24 / 72
Main story
妹にとっても幼馴染
しおりを挟む
「正座」
「何でだよ……」
「いいからっ!!」
伊千香の部屋へ引きずり込まれて床に正座しろと指を差される。
母さん曰く年頃の女の子ってのはやっかいらしいから、ここは兄として妹の指示に従うか。
いや、俺も年頃の男なんだが。まぁいいや。
しかしそのまま素直に従うのもやはり面白くない。正座ではなく胡座をかいて座る。伊千香は何も言ってこないので、雰囲気で正座と言いたかっただけだろう。
「お兄ちゃん、本っ当にはなちゃんの事、知らないのね?」
俺の目の前で腰に手を当てて仁王立ちしている伊千香に向けて頷く。
羽那子は伊千香のベッドに腰掛けてクッションを抱き締めている。そのクッションくれよ、尻が痛い。
「ん~~~!
……忘れたのではなく、あくまで知らない、と」
頷く。
「何でそんなにはっきり分かるの? 忘れたと、知らないの違いは何なの!?」
そんなに怒られても俺にもはっきりと言葉には出来ない。
ただ、元々知っている事柄を忘れた時のもやもやとした感覚ではなく、真っ新な状態。初めて見る人、初めて会った人という感覚で羽那子と対面したから、恐らく知らないで合っていると思う。
「明確には伝えられないけれど、知らないんだと思う。
でも伊千香や父さん母さん、学校の友達の反応を見る限り、俺と羽那子が幼馴染みであるという事は理解したし、受け入れてる。
羽那子には申し訳ないなと思うけど……」
「それよ!!」
それ?
「じゃあ何で何の躊躇いもなくはなちゃんの事、羽那子って呼び捨てにするの?
お兄ちゃん、初対面の人を呼び捨てにするような性格じゃないと思うんだけど」
……そう言われれば、そうかもしれない。
「でもみっきーは初めて会った時、美紀って呼び捨てにするって言われたって話してたじゃん」
羽那子が美紀の名を口にすると、伊千香の眉間の皺を寄せる。
「お兄ちゃんはその美紀って子が好きなの!?」
いやいやちょっと待て、声を荒げるな。妹にあの女の事が好きなのかとか聞かれるの、滅茶苦茶居心地悪いぞ。
「あのなぁ伊千香。知り合いだったとはいえ、俺は美紀の事を全く知らないんだよ。出会ったキャンプ合宿をきっかけにして、本人の性格が変わってるから余計にな。
俺が知っている美紀はもっと大人しくて内気で、あんな活発なイメージじゃなかった。
だからほぼ初対面と言ってもいいくらいなんだよ。
俺からすれば羽那子も美紀も、同じ日に知り合ったも同然だ」
自分で説明しながら気付く。羽那子の主張は的を射ている。
昨日初めて出会った二人の女の子。同じスタートライン。距離感は同じだ。
「多分だけど、いっくんも旅先で一人だし仲の良い友達を作りたかったんだよ。だから呼び捨てで呼び合おうぜって言い出して距離感を一気に縮めたんじゃない?
それとは別に、あたしの名前を聞いたのはいっちゃんや伊千子ちゃんから色々と関係性とか付き合い方とかを説明されてたから、空気に吞まれて呼び捨てにせざるを得なくなったんじゃない?」
言われればそうかもしれない。あの雰囲気の中、藤村さんとは呼べないわな。
「……そう言えばお兄ちゃん、はなちゃんの事は『はな』って呼んでたもんね」
少しずつ、少しずつではあるが伊千香も俺の現状を受け入れる姿勢になってきたようだ。
「でもね……、私は嫌だよ! だって、お兄ちゃんははなちゃんと付き合ってて、これからも一緒にいて、ずっとずっと私とも一緒だと思ってたんだよ!?
はなちゃんは私にとっても大事な幼馴染みなんだもん! それなのに突然現れた人がもし、お兄ちゃんの新しい彼女とかになったら、私とはなちゃんの関係はどうなるの!!?」
けれど、急激な環境の変化には耐えられない。戸惑いを隠せない。
「いっちゃん……」
俺と羽那子はやっと、伊千香が何を恐れているのかに気付いた。
「あたしといっちゃんは何があっても、ずっとずっと仲の良い幼馴染みだよ」
「何でだよ……」
「いいからっ!!」
伊千香の部屋へ引きずり込まれて床に正座しろと指を差される。
母さん曰く年頃の女の子ってのはやっかいらしいから、ここは兄として妹の指示に従うか。
いや、俺も年頃の男なんだが。まぁいいや。
しかしそのまま素直に従うのもやはり面白くない。正座ではなく胡座をかいて座る。伊千香は何も言ってこないので、雰囲気で正座と言いたかっただけだろう。
「お兄ちゃん、本っ当にはなちゃんの事、知らないのね?」
俺の目の前で腰に手を当てて仁王立ちしている伊千香に向けて頷く。
羽那子は伊千香のベッドに腰掛けてクッションを抱き締めている。そのクッションくれよ、尻が痛い。
「ん~~~!
……忘れたのではなく、あくまで知らない、と」
頷く。
「何でそんなにはっきり分かるの? 忘れたと、知らないの違いは何なの!?」
そんなに怒られても俺にもはっきりと言葉には出来ない。
ただ、元々知っている事柄を忘れた時のもやもやとした感覚ではなく、真っ新な状態。初めて見る人、初めて会った人という感覚で羽那子と対面したから、恐らく知らないで合っていると思う。
「明確には伝えられないけれど、知らないんだと思う。
でも伊千香や父さん母さん、学校の友達の反応を見る限り、俺と羽那子が幼馴染みであるという事は理解したし、受け入れてる。
羽那子には申し訳ないなと思うけど……」
「それよ!!」
それ?
「じゃあ何で何の躊躇いもなくはなちゃんの事、羽那子って呼び捨てにするの?
お兄ちゃん、初対面の人を呼び捨てにするような性格じゃないと思うんだけど」
……そう言われれば、そうかもしれない。
「でもみっきーは初めて会った時、美紀って呼び捨てにするって言われたって話してたじゃん」
羽那子が美紀の名を口にすると、伊千香の眉間の皺を寄せる。
「お兄ちゃんはその美紀って子が好きなの!?」
いやいやちょっと待て、声を荒げるな。妹にあの女の事が好きなのかとか聞かれるの、滅茶苦茶居心地悪いぞ。
「あのなぁ伊千香。知り合いだったとはいえ、俺は美紀の事を全く知らないんだよ。出会ったキャンプ合宿をきっかけにして、本人の性格が変わってるから余計にな。
俺が知っている美紀はもっと大人しくて内気で、あんな活発なイメージじゃなかった。
だからほぼ初対面と言ってもいいくらいなんだよ。
俺からすれば羽那子も美紀も、同じ日に知り合ったも同然だ」
自分で説明しながら気付く。羽那子の主張は的を射ている。
昨日初めて出会った二人の女の子。同じスタートライン。距離感は同じだ。
「多分だけど、いっくんも旅先で一人だし仲の良い友達を作りたかったんだよ。だから呼び捨てで呼び合おうぜって言い出して距離感を一気に縮めたんじゃない?
それとは別に、あたしの名前を聞いたのはいっちゃんや伊千子ちゃんから色々と関係性とか付き合い方とかを説明されてたから、空気に吞まれて呼び捨てにせざるを得なくなったんじゃない?」
言われればそうかもしれない。あの雰囲気の中、藤村さんとは呼べないわな。
「……そう言えばお兄ちゃん、はなちゃんの事は『はな』って呼んでたもんね」
少しずつ、少しずつではあるが伊千香も俺の現状を受け入れる姿勢になってきたようだ。
「でもね……、私は嫌だよ! だって、お兄ちゃんははなちゃんと付き合ってて、これからも一緒にいて、ずっとずっと私とも一緒だと思ってたんだよ!?
はなちゃんは私にとっても大事な幼馴染みなんだもん! それなのに突然現れた人がもし、お兄ちゃんの新しい彼女とかになったら、私とはなちゃんの関係はどうなるの!!?」
けれど、急激な環境の変化には耐えられない。戸惑いを隠せない。
「いっちゃん……」
俺と羽那子はやっと、伊千香が何を恐れているのかに気付いた。
「あたしといっちゃんは何があっても、ずっとずっと仲の良い幼馴染みだよ」
0
あなたにおすすめの小説
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる