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その2
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「だから関係ないと何度も言ってるでしょう! いい加減にして下さいよ、本当に迷惑なんです!!」
「そうは言ってもだね、君達はその、付き合っていた訳だし……」
自分のデスクに戻ろうとしたら突然腕を掴まれた。ビックリして腕を掴んで来た人物を見ると、前の会社の社長ではないか。電話するなって言ったから来ちゃったっていい加減にしろよ。
ここでは何ですので、と応接室の使用許可を取り、俺と社長のやり取りを見ていた係長にお願いをしてついて来てもらった。2人きりで対応していたら、自分を抑え切れるか分からないからだ。
「付き合っていたと言われても、大井さんとは退職する前に別れています。社長のご説明通りなのであれば、私達が別れた後に横領を始めた事になります。すでに接点はありません」
「大井さんが君に別れを切り出すと、君はじゃあ今まで撮った写真をばら撒いてもいいのかと脅したらしいじゃないか。ばら撒かれたくなかったら、金を用意しろと……」
バンッ!! 気付いたら思いっ切り机を叩いていた。社長は縮こまって俺と目を合わせようとしないが関係ない。声の限りに怒鳴り付ける。
「おい、あんたいくら自分の姪だからって金を盗んだヤツの言い分を信じるのか!? まず警察に横領事件として通報しろ。その上で姪の居場所を突き止めて、それでも俺に脅されたって言うんなら捜査協力でも何でもしてやるよ!
まずやる事やれよ、自社の不祥事をわざわざ顧客先にまで持ち込むんじゃねぇ!!」
まぁまぁまぁ、と俺の肩を押さえつつ、係長が俺と社長に冷静になるようにと声を掛けてくれた。
そうだ、冷静に冷静に。怒鳴っても何にもならない。悪いのはあくまで元カノだ。社長は被害者なんだ。
「社長、私はとても彼がそんな事をする人間には見えないんですよ。取引先としての御社の窓口としても、今現在の私の部下としても、とてもよく働いてくれています。誠実に仕事をしていますし、男性でも女性でも彼の事を悪く言う者はおりません。
まぁ多少詰めが甘い所がありますが、よくやってくれていますよ」
突然上司からそんな話を聞かされると、冷静になるのを通り越して背筋が凍るような寒気に襲われるな。キレてしまった後だから余計に、この場から逃げ出したくなる。
そんな係長の言葉を受けて、社長もやっと自分の状況を説明し始めた。俺に対する追及から、情報提供のお願いへと態度が変わる。
「すまない、平林君。大井さんが持ち出した金額が洒落にならなくてね。会社が傾くかも知れないと焦っているんだ……。
私も君が事情を知る訳がないと分かっているんだが、何か手掛かりがないものかと、つい……」
深々と頭を下げて見せる社長。最初っからそんな態度で来てくれてたら俺だってそれなりの対応をしてましたよ。
ってか電話を寄越す段階で丁寧に説明しといてくれたらさぁ。報連相って知らないの? まぁいいけど。
何か手掛かりが、ねぇ……。社長からそこまでの話を聞かされて、やっと俺の中で繋がった。確信はないが、ほぼこれで決まりじゃないだろうか。
姿勢を改めて、社長へと俺が知っている情報を提供する。だが、憶測は含めずにあくまで知っている事実のみを話す。別れた相手だからと悪意を盛ってはならない。
「社長、大井さんと私が別れた理由なんですが、彼女の浮気が原因です。浮気相手は生産管理部の横田です。これは彼女から聞き出した事実です。
そしてここからはあくまで噂なんですが、横田は少し前に仮想通貨に手を出して大損したと聞いた事があります。こちらはあくまで私が聞いた噂でしかありません。
私が知っているのはそれくらいです」
元カノが浮気していた事と、相手が横田である事は事実。そして、横田が仮想通貨に手を出して失敗したらしいという噂を聞いたのも事実。ただし、噂が本当かどうかまで俺は知らない。
これだけの情報を元に、社長がどのように判断するかは俺の知った事ではない。俺はあくまで情報を提供しただけだ。
「…………!! 平林君、迷惑を掛けて申し訳なかった。このお詫びは必ず」
俺からもたらされた情報を元に何かを組み立てて、社長が次にどう行動するかを決めたようだ。
「いえ、私も声を荒げてしまい申し訳ございませんでした。私に出来る事であれば、協力させてもらいます」
社長は俺達に一礼した後、小走りで応接室を出て行った。頑張れ~。協力するとは言ったが、後はそっちで何とかしてくれ。別れた彼女になんてもう関わりたくないね。
はぁ……、これで一件落着だな。係長に謝罪しつつ2人で応接室を退室する。
「あっ……」
顔を真っ赤にさせた高瀬さんがそこにいた。
「あれ、高瀬さんどうしたの?」
「い、いえ……」
係長が声を掛けたが、何も言わずに走り去ってしまった。まぁいいか、書類修正の続きをしないとな。
「平林君、災難だったね。厄を払う為に、仕事終わりに飲みに行かないか?」
「お、いいですね! そろそろみなさんと一緒に飲みに行きたいなと思ってたんですよ」
思わぬ係長からのお誘い。プライベートでも上司と一緒とか残業かよ、という風潮があるが、俺はそうは思わない。飲み会の雰囲気が好きだというのもあるが、俺は人と話すのが好きだ。ただ、酔っぱらうと口調がおかしくなると指摘を受けているので、飲み過ぎには気を付けないと……。
いや、今日くらいはいいか? 嫌な気持ちを発散させないとな。
「そうは言ってもだね、君達はその、付き合っていた訳だし……」
自分のデスクに戻ろうとしたら突然腕を掴まれた。ビックリして腕を掴んで来た人物を見ると、前の会社の社長ではないか。電話するなって言ったから来ちゃったっていい加減にしろよ。
ここでは何ですので、と応接室の使用許可を取り、俺と社長のやり取りを見ていた係長にお願いをしてついて来てもらった。2人きりで対応していたら、自分を抑え切れるか分からないからだ。
「付き合っていたと言われても、大井さんとは退職する前に別れています。社長のご説明通りなのであれば、私達が別れた後に横領を始めた事になります。すでに接点はありません」
「大井さんが君に別れを切り出すと、君はじゃあ今まで撮った写真をばら撒いてもいいのかと脅したらしいじゃないか。ばら撒かれたくなかったら、金を用意しろと……」
バンッ!! 気付いたら思いっ切り机を叩いていた。社長は縮こまって俺と目を合わせようとしないが関係ない。声の限りに怒鳴り付ける。
「おい、あんたいくら自分の姪だからって金を盗んだヤツの言い分を信じるのか!? まず警察に横領事件として通報しろ。その上で姪の居場所を突き止めて、それでも俺に脅されたって言うんなら捜査協力でも何でもしてやるよ!
まずやる事やれよ、自社の不祥事をわざわざ顧客先にまで持ち込むんじゃねぇ!!」
まぁまぁまぁ、と俺の肩を押さえつつ、係長が俺と社長に冷静になるようにと声を掛けてくれた。
そうだ、冷静に冷静に。怒鳴っても何にもならない。悪いのはあくまで元カノだ。社長は被害者なんだ。
「社長、私はとても彼がそんな事をする人間には見えないんですよ。取引先としての御社の窓口としても、今現在の私の部下としても、とてもよく働いてくれています。誠実に仕事をしていますし、男性でも女性でも彼の事を悪く言う者はおりません。
まぁ多少詰めが甘い所がありますが、よくやってくれていますよ」
突然上司からそんな話を聞かされると、冷静になるのを通り越して背筋が凍るような寒気に襲われるな。キレてしまった後だから余計に、この場から逃げ出したくなる。
そんな係長の言葉を受けて、社長もやっと自分の状況を説明し始めた。俺に対する追及から、情報提供のお願いへと態度が変わる。
「すまない、平林君。大井さんが持ち出した金額が洒落にならなくてね。会社が傾くかも知れないと焦っているんだ……。
私も君が事情を知る訳がないと分かっているんだが、何か手掛かりがないものかと、つい……」
深々と頭を下げて見せる社長。最初っからそんな態度で来てくれてたら俺だってそれなりの対応をしてましたよ。
ってか電話を寄越す段階で丁寧に説明しといてくれたらさぁ。報連相って知らないの? まぁいいけど。
何か手掛かりが、ねぇ……。社長からそこまでの話を聞かされて、やっと俺の中で繋がった。確信はないが、ほぼこれで決まりじゃないだろうか。
姿勢を改めて、社長へと俺が知っている情報を提供する。だが、憶測は含めずにあくまで知っている事実のみを話す。別れた相手だからと悪意を盛ってはならない。
「社長、大井さんと私が別れた理由なんですが、彼女の浮気が原因です。浮気相手は生産管理部の横田です。これは彼女から聞き出した事実です。
そしてここからはあくまで噂なんですが、横田は少し前に仮想通貨に手を出して大損したと聞いた事があります。こちらはあくまで私が聞いた噂でしかありません。
私が知っているのはそれくらいです」
元カノが浮気していた事と、相手が横田である事は事実。そして、横田が仮想通貨に手を出して失敗したらしいという噂を聞いたのも事実。ただし、噂が本当かどうかまで俺は知らない。
これだけの情報を元に、社長がどのように判断するかは俺の知った事ではない。俺はあくまで情報を提供しただけだ。
「…………!! 平林君、迷惑を掛けて申し訳なかった。このお詫びは必ず」
俺からもたらされた情報を元に何かを組み立てて、社長が次にどう行動するかを決めたようだ。
「いえ、私も声を荒げてしまい申し訳ございませんでした。私に出来る事であれば、協力させてもらいます」
社長は俺達に一礼した後、小走りで応接室を出て行った。頑張れ~。協力するとは言ったが、後はそっちで何とかしてくれ。別れた彼女になんてもう関わりたくないね。
はぁ……、これで一件落着だな。係長に謝罪しつつ2人で応接室を退室する。
「あっ……」
顔を真っ赤にさせた高瀬さんがそこにいた。
「あれ、高瀬さんどうしたの?」
「い、いえ……」
係長が声を掛けたが、何も言わずに走り去ってしまった。まぁいいか、書類修正の続きをしないとな。
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「お、いいですね! そろそろみなさんと一緒に飲みに行きたいなと思ってたんですよ」
思わぬ係長からのお誘い。プライベートでも上司と一緒とか残業かよ、という風潮があるが、俺はそうは思わない。飲み会の雰囲気が好きだというのもあるが、俺は人と話すのが好きだ。ただ、酔っぱらうと口調がおかしくなると指摘を受けているので、飲み過ぎには気を付けないと……。
いや、今日くらいはいいか? 嫌な気持ちを発散させないとな。
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