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メイ編 うっかり人間に恋に落ちた話
ユエル
しおりを挟む「ねえ、メイ。僕の相棒になってよ」
はぁ、また来たか。
せっかく命を助けてやったのに、この小僧は懲りもせずにまた俺に会いに来た。
名前まで勝手に調べて。
「人間の奴隷なんてごめんだ」
「違う、相棒だ。僕達は対等な関係なんだ!」
「は、もっとごめんだね、全く興奮しない。
次に会いに来たら殺す」
これ以上話すのがめんどくさくて、こちらから姿を消す。
行動範囲を変えたから、これでもう会うことはないだろう。
そう油断していたら、やつはまた、俺を見つけて会いに来た。
「しつこい。次は殺すって言ったよな」
「僕の相棒になってくれたら諦めるよ」
それ、諦めたことになってないだろう。
男を壁に押し付けて首を絞める。
「吸血鬼の世界に対等なんてない。
上か下か。殺すか殺されるか、それだけだ」
吸血鬼はみだりに馴れ合わない。
序列という力の秩序が、そこにあるだけだった。
「愛し合うことはないの?」
「は……?」
「僕はできるなら君と愛し合いたいんだけど。
相棒がだめなら恋人でもいい。」
何言ってんだこいつ。
吸血鬼と人間はあまりにも違う。
なかには人間と番う変わり者もいるが、人間はすぐ死ぬ。一人に執着してたら血を吸いすぎても死ぬし、寿命でもすぐ死んでしまう。
そんな不毛な関係性になんの興味もなかった。
「……おかしいな、魅了もかけてないのに」
なぜ自分を殺しかけた敵に、執着しているのかわからない。
「ふふ、わかんないの?案外鈍いんだね」
「は?」
「メイ、君は魅了なんかなくても、綺麗だからだよ」
綺麗だからなんだ。
それだけで、こいつは命を懸けられるのか?
たった今も、命を握られているのに。
「対等が嫌なら、僕が上でも下でもどちらでもいいよ」
「……何考えてんだお前」
「僕はただ君を愛してるだけ」
「……」
愛。
それになんの価値がある。
目に見えない、永遠でないものに命をかける意味がわからない。
それともこいつなりの命乞いなのだろうか。
だとしたらその作戦は成功だ。
わからないものには興味がある。
俺はまた、何度目かの気まぐれを起こすことにした。
手を離して男を解放する。
「ゲホッ、え、本当に?恋人になってくれるの?」
「……ああ」
この俺が人間と恋人になるとか笑える。
しかし、どうせ悠久に続く吸血鬼生の暇つぶし。
気に入らなかったらすぐに殺せばいい。
「メイ、他の人間の血を飲んでもいいけど、セックスは僕とだけにして」
「……ハンターがそんなこと言っていいの」
「本当は嫌だけど、さすがに僕死んじゃうから。ああ他の人もうっかり殺さないでね」
俺に指図するなんて図々しい奴だ。
でもそんなそいつを俺は早くも気に入っていた。
「で、恋人ってなにすんの」
「え、待って……。僕が初めての恋人?」
「ああ」
恋人なんて面倒なものを欲しいと思ったこともなかった。
「うれしい!あぁどうしよう!とびっきりのデートプランを考えるよ!」
「あっそ」
「でも……まずは、キスをしよう」
「わかった」
俺より少し背の低い男の唇にキスをする。
キスは結構好きだ。
血が一番うまいけど、唾液もまあまあうまい。
人間の食べ物で言うとスナックみたいな感覚だろうか。
それに舌を噛めば血も飲める。
「んぁっぁ、は、ぁ、ぁ」
舌を噛んで唾液と一緒に血を味わう。
あー、こいつの目、満月みたいだな。
灰色がかった白で、涙で潤むと角度によって青にも赤にも黄色にも見える。
「ぁ、メイ、は、あ、好き」
俺の首に腕が回る。俺にしがみついて、必死に舌に吸い付いている。
そういえば、こいつの名前知らなかった。
名前なんてどうでもいいけれど、呼ぶ名前がないのも不便だ。
「おまえ、名前何?」
「僕に興味をもってくれたの?嬉しい!」
「さっさと答えろ」
「ふふ、僕の名前はユエル!史上最年少でハンターになった天才ヴァンパイアハンターさ」
「……そこまでは聞いてない」
「せっかく興味を持ってもらえたんだもの!僕のことをたくさん知って欲しい!」
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「……あっそ」
「む、反応が薄いな!確かに君には負けたけれど、僕はこれまで一度も負けたことがなくて、吸血鬼たちは、僕の名前を聞くだけで震え上がるとか上がらないとかっていう伝説も――」
いい加減、うるさい口をキスで黙らせる。
「あのさ、どっちかっていうと、お前の良いとこ知りたいんだけど」
「へ……」
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「っ!……う、うん!」
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