【本編完結】十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、攻略キャラのひとりに溺愛されました! ~連載版!~

守屋海里

文字の大きさ
131 / 222
4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!

20

しおりを挟む

 しんとした静寂。ルードの手が段々と温かくなっていくのを感じて、おれは彼に微笑みかけた。



「おれと家族になろう?」



 ルードはおれをじっと見つめて、それからふはっと笑った。



「困ったな、プロポーズは私からしようと思っていたのに。いつもヒビキに先を越されてしまう」

「じゃあ、今度ルードからプロポーズしてください、出来ればふたりきりの時に!」



 おれが明るくそう言えば、ルードはこくりとうなずいてくれた。そして、愛しそうに落ちたミサンガを拾って撫でた。



「本当に叶うとは思わなかった」

「それ、ちゃんと燃やしてくださいね……」



 勿体ないなぁと呟いているのは聞こえないふりをして、おれはメルクーシン家の人たちに顔を向ける。それから、飛び切りの笑顔で明るく言い放つ。



「あ、おれのスキルって『精霊の祝福』なので、これだけで貴族になれる資格があるって聞きました。――万が一、おれが貴族になったとしても、あなたたちと関わり合いになることはないと思いますけど!」



 なる気はないけどね!



「ヒビキ、ナイフは持っている?」

「え? ええ、持っていますけど……」

「ちょっと貸して」



 ポケットからナイフの入ったケースを取り出してルードに渡す。ルードはナイフをケースから取り出して、ケースをおれに渡した。いつものように一纏めにしている髪を掴んで、一気にナイフを入れた。



「フェンリル」



 彼が契約している精霊の名を呼ぶと、大きな姿のフェンリルが現れてパーティーに集まった人たちが一気におれらから離れた。



「随分と男前になったじゃないか、契約者よ」

「ありがとう。これ、いる?」

「もらうとも。これで数百年は生きることが出来る」



 フェンリルのご飯って魔力なのかな? ぱくっとルードの髪を咥えると上機嫌になったように見えた。それからじろりとメルクーシン家の人たちをひと睨み。髪を咥えながら器用に喋る。



「この地の守護はまた別のものになるだろう。それまで寒さが続くことになるだろうが、身から出た錆としてしっかり領地を守れよ、メルクーシン」

「ど、どういうことだ……!」



 フェンリルを睨みつけるルードのお父さん。



「フェンリルは元々、このメルクーシン家の守護精霊だったんですよ。ですが、精霊であるフェンリルをあなたたちは恐れた。だからこそ、フェンリルは力を失うところだったんです」

「それをメルクーシン家の三男が救うとは、世の中どうなるかわかったものではないな」



 そう言えば本で読んだことがあるような、ないような。この世界って精霊の力を借りて生きているから、加護を失うと大変なことになるとかならないとか。あれってフィクションの話だと思っていたけど、違うのかな?



「嘆くのならば、愛する努力をしなかったことを嘆けよ。――人間」



 冷たい声と瞳でそう言うと、フェンリルはその場から消えてしまった。呆気に取られているおれらと対照的に、わなわなと震えるメルクーシン家の人たち。



「愛せて……愛せていたなら、愛していたわよ! いつ死ぬかわからないほどの魔力を持って、強大な精霊を従える子のことを、どうやったら普通の子として愛せるというの!?」



 ヒステリックに叫んだのは多分、ルードのお母さん。彼女はそう叫ぶと逃げるように広間から姿を消してしまった。



「相変わらずのヒステリックぶりだこと」



 サディアスさんの声も冷たい。メルクーシン家の人たちはおれらを睨んで、彼女を追いかけて行った。小さい子はなにがなんだかわからないみたいで、とりあえず家の人についていったって感じだった。

 主催者がこの会場から離れて良いものなんだろうか……。貴族のパーティーってどういう感じなのかしらないからなんとも言えないけど。



「あの、いい加減離してもらえませんかね……!」

「ああ、ごめんごめん。つい。抱き心地が良くて」

「嘘言え!」



 彼らのやり取りはいつも通りで、なんだか急に力が抜けてしまった。って言うか、それよりも!



「ルード、どうして、髪を……!」

「ヒビキを見ているとショートも良いなぁと思って。機会があれば切ってみたかったんだ」



 マントでナイフを綺麗に拭いてからケースをひょいと取ってナイフをしまう。それをおれに持たせて、おれはポケットに入れた。いやだから、そうじゃなくて!

 ルードをしゃがませて髪を見る。ナイフで切ったからバラバラだ。



「――後で、髪の毛整えてもらいましょうね……」



 短くなった髪をさらさらと梳く。心地よさそうなルードに、思わずぎゅっと抱きしめる。周りがざわついたけど知らない。今はただ、ルードのことを甘やかしたかった。そんなおれらを、サディアスさんとニコロは見守ってくれていた。









 あまりにも散々なパーティーだったと思う。あそこまでメルクーシン家の人たちがルードのことを嫌っているとは思わなかった。対してルードはそこまで嫌いって感じがしない。むしろ、あまり関心がないような……?



「それにしても思い切ったね、ヒビキさん」



 一泊することになっているらしく、与えられた部屋はなんと四人部屋。そこにさらっとサディアスさんもいるのだから、一体どういう『お願い』をしたんだろうか。



「みんなの前でプロポーズなんて」



 いたずらっぽく微笑むサディアスさんに対して、おれはさっきの言動を思い出してあはは、と頬を掻いた。ニコロもこくこくとうなずいて、ルードに至ってはさっきからずっと熱い視線をおれに向けている。



「なんて言うか、あの人たちがルードの家族ってことに納得がいかなくて。だったら、おれが家族になりたいなぁって」

「まぁ、確かにすごかったですね、色々と。あれなら孤児院のほうが家族感ありますよ」

「ここに戻ることはもうないだろうから、関係ないけどね! そうだろう、ルード?」

「そうですね。今まで面倒で後回しにしていましたが……すべてを終わらせるつもりです」



 すべてを終わらせる? と首を傾げた。ルードは「心配いらないよ」と微笑む。



「メルクーシンの名を捨てるだけだから」



 ガタガタン! と音を立てておれとニコロが椅子から立ち上がった。ニコロは目を大きく見開いて、それから目を細めてゆっくりと椅子に戻り、「それが隊長の決めたことなら」と口にする。



「名を捨てるって……!?」

「そうだな、ルードリィフと呼ばれるよりルードと呼ばれるほうが多いし、メルクーシンの苗字を捨ててホシナと名乗ろうか」

「あは、ルードが嫁いじゃう?」



 婿養子か! と思わず心の中でツッコミを入れる。



「そもそも隊長の爵位どうするんですか。ヒビキさまの爵位も」

「え、おれ爵位要らないんだけど……」

「身を守るためにも取っといたほうが良いのでは? また平民がどうのこうのって絡まれますよ?」

「身分で態度を変える人と付き合いたくありません」



 ばっさりそう言うと、「そう言うと思った」とばかりにニコロが肩をすくめた。思っていたならなぜ口にした。



「こういう土地は寒いからなのか、ただ単にメルクーシン家だからなのか、結構ぎすぎすしているんだよねー」



 のんびりした口調で教えてくれたサディアスさんに、おれらは顔を向けた。



「ここまであからさまな貴族主義ってこの国では珍しい部類なんだけどねぇ」



 さっきまでの怒りに満ちた声はどこに行ったと聞きたいくらい、優しい声だった。もしかして、怒って見せたのは演技だったのだろうか……そうだとしたら、サディアスさん演技派……!



「王都にも居るにはいるけど、さすがにここまでじゃないしなぁ……。なんであんなに貴族主義なんだろ?」

「メルクーシン家って今、あんまり評判良くないんだよね。数多くのパーティーに参加したから、色々噂話聞いちゃった」

「え、忙しいのにパーティーにも行っていたんですか……?」

「貴族の付き合いも面倒だよね~」



 サディアスさんって実は三つ子だったりしない? もしくは分身の術が使えるとか! ニコロを口説いて聖騎士団の仕事もして、さらには貴族の付き合いも果たしていたとは……。



「あれ? でもルードはパーティーに参加してませんよね……?」



 だってルードが居ない時は遠征の時だけだ。



「ああ、ルードはパーティに参加しないよ。わたしが覚えている限り、王都の夜会に片手で足りるくらいしか参加していないはず」



 ……じっとルードを見ると、彼は「賑やかなところは嫌いだ」と顔を背けてしまった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

魔王に転生したら幼馴染が勇者になって僕を倒しに来ました。

なつか
BL
ある日、目を開けると魔王になっていた。 この世界の魔王は必ずいつか勇者に倒されるらしい。でも、争いごとは嫌いだし、平和に暮らしたい! そう思って魔界作りをがんばっていたのに、突然やってきた勇者にあっさりと敗北。 死ぬ直前に過去を思い出して、勇者が大好きだった幼馴染だったことに気が付いたけど、もうどうしようもない。 次、生まれ変わるとしたらもう魔王は嫌だな、と思いながら再び目を覚ますと、なぜかベッドにつながれていた――。 6話完結の短編です。前半は受けの魔王視点。後半は攻めの勇者視点。 性描写は最終話のみに入ります。 ※注意 ・攻めは過去に女性と関係を持っていますが、詳細な描写はありません。 ・多少の流血表現があるため、「残酷な描写あり」タグを保険としてつけています。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる

おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。 知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...