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第七章
154.一人でどうこうしようとして煮詰まっているんなら、おっさんを頼ればいい。大親友なんだろ
しおりを挟む「アレッサンドロの件はこちらでなんとかする。どういう幕引きを計るか、私はきちんと考えているよ」
「一人でどうこうしようとして煮詰まっているんなら、おっさんを頼ればいい。大親友なんだろ。僕だって力を貸す。美術のことはてんで駄目だけど、特定屋としてなら役に立てる」
「ふふ。もう十分に役立ってくれている。さて、この話はここまで。サライ。サン・マルコ修道院への潜入は終えたのかな?」
「風邪が治った後の僕が、どう行動するか分かっていたって言いたいのか?ああ。やったさ。電話やメールなどの記録は一切無かった。じいちゃんを装った誰かが家にあった『サルヴァドール・ムンディ』を餌に高位の修道士七人をおびき出した証拠となるものは」
「ふむ。じゃあ、修道院内に物的証拠があるかもしれないねえ」
「すでに、破棄されているかもしれない」
「それはありえな。君はピエトロ唯一の相続人。『サルヴァドール・ムンディ』の価値に気づいたが、すでにドメニコ会修道士が絵を手に入れていたという世界線で話をしよう。そのとき、君はどうする?絶対に、ドメニコ会修道士は盗人だと騒ぎ出すよね?後々、面倒なことになるのを避けるため、ドメニコ会修道士は必ず証拠となるものを持っているはずだ」
「素人泥棒が盗み出せるような単純な場所に保管していないと思うぞ」
「正面から堂々と行けばいい。国際美術パスを使ってね」
「それは何だ?」
「関係者なら美術館の類は無料で入りたい放題」
「ふざけんなよ?サン・マルコ修道院の話と何が関係あるっていうんだ」
「まあ、最後まで聞きたまえ。リチャード・クリスティンの保護下にある国には、国際美術パスを持っていれば美術関連の場所にも入れるようになっている。研究施設、修復工房。それに、大いに喜べ!宗教施設もだ。開示権があるから、あれを見せろ、これを見せろと大いに威張れる。イタリアは私の直轄であるが、権威のおこぼれはある」
「でも、証拠を隠されたら?」
「万が一、隠していたことがバレた場合、RCは裏から手を回して宗教組織を解体するぐらいのことはする」
「そのけったいなライセンスを持っているのは誰だ?」
死神が机に肘付き、組んだ両手に骨だらけの顎を乗せる。
「私。そして君の師匠さ。あ、元ね」
近づきたくない男を探し回っていると、そいつは携帯電話を耳に当てながら二階の廊下で横長の絵を眺めていた。
死神が先頭としんがりに二体。中で王侯貴族や民衆が、はしゃぐ骸骨に手を繋がれて憂鬱そうに踊っている悪趣味な絵だ。現在、先頭の方は不在だけれども。
レオは誰かと話をしていた。
「ああ。ロレンツォは、ボッティチェリの動向は何年も前から探っていたようだ。援軍?いい。この件、奴に最後までケツを拭かせることにする」
電話を終え、再び絵を眺め始めたレオに気づいてもらうため、サライはコツコツと壁を叩いた。
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