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レン編 同居人が吸血鬼だった話
始祖 メイside
しおりを挟む「オリアス、レンを頼む」
「待って行かせない」
オリアスに強く手を掴まれる。
「離せ」
「離さない」
「オリアス、いい加減にしろ」
「いい加減にするのは君だろう!メイ」
「君がどこに行くか分かってて、止めないわけないだろう」
「じゃあどうしろって言うんだよ。レンの右腕が動く見込みがないんだぞ!」
「だからって君が犠牲になる必要があるのか」
俺は吸血鬼の始祖王のもとへ行くと決めていた。
何事もなければ、2度と会うこともない人だった。
俺たち吸血鬼の親であり、絶対に逆らえない神のような存在でもあった。
始祖王の牙は特別だ。
それこそ吸血鬼としての伝説として知られているように、人間を吸血鬼にしたり、万病の血を治すことだってできる。
じゃあなぜ、オリアスがここまで止めるのか。
それは、願いの対価には、例外なく代償を払わなければいけないからだ。
「もう、誇りを捨てさせない。その結果俺がどうなっても構わない。」
「メイ……!」
俺は生まれて初めて頭を下げた。
レンのためならプライドなんて捨てられた。
「……頼む、頼むオリアス」
「やめろよメイ……」
「あぁわかった!もうわかったから」
「少しは友人を死地に送る俺の気持ちも考えてほしいね」
「……うん、ありがとうオリアス」
オリアスとハグをする。
オリアスは少し涙ぐんでいた。
「ふ、いいものが見れた」
「ほんと悪趣味だよね君は」
そして、俺はその足ですぐにヴァチカンに飛んだ。
始祖王のいる古城へ足を踏み入れる。
俺が廊下を歩くたびに、案内するよう蝋燭の火が点っていく。
城の最奥に位置する玉座。
そこに座っていたのは、始祖王だった。
「来たね、私の子。会いたかったよ」
1万は越えるだろう年齢にも拘わらず、未だ生命力に満ち溢れ、若々しい肌と、金髪の長い髪が揺れる。
「……俺は会いたくありませんでしたよ」
「ははは、相変わらず可愛い猫だ」
赤い目を細めて笑う。
それがあまりにも機械的で不気味だった。
「君がどうして来たかわかっているよ」
「だったら早く契約してください」
「この城にいつも一人で私も寂しいのさ。寂しいことは言わずに、さぁお話をしよう」
パチンと指を鳴らすと目の前に椅子とテーブルが現れる。その上に晩餐が並んだ。
ここに座れと言うことなのだろう。
お話も何も、俺のことなど全て知っているくせに。
「さあいただこう」
「……」
始祖王がステーキを切って口に運ぶ。
その後、赤ワインを飲んだ。
「血以外取るんですね……」
「人間の食べ物は好きだよ。最近は日本料理がお気に入りなんだ。お寿司とか」
そういうと、目の前にポンッとお寿司が現れる。
「ぜひ食べてみて?」
「いえ……生魚嫌いなんで」
「そうかい?残念だな」
どこから出してるのかわからないのに、こんな不気味なもの食べられるか。
「それで、契約の話だけれど、どうしたいんだい?私の子」
ついに来たか。
「レンの右腕を治してほしい。また絵が描けるように。」
「もちろんできるよ。それで、何を差し出すんだい?」
「俺自身。俺が差し出せるものならすべて」
始祖王がゆっくりとワインを飲むとテーブルに置いた。
「私の子、そう命は簡単に捨てるものではないよ。
大体、そのレンって子は本当にユエルの生まれ変わりなのかい?」
「え……?」
「君のことを何も覚えていないのだろう?」
「それは、そうだが……」
「1000年も孤独に震えて泣いていた可哀想な君を、少しも覚えていない。それどころか、また人間に生まれてくるなんてね。君はまた置いて行かれてしまうね」
淡々と事実を述べるように話す。
そこに冷たさも温かさもなかった。
俺だって何度も疑ったけど、ユエルの味を俺が間違えるはずがない。
「……レンが死んだら俺も死ぬ」
「死ねないよ君は」
「は?」
「君は特別な子だ。銀のナイフを刺したところで死なない。ほら」
「がっ……!!」
心臓に銀のナイフが刺さる。
鋭い痛みが走り、胸を掻きもがく。
始祖王が立ち上がって俺のところに来ると、ナイフを抜いた。
ドロドロと血が流れ、すぐに傷が塞がる。
「君は特別頑丈に作った。世界一の美貌と残虐性と高貴さを入れて」
「はあ、はあ、はあ」
「君は誰の下にも屈しなかったはずだよ。
それがある人間と出会って変わってしまった。メイストエレス、君が頭まで下げるなんて。
どこまで成り下がる気だい?」
あぁだから嫌なんだ。こいつに会うのは。
こいつは昔から俺をお人形のようにそばに置いて、管理したがる。
「は、残念だったなくそじじい。お気に入りの玩具が壊れてよ」
その言葉に、始祖王は黙った。
怒らせたか?
すっと背筋が凍る。
しばらく俺をじっと見つめていると、始祖王が消えた。
「っ……!」
辺りを見渡してもどこにもいない。
しばらく待っていると、また目の前に現れた。
そうして俺の両まぶたにキスをした。
「契約は成立したよ。またいつでも遊びにおいで、私の子」
俺は二度と会いたくない。
「長えんだよその名前」
そう言い残すと、俺は始祖王に背中を向けた。
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