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しおりを挟む例の御本を読むためにヴァーナードのお母さんの国の言葉をお勉強したり、使用人さんに挨拶してお仕事頑張ってるねと褒めたりして過ごしていた。
ユナちゃんはいろいろと忙しいらしくてあんまり会えなくなっちゃったけど、マチルダちゃんとたまにお茶会をした。
マチルダちゃんは王宮の楽士だかなんだかに入れたらしい。
シファヌ先輩と一緒に中庭の植物のお世話もしている。これはメイドの仕事と違って趣味としてやっている。
「今日はユナ様の結婚式と新国王陛下の戴冠式に参加するためのドレスを確認していただきます」
シファヌに言われてうなずく。
前にヴィクタ君の戴冠式か何かのお話はあったけど、前政権のごたごたで先延ばしになっていたらしい。
正式にユナちゃんがお嫁さんになるから、それとまとめてちょっとでも税金を使わないようにしたいらしい。
早速ユナちゃんは節約を考えているようだ。
対して私のドレスはたぶんすごく高い。
それに合わせた宝石もある。
ぱっと見はシンプルだけど、とても高級な感じだ。
「ユナ……ユナ様がまさか本当に王妃殿下になられるとは」
ドレスの最終確認を行っていると、デザインとか色々を担当してくれていた人がため息のように言う。
「ユナちゃんは、いい王妃様になりますよ」
心配ないと伝えると、ちょっと困ったような顔を返された。
「わたくしも、応援はしております。ただ、やはり今回の召し上げを、多くの貴族はよく思っていないようです」
ヴァーナードが選んだ人だからユナちゃんとも知り合いで、ユナちゃんの花嫁衣裳もこの人が手掛けたらしい。兄としてのはなむけとしてヴァーナードが贈ったそうだ。
だからこそ心配している。らしい。
平民だったものが王妃になること、王妃教育はもちろん、貴族としての教育もされていないものが王妃になることを平民ですら心配している。らしい。
それでも私はなんでかユナちゃんは大丈夫だと思っている。
なんでだろう。
そんな感じで平和な一日を過ごす。
来週ユナちゃんの結婚式だからヴァーナードはいろいろと忙しいようだが、今日はいつもより早く帰ってきた。
「ヴァーナード!」
「ゔぐっ」
早く帰ってきて一緒にお夕食食べて、そのあとヴァーナードのいるお風呂に入った。
「どうしたっ。それと、せめて風呂場くらいは返事を待ってから開けてくれっ」
ヴァーナードが珍しく声を大きくして怒る。
「そして服を着ろ」
「だって、一緒に入りたいから」
顔をそむけたヴァーナードを無視して中に入る。ちょうど頭を洗っていたみたいで、頭があわあわだ。
「泡泡」
なんとなく触り心地がよさそうだったからそのまま頭をマッサージする。
貴族はお風呂も人に手伝ってもらったりするらしいけど、我が家は基本一人で入る。お金に余裕がなかったときは男三人と女子二人に分かれてまとめてはいることも多かった。
ヴァーナードも基本は一人で入る。
でも人がいると背中とか、普段手が届かないとことか洗いやすいと思う。
私のことは、たまにシファヌが洗ってマッサージまでしてくれるから、ヴァーナードは私がしてあげるのだ。だって、他の女の人がヴァーナードのお風呂のお世話をするのはやだ。
「……参列用のドレスはどうだった?」
あきらめたようにヴァーナードが受け入れて問う。
「きれいだった」
「そうか」
疲れているのか、ため息のように返された。
「アリア、別にこういうことは、本当に……強要するつもりはない」
「えっとね。今、お勉強? してる本があって、少しだけ意味とか分かるようになったから実際に試してみたい」
「勉強?」
ヴァーナードが少し顔を上げる。
「うん。ヴァーナードのお母さん? のお国言葉で書かれてる本」
「……そうか」
全部読み切るまで内緒にしたかったけど、実技の本だったから、実際にしてみたほうがわかりやすいと思うし、理解も深まる気がする。
だから、今日はちょっとだけ練習に付き合ってもらうのだ。
練習でも、ヴァーナード以外とする気にならないから、早く帰ってくる日を狙っていたのだ。
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