世界で俺だけが幼馴染の事を知らない

なつのさんち

文字の大きさ
44 / 72
Main story

やり過ぎ幼馴染みと我に返る妹

しおりを挟む
 美紀みきと家の玄関前で解散。何故か走って去って行くその背中を見送った。
 羽那子はなこも一度帰ると言って自分の家へ入っていった。母さんが用意した敷布団を確認しないとならんしな。
 そして俺はすぐにシャワーを浴びようと思うんだけれども、今は何故か伊千香いちかに腕を取られている。

「宿題見て! 分からないところがあるから!!」

「夜でいいだろ、どうせあの二人が来るんだから」

「とにかくお願い!」

「……お前、俺にシャワーを浴びさせないつもりだな?」

「うっ……! な、何の事か分からないなぁ~~~」

 動揺を隠せない伊千香。嘘が下手過ぎる。

「素直な子に育ってくれてお兄ちゃん大感激だわ」

「棒読み! もっと感情を込めて!!」

「お兄ちゃん! 妹が素直で!! 大外刈り!!!」

 妹を容赦なく投げる。もちろん身体を打たないように気を付けております。

「いったぁ~~~い!!」

 スカートがめくれ上がって可愛らしい熊さんが顔を出しているが、妹の下着なんて興味がない。
 投げ捨て御免で伊千香から離れる。

「母さん、俺シャワー浴びるから伊千香を近付けさせないで!」

「よく分からないけど分かったわ」

 物分かりの良い母親で良かった。

「女の子が家に来る前にシャワー浴びるなんて、伊千郎いちろうも色気づいちゃって」

 違う違うそうじゃない。けど懇切丁寧に説明すると話がややこしくなるので放置。


 手早くシャワーを済ませたはいいが、着替えを用意するのを忘れていた。
 バスタオルを腰に巻いて脱衣所を出る。
 ダイニングを通る際に伊千香が俺を見てニヤニヤしていた。
 兄の裸を見て笑うな、気持ち悪い。いや、バカにされてるのか?
 何の部活にも入っていないから、引き締まった自慢の出来るような肉体ではないのは確かだが。
 笑う事はないだろう、と思っているとリビングのソファーに私服姿の美紀が座っていた。

「おう、早かったな」

「……!!?」

 美紀が目を剥いて固まっている。どうしたんだろう。
 あっ……、俺バスタオル巻いてるだけだったわ。
 どうしよう、急に慌てる方が不自然な気がする。
 だいたいこいつ、水着で混浴するとか言ってたくせに男の裸見たくらいで何驚いてるんだ?
 そう思うと俺は何も悪くない気がしてきた。
 うん、堂々と通り過ぎよう。

「とりあえず服着てくるわ」

 コクコクコクッ!! と激しく頷く美紀。
 嫌なら見なければいい訳だし、叫び声を上げる訳でもないし、大丈夫そうだな。
 じゃ、と手を挙げてリビングを通過。階段を上り部屋に戻る。
 扉を開けるとそこには、セパレートのビキニ姿の羽那子が立っていた。

「うわぁーーー!!?」

ガタガタガタガタッ!!

「お兄ちゃんどうしたの!?」

「イチロー大丈夫!?」

 俺の叫び声を聞いて、伊千香と美紀が階段を駆け上がって来た。

「はなちゃん、何してんの……?」

「あーーー! はなちゃんだけズルイ!!」

 妹が正しいツッコミを入れてくれて良かった。
 美紀はもう手遅れだ。ノリが良いのか悪ノリが酷いのかよく分からない。

「お兄ちゃん前!!」

 羽那子の水着姿を見ても冷静にツッコミを入れた伊千香が慌てて俺を指差す。
 何だ? と思ったら俺が叫んだ拍子に腰に巻いていたバスタオルが落ちていたらしい。
 羽那子と美紀の視線が同時に俺の股間に集中するのを感じた。

「スマン!!」

 慌てて前を隠し、ベッドに飛び乗って掛け布団を頭から被る。

「伊千香、申し訳ないけどタンスからパンツ取ってくれ。あTシャツとスウェット」

「はいはいそれあたしが取ってあげるー」

「いいからお前は帰れ!」

「えー、水着姿で外に出ろって言うの?」

 そう言えばその格好で窓を乗り越えてこの部屋に入って来たのか。
 昭和の女泥棒三姉妹みたいだな……。

「はなちゃん、さすがにちょっとやり過ぎ」

 伊千香、いいぞもっと言ってやれ。
 いや、さっき俺がシャワーを浴びようとしたら必至に引き止めてたよな。
 何なんだこの違いは。

「お兄ちゃん、さっきはゴメン。私、正直はなちゃんについて行けそうにない」

 伊千香が我に返ったような、冷めた平坦な声色で謝る。
 そうか。それがいいと思うぞ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

処理中です...