四人の聖女に囲まれて身も心もボロボロです

なつのさんち

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いつも酒臭い聖女

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 夕食の用意が出来た、と侍女が部屋へ呼びに来た。
 というか、俺は客として扱われているのだろうか。侍女だからと顎で使うつもりはないが、俺が聖女に仕える為に呼ばれたのであれば俺と侍女は同じ立場となるはずだ。
 テレスは遊び相手として呼んだなどとふざけた事を言っていたが、夕食の際に具体的な説明があるんだろうか。

 ダイニングへと通された。
 六人掛けのテーブルに、テレスとププルとまだ紹介を受けていない女性二人が座っている。
 その二人も白いドレスに身を包んでいる。

「という事で今日から私達のお相手を務めてくれる殿方、アースよ」

 とんでもない紹介の仕方をされた。お相手を務める殿方という響きは聖女という神聖なものと交わらない気がする。

「まぁ、交わるだなんて。卑猥なこと」

 俺を紹介したテレスがくねっと腰を捻ってしなを作る。交わらないって言ってるだろうが。

「アース、いいわね。あなたいいわ、今夜私の部屋に来なさい」

「何でだよ!」

 先ほどからグビグビとワインを飲んでいる女が俺をからかって来る。

「そっちがルヴァンね。からかってる訳じゃなく本気だから。
 ルヴァンはこの中で一番聖女っぽいかもしれないわね」

 この酔っ払いが? 一番聖女っぽい?

「何なら今ここで見せようか? 聖女の奇蹟を」

 ルヴァンが立ち上がって俺の方へ千鳥足で近付いて来る。何をするつもりだ?
 何もないのに躓いてバランスを崩すルヴァン。支えてやろうと手を出すと、俺目掛けて突っ込んで来た。

「痛っ!?」

 ドン、とルヴァンがぶつかると、俺の右腕に痛みが走る。見ると切れて血が流れている。
 ルヴァンの手には血濡れた銀のナイフ……!?

「おい、どういうつもりだ! うぐっ!?」

 問いただそうとするとルヴァンが俺の口にむしゃぶりついて来た。舌を入れて口内を掻き回す。
 うえぇ、酒臭いし気持ち悪い。ふらついているからルヴァンを無理矢理引き離す事も出来ないし……。

「聖女のキスを受けておいて気持ち悪いってさ、ルヴァン」

 聖女のキス? そんな良いものとは思えない、まるで魔物に襲われているような感覚。
 早く離してほしい。

「べちゃくちゃぬちょ……。ふぅ、ほら腕を見てみなさい」

 ようやく顔を離された。口の周りがベタベタで気持ち悪い臭い早く拭きたい。
 服の袖で拭こうとして気付いた。切られた右腕の傷が塞がっている。

「私のキスはどんな傷や病でも治せるの。奇蹟を受けた感想は?」

 得意げな顔を見せるルヴァンの頭にチョップを叩き込む。

「痛い! 何するのよ!?」

「お前が切らなきゃ治す必要なかったんだよ! 二度とするな!!」

 ゴシゴシと袖で口周りを拭う。はぁ、エラい目にあった。

「何なのコイツ! 覚えてなさいよ!!」

 いや一刻も早く忘れたい。もう帰りたい。

「はいはい、それでこちらの聖女がマルスよ」

 目を閉じてじっと座っていた女、マルスが俺を見てちょこんと頭を下げる。
 短く切り揃えられた赤い髪。がっしりした体格で、まるで戦士のようだ。

「マルスは戦いの聖女よ。あなたよりもずっと強いわ」

 強い聖女? それはもう勇者か何か別なものなんじゃないのか?

「剣だけでなく魔法も得意なの。あなたにマルスの相手が務まるかしら?」

 何の務めだよ、その言い方ではまるで稽古の相手をしろというように聞こえるが。

「その通りよ、アース。あなたは明日から私達の戦闘訓練の相手をしてもらうわ」

「戦闘訓練? それは、マルスだけでなくププルもなのか?」

 ププルは身体付きが小さいし、何よりも幼い。マルスのような仕上がった肉体であれば分かるが、ププル相手に稽古をと言われても……。

「何? 小さい女の子を殴るのが趣味なの? あなたとんでもない変態ね」

「ひぃっ!?」

「そんなの思ってねぇよ!!」

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