世界で俺だけが幼馴染の事を知らない

なつのさんち

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Main story

幼馴染との入浴

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 妹を持つ兄としての嗜み。それは風呂場へ行く前に妹が今どこにいるかを確認する事。
 事前に居場所を確認しておけば、意図せず覗き魔のレッテルを張られる必要がないし、ゆっくり浴槽に浸かっている最中にドンドンとドアを叩かれて急かされる事もない。
 伊千香いちかの部屋をノックしても反応なし。
 リビングで寛いでいる母さんに聞いてみる。

「伊千香ははなちゃんの家で入るって」

 ん? そんな事あるのか?
 いや、俺は羽那子はなこに関連する記憶がない。
 今までもよく会った事なのだろう。女同士の幼馴染なら一緒に風呂に入るというお付き合いもあるのかもしれない。
 あまり深く聞くのも変な気がするのでスルーしておこう。

「後はもう伊千郎いちろうだけだから、ゆっくり入りなさい」

 との母さんの言葉を聞き、改めて自分の部屋に戻って着替えを手に持つ。

 脱衣所に洗面台がある都合上、どうしても家族とのバッティングは考えられる。
 別に俺が妹や両親に裸を見られても何とも思わないが、逆に望んで家族の裸を見たいとも思わない。
 入浴前のコミュニケーションを怠らなければ、その危険性はぐっと減る。
 脱衣所に鍵を掛けるのはやり過ぎだと思う。
 などとどうでもいい事を考えつつ、ぱぱぱっと服を脱いで浴室へ。
 浴槽の蓋を開けて洗面器でお湯を掬い、掛け湯する。俺が最後だとはいえ、自分自分が気持ち悪いからな。
 浴槽へ浸かる前に浴室の電気を消す。俺は真っ暗な中で風呂に入るのが好きなのだ。
 ポイントは脱衣所にある洗面台の照明を点けておく事。
 完全な暗闇ではなく、うっすらと見えるくらいがちょうどいい。
 今日はもう誰も入らないのだから、少しくらいうつらうつらしてもいいだろう。

 風呂に浸かって五分ほど。じんわりと汗が顔をしたたりこそばいので、両手でお湯を掬って顔を洗う。
 ふぅ~~~、リラックス。両手を浴槽の縁に置いて天井を見上げる。
 あれ? 外に何かある?
 人間大の何かがぼんやりとした光の中に浮かび上がる。
 するりするりと、何かが擦れるような音が聞こえる。
 幽霊? いやいや、そんな非科学的な事は考えない。
 これはあれだ、羽那子の家から帰って来た伊千香が俺を驚かせようとしているに違いない。
 ここは一つ、大きな声を出して逆にビックリさせてやろう。

「誰だ!!?」

ガタンッ! バタバタドテンッ!!

「痛ったぁぁぁい!! ビックリしてこけちゃったじゃない……」

 その声は……、羽那子? 何で羽那子が風呂場に?

「浴室の扉を開けようとしたらいっくんが叫ぶから、バスタオルも取れちゃったじゃん……」

 は? バスタオルが何だって?

「もう……。まぁいっか、えーっと洗面器洗面器っと」

 羽那子が手探りで洗面器を取り、浴槽のお湯を掬っている。

ジャー

「羽那子!? お前一体何してるんだ!!?」

「何って、掛け湯だけど」

「何で掛け湯してんだよ!? 服は!!?」

 確かバスタオルが何だとか言ってたが……?

「だって浴槽に入る前には掛け湯しなきゃでしょ? お風呂入るんだから服は着てないよ、当たり前でしょ?」

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