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出会い
心当たり
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大学で後輩らしき女の子に、幽霊に取り憑かれてる事を指摘された僕。
全く身に覚えがないし、自分の先祖ではなく5歳くらいの女の子だと言われても実感がないので返事に困った。
「そ、そうなんだ。君は見える人なんだね」
「真鍋真菜、ですっ」
うおっ、急に目力籠めて目を合わせて来たな。びっくり。
端正な顔立ちの美人さんに見つめられて謎の圧を感じてしまう。
「そっか、真鍋さんっていうんだね。
初めまして、僕は東奥南朋と言います」
「あっ、どうも……」
我に返ったからなのか、彼女からの圧がなくなる。無表情なままの彼女の白い肌が、ほんのりと赤く染まっていった。
恥ずかしいのを隠す為なのか、きゅっと真一文字に口を閉じている。もっと感情を表に出しても良いと思うよ?
あ、そうか。初めて会った相手だから警戒や遠慮もあるのかな?
「幽霊に取り憑かれてると言われても、ちょっとピンと来ないや。でもまぁ、気を付けてみるよ」
何に気を付ければいいのか分からないけど。
初対面の子とあまり時間を掛けて話すのも失礼かなと思うので、この場を離れよう。
「じゃあね」
小さく手を挙げて別れを告げ、また背中を向けて歩き出す。
不思議な子だったなぁ。
初対面の相手に、それも男である僕に対して幽霊が憑いている事を指摘して来るなんて、よっぽど良い子なんだろうな。
もしくは僕がよっぽど悪い霊に取り憑いているのか。
いや、それはないか。僕自身は全く何も感じないんだもの。霊感がある訳でもないけど。よほどの悪霊であれば僕の身の回りに異変が起こるだろうし。
あ、取り憑いている幽霊がどんな表情で僕の肩に顔を乗せているのか聞いておけば良かったな。5歳くらいの女の子って言うくらいだから、真鍋さんには見えているはずだし。
そもそも恨めしそうな顔をしているんだろうか、その女の子は。
ふと気になって、掲示板のガラスに反射する自分を眺めてみた。うん、やっぱり何も映っていない。幽霊がガラスに反射して見えるのかどうかは知らないけど。
僕の右肩のその向こうに、真鍋さんがじっとこっちを見続けている無表情な顔が浮かんでいた。
うん、幽霊がって言われるよりも、君の方がちょっとだけ怖いです。
何て言えばいいのか。容姿端麗な女の子って、凄みがあると思う。
そこに立ってこっちを向いて見つめているだけで、心霊的な何かを感じてしまう気がする。こういうのをオーラがすごいって言うのだろうか。
ホラー映画でも幽霊は美人な女性って相場が決まっているし。二枚目の俳優が幽霊役って作品はないんじゃないだろうか。
いや、僕がホラー映画に詳しくないだけかも知れないけどね。
このままだと何だか真鍋さんを覗き見したような気がして自分的に気持ち悪いので、ゆっくりと振り向く。そして小さく手を振っておく。
あ、ちょっとびっくりしたような顔で振り返してくれた。そんな風にもっと感情を表に出した方が人間味があって良いのにな。
真鍋さんから指摘を受けたその夜、夢を見た。昔々、子供の頃の夢。
近所の子とよく遊んでいた公園に、1人だけで佇んでいる夢。
ただそれだけの夢だった。
あの公園では近所の子と一緒に遊んでいたんだ。
母親同士が仲が良くて、家の行き来をしているうちに子供だけで遊ぶようになったのだと思う。覚えてないけど。
僕が小学校に上がってしばらくして、その子とは自然と遊ばなくなった。何でだかは覚えてないけど。
ふと思い出して、小学校が終わってからその公園に行ってみたけど、その子はいなくて。
で、母親に聞いたんだ。
「あの子は遠くへ行ったのよ」
当時の僕は子供ながらに理解した。あぁ、あの子は死んでしまったんだ、と。
まだ小さい僕を気遣って、母親は何でもないような顔をして、遠くへ行ったんだという言い方をしたのだ、と。
そうなんだ、と僕もそれ以上聞き返す事をせず、1人で別の部屋に行ってこっそり泣いた。
小学校に上がり、環境が変わって、その生活リズムに慣れて行くうちに、仲が良かったその子の事を忘れてしまっていた事にすら気付かずに過ごしていて。
最後に話した事って何だったろう、とか。
こんな遊びしてたなぁ。何が面白かったんだろう、とか。
そう言えば顔もあまり思い出せないな、とか。
どんな声だったかな、とか。
そんな事を暗い部屋の隅っこで三角座りをしながら考えていると、どこかからその子の笑う事が聞こえたような気がしたんだ。
鈴を転がすような、聞き心地の良い笑い声。
あぁ、僕はあの子の事が好きだったんだなって自覚した瞬間だった。多分これが僕の初恋。
終わってから気付いた。もうどうしようもなく手遅れな初恋。
もしかしたら、その時から彼女は僕の背中に乗っていたんじゃないかなって、思うんだ。
僕には見えないし、感じる事も出来ないけど、僕の肩の上で笑顔を浮かべてくれてたらいいな。
全く身に覚えがないし、自分の先祖ではなく5歳くらいの女の子だと言われても実感がないので返事に困った。
「そ、そうなんだ。君は見える人なんだね」
「真鍋真菜、ですっ」
うおっ、急に目力籠めて目を合わせて来たな。びっくり。
端正な顔立ちの美人さんに見つめられて謎の圧を感じてしまう。
「そっか、真鍋さんっていうんだね。
初めまして、僕は東奥南朋と言います」
「あっ、どうも……」
我に返ったからなのか、彼女からの圧がなくなる。無表情なままの彼女の白い肌が、ほんのりと赤く染まっていった。
恥ずかしいのを隠す為なのか、きゅっと真一文字に口を閉じている。もっと感情を表に出しても良いと思うよ?
あ、そうか。初めて会った相手だから警戒や遠慮もあるのかな?
「幽霊に取り憑かれてると言われても、ちょっとピンと来ないや。でもまぁ、気を付けてみるよ」
何に気を付ければいいのか分からないけど。
初対面の子とあまり時間を掛けて話すのも失礼かなと思うので、この場を離れよう。
「じゃあね」
小さく手を挙げて別れを告げ、また背中を向けて歩き出す。
不思議な子だったなぁ。
初対面の相手に、それも男である僕に対して幽霊が憑いている事を指摘して来るなんて、よっぽど良い子なんだろうな。
もしくは僕がよっぽど悪い霊に取り憑いているのか。
いや、それはないか。僕自身は全く何も感じないんだもの。霊感がある訳でもないけど。よほどの悪霊であれば僕の身の回りに異変が起こるだろうし。
あ、取り憑いている幽霊がどんな表情で僕の肩に顔を乗せているのか聞いておけば良かったな。5歳くらいの女の子って言うくらいだから、真鍋さんには見えているはずだし。
そもそも恨めしそうな顔をしているんだろうか、その女の子は。
ふと気になって、掲示板のガラスに反射する自分を眺めてみた。うん、やっぱり何も映っていない。幽霊がガラスに反射して見えるのかどうかは知らないけど。
僕の右肩のその向こうに、真鍋さんがじっとこっちを見続けている無表情な顔が浮かんでいた。
うん、幽霊がって言われるよりも、君の方がちょっとだけ怖いです。
何て言えばいいのか。容姿端麗な女の子って、凄みがあると思う。
そこに立ってこっちを向いて見つめているだけで、心霊的な何かを感じてしまう気がする。こういうのをオーラがすごいって言うのだろうか。
ホラー映画でも幽霊は美人な女性って相場が決まっているし。二枚目の俳優が幽霊役って作品はないんじゃないだろうか。
いや、僕がホラー映画に詳しくないだけかも知れないけどね。
このままだと何だか真鍋さんを覗き見したような気がして自分的に気持ち悪いので、ゆっくりと振り向く。そして小さく手を振っておく。
あ、ちょっとびっくりしたような顔で振り返してくれた。そんな風にもっと感情を表に出した方が人間味があって良いのにな。
真鍋さんから指摘を受けたその夜、夢を見た。昔々、子供の頃の夢。
近所の子とよく遊んでいた公園に、1人だけで佇んでいる夢。
ただそれだけの夢だった。
あの公園では近所の子と一緒に遊んでいたんだ。
母親同士が仲が良くて、家の行き来をしているうちに子供だけで遊ぶようになったのだと思う。覚えてないけど。
僕が小学校に上がってしばらくして、その子とは自然と遊ばなくなった。何でだかは覚えてないけど。
ふと思い出して、小学校が終わってからその公園に行ってみたけど、その子はいなくて。
で、母親に聞いたんだ。
「あの子は遠くへ行ったのよ」
当時の僕は子供ながらに理解した。あぁ、あの子は死んでしまったんだ、と。
まだ小さい僕を気遣って、母親は何でもないような顔をして、遠くへ行ったんだという言い方をしたのだ、と。
そうなんだ、と僕もそれ以上聞き返す事をせず、1人で別の部屋に行ってこっそり泣いた。
小学校に上がり、環境が変わって、その生活リズムに慣れて行くうちに、仲が良かったその子の事を忘れてしまっていた事にすら気付かずに過ごしていて。
最後に話した事って何だったろう、とか。
こんな遊びしてたなぁ。何が面白かったんだろう、とか。
そう言えば顔もあまり思い出せないな、とか。
どんな声だったかな、とか。
そんな事を暗い部屋の隅っこで三角座りをしながら考えていると、どこかからその子の笑う事が聞こえたような気がしたんだ。
鈴を転がすような、聞き心地の良い笑い声。
あぁ、僕はあの子の事が好きだったんだなって自覚した瞬間だった。多分これが僕の初恋。
終わってから気付いた。もうどうしようもなく手遅れな初恋。
もしかしたら、その時から彼女は僕の背中に乗っていたんじゃないかなって、思うんだ。
僕には見えないし、感じる事も出来ないけど、僕の肩の上で笑顔を浮かべてくれてたらいいな。
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