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31 侯爵子息の調査結果
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マチルダは伯爵家の血統のいい令嬢だ。ユナには何人か手札として増やしていいと許可はしている。調査した結果から、安全そうなものをピックアップし、その中からユナに選ばせた。
マチルダはユナとはライバル関係に当たる相手だ。選んだのは少し予想外だった。理由を聞けば元々はアリルドのファンでそこからアリアに傾倒、特定の社交クラブには入らず野良のファンだからだという。所属先があると、命が危ないとぼやいていた。
アリアか明らかに人を魅了する。効果を抑えてあれだ。学内でアリアに対するファンが過激になり、色々と問題が起きたため牽制するために入学せざるをえなくなった。
アリアを退学させればいいだけだが、それはアリアの幸せと違うことだけは確かだ。
熱狂的なものは上級生に多かったこともあって最終学年にアリアが上がって大分と落ち着いたが、アリアが婚約破棄などと言い出して、社交クラブのいくつかが崩壊した。
主に男性が所属していたものだ。
アリアへの接触、抜け駆け行為はご法度というものがあったらしくい、アリアは基本ひとりで行動することになった。
人を使ってそういう方向へ持っていったのだが……。
「朝はかなりの人数がアリア様に求婚しようとしておりましたよ」
ターリスが苦笑い気味に報告する。
「どこの歌劇だ。まったく」
ため息が出る。だが、実害が出ていないならばまあいい。
前世のアリアは、多くの男を魅了した。そう思い出して気分が悪くなる。
「それで、ソレイユ公爵家の男はどうだった」
手をまわして案内をターリスがするようにさせた。
「そうですね。ライラック伯爵家として来ているのもあってか、謙虚な態度でしたし、一日見た限りはかなり好印象ですね。ヴァーナード様のように腹黒さも感じませんでした」
「……育ちが悪いんだ。仕方ないだろう」
「そうでしたね。それで、ナツメ殿は育ちがいいだけでなく教育もされているようでした。学問の面でも優秀です。ただ……」
言い淀むのに眉根を寄せる。やはり、そうそういい物件は残っていないか。
「魔法陣研究でこちらに来られたようで、ヴァーナード様が教鞭をとっていると勘違いしてきたようでした。肩を落とす姿はなんとも哀れでしたよ」
「情報収集能力は低いと言うことか……」
「ご家族との兼ね合いであまり調査ができなかったようです。そのうち会社に乗り込んでくるかもしれませんね」
「それよりもアリアに興味は持ちそうか」
「やはり婚約者はまだ決まっていないようです。跡取りが決まっていないからだそうですよ」
「長男が継ぐのではないのか。他のものが余程優秀か、その者に問題があるのか……」
「アリア様が気に入るかは別にして、かなり好条件の人物のようですよ」
「そうか……」
アリアを任せられるならば、ブルームバレー国には支店を準備するか。そうすれば情報収集もしやすくなる。
「アリア様を売り払って、縁を作りたい、という訳ではないのですよね」
「……アリアをそんなものに利用しなければならないほど、商売が傾いているとでも?」
「いえ……婚約破棄でスオウ社に損が出る訳ではありませんし、わざわざ苦労してまでアリア様の嫁ぎ先を探す必要があるのか疑問で」
「……アリアには幸せになってもらいたいだけだ」
他のことに関しては利益を優先するが、アリアに関してだけは理性的ではないことは自覚している。
だが、計算できる話ではない。
「かしこまりました。ユナ経由でアリア様と面識を持たせられるようにして見ましょう」
「ああ、そうしてくれ」
アリアに友人や恋人ができれば、それだけ弱みが増える。それで不幸になる可能性が怖かった。だが、それが欲しいと言うのならば準備しよう。
どちらも、不要になれば処理すればいいだけだ。
マチルダはユナとはライバル関係に当たる相手だ。選んだのは少し予想外だった。理由を聞けば元々はアリルドのファンでそこからアリアに傾倒、特定の社交クラブには入らず野良のファンだからだという。所属先があると、命が危ないとぼやいていた。
アリアか明らかに人を魅了する。効果を抑えてあれだ。学内でアリアに対するファンが過激になり、色々と問題が起きたため牽制するために入学せざるをえなくなった。
アリアを退学させればいいだけだが、それはアリアの幸せと違うことだけは確かだ。
熱狂的なものは上級生に多かったこともあって最終学年にアリアが上がって大分と落ち着いたが、アリアが婚約破棄などと言い出して、社交クラブのいくつかが崩壊した。
主に男性が所属していたものだ。
アリアへの接触、抜け駆け行為はご法度というものがあったらしくい、アリアは基本ひとりで行動することになった。
人を使ってそういう方向へ持っていったのだが……。
「朝はかなりの人数がアリア様に求婚しようとしておりましたよ」
ターリスが苦笑い気味に報告する。
「どこの歌劇だ。まったく」
ため息が出る。だが、実害が出ていないならばまあいい。
前世のアリアは、多くの男を魅了した。そう思い出して気分が悪くなる。
「それで、ソレイユ公爵家の男はどうだった」
手をまわして案内をターリスがするようにさせた。
「そうですね。ライラック伯爵家として来ているのもあってか、謙虚な態度でしたし、一日見た限りはかなり好印象ですね。ヴァーナード様のように腹黒さも感じませんでした」
「……育ちが悪いんだ。仕方ないだろう」
「そうでしたね。それで、ナツメ殿は育ちがいいだけでなく教育もされているようでした。学問の面でも優秀です。ただ……」
言い淀むのに眉根を寄せる。やはり、そうそういい物件は残っていないか。
「魔法陣研究でこちらに来られたようで、ヴァーナード様が教鞭をとっていると勘違いしてきたようでした。肩を落とす姿はなんとも哀れでしたよ」
「情報収集能力は低いと言うことか……」
「ご家族との兼ね合いであまり調査ができなかったようです。そのうち会社に乗り込んでくるかもしれませんね」
「それよりもアリアに興味は持ちそうか」
「やはり婚約者はまだ決まっていないようです。跡取りが決まっていないからだそうですよ」
「長男が継ぐのではないのか。他のものが余程優秀か、その者に問題があるのか……」
「アリア様が気に入るかは別にして、かなり好条件の人物のようですよ」
「そうか……」
アリアを任せられるならば、ブルームバレー国には支店を準備するか。そうすれば情報収集もしやすくなる。
「アリア様を売り払って、縁を作りたい、という訳ではないのですよね」
「……アリアをそんなものに利用しなければならないほど、商売が傾いているとでも?」
「いえ……婚約破棄でスオウ社に損が出る訳ではありませんし、わざわざ苦労してまでアリア様の嫁ぎ先を探す必要があるのか疑問で」
「……アリアには幸せになってもらいたいだけだ」
他のことに関しては利益を優先するが、アリアに関してだけは理性的ではないことは自覚している。
だが、計算できる話ではない。
「かしこまりました。ユナ経由でアリア様と面識を持たせられるようにして見ましょう」
「ああ、そうしてくれ」
アリアに友人や恋人ができれば、それだけ弱みが増える。それで不幸になる可能性が怖かった。だが、それが欲しいと言うのならば準備しよう。
どちらも、不要になれば処理すればいいだけだ。
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