことができます。
しっかりと、己の過去の行いに対して悔やませながら殺すことができます。
妹様の時は違い、今度は制限時間はありません。
監視する人もいません。
だから、きちんとお話しながら、その命を奪うことができます。
どうして、私を虐げてきたのか。
どんな気持ちだったのか。
楽しかったのか、
愉しかったのか。
きちんと確認して、できる限りの苦痛を与えた上で、殺してあげるつもりでした。
なのにーー先に生き絶えるかもしれないお父様の様子を見に行けば、この有様です。
病よりも先に、私の目的を横取りしようとした裏切り者(二重の意味で)さんの登場です。
彼の反乱劇は、誰にも見られることなく幕を閉じたようですが。
状況としてはこんなとことです。
さて、現実の時間を進めましょう。
私が黙っている間にも、お父様の命の火は弱まっているのですから。
「裏切り者を……処断した……だけだ。……大したことでは……ない」
息も苦しげに、お父様は言いました。
病で既に動くのも苦しいはずなのに、加えることの暗殺者の攻撃。
撃退したとはいえ、その疲労と苦痛は相当のようです。
「まさか、こいつに裏切られるとはな。お前につけて良かったよ」
お父様は剣先で裏切り者さんの肉袋をつつきながら言います。
つつかれた本人は何も言わず、光のない瞳で虚空を見つめています。
「それは、私が代わりに殺されれば良かったという意味ですか?」
「それはーー違う」
お父様は、ぬるりと立ち上がり、私を見つめます。
剣を杖に、がたり、がたりとゆっくりな速度で私に近づいてきます。
そして、私はお父様の首に手をかけました。
血の湿り気と、
硬い肌の感触が、
私にとっては不愉快でした。
お父様はそうして、私の名前を呼びました。
オルコット、ではなく。
フォルテシアと。
今は黒髪状態なので、当然といえば当然ですが。
「これは、どういうことでしょうか?」
異形に成り果てた体、その右手には剣が握られていました。
その剣は、既に赤い血で濡れていました。
赤い、赤い、血の色です。
まだ外に出て間もないのでしょうか、乾くこともせず、ピタピタと床へと流れ動いています。
因みにその血の持ち主は、ぐったりと、力なく倒れています。
よく見る必要もなく、私の知り合いの方です。
ーーおっと、状況説明がまだでしたね。
私は屋敷に戻ってきたのです。
理由、という程ではありませんが、やり残していたことを思い出したのです。
反乱分子を排除して、
マーテルロ家の財産であり戦力である動物さんたちを全て解放して。
その後は、流れに任せて街を気分のままに蹂躙でもしようかと思っていましたが、それよりも先にやるべきことがあったのです。
それは、お父様とお兄様の殺害です。
お父様はこの前見た時には既に死に体、私が手を下すよりも先にその命が消えてしまうかもしれませんでした。
お兄様は謎の半端な感染で、まだまだ元気にうごいていました。
ならば、彼はしっかりと苦痛をもって殺すことができます。
しっかりと、己の過去の行いに対して悔やませながら殺すことができます。
妹様の時は違い、今度は制限時間はありません。
監視する人もいません。
だから、きちんとお話しながら、その命を奪うことができます。
どうして、私を虐げてきたのか。
どんな気持ちだったのか。
楽しかったのか、
愉しかったのか。
きちんと確認して、できる限りの苦痛を与えた上で、殺してあげるつもりでした。
なのにーー先に生き絶えるかもしれないお父様の様子を見に行けば、この有様です。
病よりも先に、私の目的を横取りしようとした裏切り者(二重の意味で)さんの登場です。
彼の反乱劇は、誰にも見られることなく幕を閉じたようですが。
状況としてはこんなとことです。
さて、現実の時間を進めましょう。
私が黙っている間にも、お父様の命の火は弱まっているのですから。
「裏切り者を……処断した……だけだ。……大したことでは……ない」
息も苦しげに、お父様は言いました。
病で既に動くのも苦しいはずなのに、加えることの暗殺者の攻撃。
撃退したとはいえ、その疲労と苦痛は相当のようです。
「まさか、こいつに裏切られるとはな。お前につけて良かったよ」
お父様は剣先で裏切り者さんの肉袋をつつきながら言います。
つつかれた本人は何も言わず、光のない瞳で虚空を見つめています。
「それは、私が代わりに殺されれば良かったという意味ですか?」
「それはーー違う」
お父様は、ぬるりと立ち上がり、私を見つめます。
剣を杖に、がたり、がたりとゆっくりな速度で私に近づいてきます。
そして、私はお父様の首に手をかけました。
血の湿り気と、
硬い肌の感触が、
私にとっては不愉快でした。
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