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その5
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自分から求めさせ、それに応じるようなやり取りから数分後、先ほどよりも早い歩みで辿り着いたのは、高級そうなマンションだった。あれか、セキュリティとかの関係でいい所を選んだ結果かな?
高瀬さんがピピピッとパネルを操作し、自動ドアが開く。広いエントランス。すでにエレベーターが開いて状態で待機している。
エレベーターに乗ると、今度は高瀬さんの方から抱き着いて来て、キスをねだって来た。甘えた表情、甘い声、甘い匂い。たっぷりと堪能した後、チンっという音と共にエレベーターのドアが開く。
エレベーターホールの窓から見下ろす街の灯りが妖しく光る。ここで高瀬さんをガラスに押し付けて、後ろから……。おっと、部屋に着いたらしい。
「どうぞ。……、男の人を部屋に入れるのは、初めてなの」
いやいやいや、ウソでしょ。絶対初めてな訳ないじゃん! だって玄関に男物の革靴が置いてあるし! 何コレ何コレ、美人局!? 逃げるべき? 俺逃げるべき!?
俺の目線の先にある革靴に気付いたのか、トロットロになっていた表情を一変させて声を上げる。
「何でっ!?」
こっちが知りたいわ!
「お帰り」
野太いおじ様の声! 逃げないと逃げないと逃げないと……。
「ち、違うの! ねぇ、聞いて! 聞いて下さい!!」
逃がさないと言わんばかりに、高瀬さんが俺の腰にしがみ付く。近付いて来る足音。怖い、俺どうなるんだ……。
ガチャッ。廊下の奥の扉が開き、姿を現したのは……。
「専務!?」
「お父さん、何でいるのっ!?」
お父さん!!?
と言う訳で、今日付き合い出したばかりの彼女と、そしてそのお父さん兼、俺の会社の専務とでお酒を飲んでいる現在の状況が生まれたのだった。帰りたい。
「何でいるのよ」
「元々ここはパパが買ったマンションだ。いて何が悪い」
「滅多に使わないけど傷むとダメだからって私に住ませてるくせに。何で今日に限って」
「滅多に使わないけど極稀に使うんだよ」
「あの……」
「何?」
「何だね?」
いえ、何でもないです……。
「お暇しようかなぁと」
「まぁ飲みたまえ、まだそんな時間じゃない。それより薫、服が異常に酒臭いの何とかしなさい」
あ、そうだった。元々は高瀬さんのブラウスにビールが零れたからって部屋まで送る事になったんだった。忘れてた忘れてた。さて、無事送る事が出来たので、帰るとしま
「平林君、着替えて来るからゆっっっくりしててね」
「あ、はい」
ゆっくりなんて出来る訳ないだろうが!!!
そう心の中で叫ぶ俺を置いて、高瀬さんは自分の部屋へと入って行った。
そして俺は今、専務であり彼女の父親でもある人の目線に晒されているのである。
「すまなかったね、娘が男を連れ込んで来るとは思ってもみなかったもんでね」
「いえ、私の方も高瀬さんのお父上が専務だとは気付きもせず……」
「はっはっはっ、会社では大っぴらに言ってないからな。知らなくて当然だ。孫だ娘だという目で見られるのが嫌なんだろうな」
孫? 孫とは何ぞや……。
「おっと、口が滑ったか。まぁ私が父親だと分かれば、自ずと社長の孫だという事は分かる話だけどな」
うわぁ、この規模の会社の経営者一族のご令嬢ですか。従業員数が多いから、名字が一緒程度でもしかして親子かもなんて思わなかった。
俺もしかしてとんでもない人に手を出そうとしたんじゃないだろうか。可愛がってやるよって? 俺が可愛がられそうですよね、色んな意味で。
はぁ、また転職しないとダメか?
「まぁそんなに固くならんでいい。元々は私も同じ立場だった」
「同じ立場と仰るのは……?」
非常に気になるワードが出たところで専務はソファーから立ち上がり、食器棚の奥から高級そうなコニャックを取り出される。ニヤニヤとしながらグラスを手渡し、俺に酒を注いで下さる。まずはストレートで本来の香りを楽しむのだそうだ。
俺も注ぎ返そうとしたら、手で制された。チン、と小さな音を立てて乾杯する。
「私は婿養子でね、入社して配属された先に妻がいた。最初は気付かなかった。気付いた時にはもう、ね」
そう言って笑う専務。まさかの共通点。俺も専務も、会社のご令嬢だとは気付かずに手を出した、と。
「いやちょっと待って下さい、私はまだ高瀬さんとは何もしていませんので!」
「平林君、高瀬さんと言うのは誰の事だね。私か? それとも社長の事か?」
げっ、確かに親子三世代だから名字は一緒だけど! 話の流れで分かりそうなもんだろうに。わざとだ、絶対わざとだ!
「か、薫さんとはまだ何もしていません。さっき付き合おうってなったばかりで……」
「付き合ったばかりの女の家に上がり込んだら親父がいたってか! はっはっはっ!!!」
足をバタバタさせてはしゃいでらっしゃる。もうヤダこの専務……。
「お、お父さんっ!」
薫さぁん、戻って来るの遅いよ~……。
高瀬さんがピピピッとパネルを操作し、自動ドアが開く。広いエントランス。すでにエレベーターが開いて状態で待機している。
エレベーターに乗ると、今度は高瀬さんの方から抱き着いて来て、キスをねだって来た。甘えた表情、甘い声、甘い匂い。たっぷりと堪能した後、チンっという音と共にエレベーターのドアが開く。
エレベーターホールの窓から見下ろす街の灯りが妖しく光る。ここで高瀬さんをガラスに押し付けて、後ろから……。おっと、部屋に着いたらしい。
「どうぞ。……、男の人を部屋に入れるのは、初めてなの」
いやいやいや、ウソでしょ。絶対初めてな訳ないじゃん! だって玄関に男物の革靴が置いてあるし! 何コレ何コレ、美人局!? 逃げるべき? 俺逃げるべき!?
俺の目線の先にある革靴に気付いたのか、トロットロになっていた表情を一変させて声を上げる。
「何でっ!?」
こっちが知りたいわ!
「お帰り」
野太いおじ様の声! 逃げないと逃げないと逃げないと……。
「ち、違うの! ねぇ、聞いて! 聞いて下さい!!」
逃がさないと言わんばかりに、高瀬さんが俺の腰にしがみ付く。近付いて来る足音。怖い、俺どうなるんだ……。
ガチャッ。廊下の奥の扉が開き、姿を現したのは……。
「専務!?」
「お父さん、何でいるのっ!?」
お父さん!!?
と言う訳で、今日付き合い出したばかりの彼女と、そしてそのお父さん兼、俺の会社の専務とでお酒を飲んでいる現在の状況が生まれたのだった。帰りたい。
「何でいるのよ」
「元々ここはパパが買ったマンションだ。いて何が悪い」
「滅多に使わないけど傷むとダメだからって私に住ませてるくせに。何で今日に限って」
「滅多に使わないけど極稀に使うんだよ」
「あの……」
「何?」
「何だね?」
いえ、何でもないです……。
「お暇しようかなぁと」
「まぁ飲みたまえ、まだそんな時間じゃない。それより薫、服が異常に酒臭いの何とかしなさい」
あ、そうだった。元々は高瀬さんのブラウスにビールが零れたからって部屋まで送る事になったんだった。忘れてた忘れてた。さて、無事送る事が出来たので、帰るとしま
「平林君、着替えて来るからゆっっっくりしててね」
「あ、はい」
ゆっくりなんて出来る訳ないだろうが!!!
そう心の中で叫ぶ俺を置いて、高瀬さんは自分の部屋へと入って行った。
そして俺は今、専務であり彼女の父親でもある人の目線に晒されているのである。
「すまなかったね、娘が男を連れ込んで来るとは思ってもみなかったもんでね」
「いえ、私の方も高瀬さんのお父上が専務だとは気付きもせず……」
「はっはっはっ、会社では大っぴらに言ってないからな。知らなくて当然だ。孫だ娘だという目で見られるのが嫌なんだろうな」
孫? 孫とは何ぞや……。
「おっと、口が滑ったか。まぁ私が父親だと分かれば、自ずと社長の孫だという事は分かる話だけどな」
うわぁ、この規模の会社の経営者一族のご令嬢ですか。従業員数が多いから、名字が一緒程度でもしかして親子かもなんて思わなかった。
俺もしかしてとんでもない人に手を出そうとしたんじゃないだろうか。可愛がってやるよって? 俺が可愛がられそうですよね、色んな意味で。
はぁ、また転職しないとダメか?
「まぁそんなに固くならんでいい。元々は私も同じ立場だった」
「同じ立場と仰るのは……?」
非常に気になるワードが出たところで専務はソファーから立ち上がり、食器棚の奥から高級そうなコニャックを取り出される。ニヤニヤとしながらグラスを手渡し、俺に酒を注いで下さる。まずはストレートで本来の香りを楽しむのだそうだ。
俺も注ぎ返そうとしたら、手で制された。チン、と小さな音を立てて乾杯する。
「私は婿養子でね、入社して配属された先に妻がいた。最初は気付かなかった。気付いた時にはもう、ね」
そう言って笑う専務。まさかの共通点。俺も専務も、会社のご令嬢だとは気付かずに手を出した、と。
「いやちょっと待って下さい、私はまだ高瀬さんとは何もしていませんので!」
「平林君、高瀬さんと言うのは誰の事だね。私か? それとも社長の事か?」
げっ、確かに親子三世代だから名字は一緒だけど! 話の流れで分かりそうなもんだろうに。わざとだ、絶対わざとだ!
「か、薫さんとはまだ何もしていません。さっき付き合おうってなったばかりで……」
「付き合ったばかりの女の家に上がり込んだら親父がいたってか! はっはっはっ!!!」
足をバタバタさせてはしゃいでらっしゃる。もうヤダこの専務……。
「お、お父さんっ!」
薫さぁん、戻って来るの遅いよ~……。
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