1000年前の恋人が忘れられない吸血鬼の話

もちえなが

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レン編 同居人が吸血鬼だった話

友達

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ジュディは、長く入院することになった僕の話を聞いて、大学のアトリエから僕の描きかけの絵を持って来てくれた。

でも僕は、その一週間後には退院できることになった。

「右腕が治ったのは奇跡ですよ。でも本当に良かった。レナードさん退院おめでとうございます」
「ありがとうございます先生」

先生と看護師に見送られて病院を出る。
病院の外には、ジュディとオリアスさんがいた。

「レン退院おめでとう!」
「おめでとうレナード、車で送るよ」

「あ、ありがとうございます…!」
 
3人で駐車場へ向かう。
ジュディとオリアスさんは手を繋いでいた。
これって、そ、そういうことなのかな…?

「さぁ乗って」
 
オリアスさんが黒い高級車の後部座席側の扉を開けてくれる。

「ねぇ、オリアス。レンの絵も入るかな?」
「トランクなら入るよ。レナード貸して?」
「はい」
 
ジュディが病室に持ってきてくれた布に巻いたキャンバスを渡す。
オリアスさんがトランクにしまうと、助手席にジュディを案内する。そうしてオリアスさんも運転席に乗り込んだ。

「昨日少し見えたんだけど、とても良い絵だね」
「ほんと、レンはすごく才能があるよ!」
「あ、ありがとう。嬉しいよ」

窓を覗けば、高速で景色が移り変わる。
ずっと聞いて良いのか迷って、やはり口に出した。

「オリアスさん……その、僕は、僕に何が起きたんでしょうか?」
「うーん……」

オリアスさんは車を走らせながら、少し黙考すると、答えてくれた。

「君の肩を噛んだのは、吸血鬼の祖・始祖王だよ。」
「始祖、王……」

「簡単に言えば、俺やメイの親みたいな存在かな」
「メイとオリアスさん達は兄弟なんですか?」
 
「んー、始祖の血を等しく引いた存在という意味ではそうなのかな。俺たちは、お互いのことを兄弟だなんて思ってないけど。うーん説明が難しいな」

なるほど…。
そもそも生態の違う種族に、人間の親や兄弟という枠で当てはめるのは難しいのだろう。

「まぁとにかく、始祖王は特別な存在で、レンの腕も噛めば治せちゃうってわけ」

「じゃあやっぱり始祖王が治してくださったんですね…!」
「そうだね。でもくれぐれも他言無用だよ。
もちろん、俺たちの存在もね」

「はい!もちろんです!」

「あぁ、レン。ちなみに私も吸血鬼なの。黙っててごめんね?」
「え……、ええぇ?!」

ジュディが丸眼鏡を外すと、パッチリとした大きな赤い瞳が覗く。
野暮ったい印象が消え、洗練された小顔の美少女がこちらを見つめていた。

「私、まだ目の色を自由に変えられなくて。だから眼鏡して隠してたの。」

「操作できるようになっても眼鏡はしていた方がいい。君が可愛いことが他の男にバレてしまう」
「もう、オリアス!私はオシャレしたいの!」
 
色々びっくりだ……。
僕が気づかなかっただけで、案外吸血鬼に何度もすれ違っていたのかもしれない。

「もしかして、メイが貧血だって気づいてくれたのも?」
「あ~実はそうなの。同族だからすぐに分かっちゃって。やっぱりわざとらしかったかな」
「ううん、そんなことない!助かったよ。僕じゃ気づかないままだった」

まったく、これっぽっちも。
吸血鬼なんていう存在がいることも知らず、メイが衰弱していくのを見ていることしかできなかった。

「オリアスさん……メイは、メイがどこにいるか知りませんか?」



「ありがとうございました…!」
「いいえ、それじゃあまたいつか」
「レンまた大学でね!」

アパートの前まで送ってもらい二人と別れる。

メイとはずっと連絡が取れていない。

オリアスさんには、『本人に直接聞いてみて』としか教えてもらえなかった。
連絡が取れないのにどうやって聞けば良いのだろう。

鍵を開けて、部屋に入る。
部屋は少し荒れていて、タンスが開けっぱなしになっていたり、洗濯物が床に落ちていたりした。

おそらく入院してる僕のために服を持って来てくれた時、メイが散らかしたのだろう。
 
「これじゃ、空き巣が入ったみたいじゃないか」

キャンバスを壁に立て掛けて、落ちている服を拾う。

服を畳んでいるとふと小さな風が吹き、ベランダのドアが少し開いていることに気付いた。

「え……」

カーテンが揺れて、ベランダに人影を見つける。
その瞬間、思わず走り寄ってベランダのドアを開いた。
 
「メイ……!」

そこにいたのは、タバコを吸いながら綺麗な金髪をなびかせた男性――メイだった。
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