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新たな生活
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わたしは女になりました。
男との行為によって気を失ったわたしが目覚めたのは、しばらくしてからでした。
男は既に部屋にはおらず、わたしは散らばっている下着や衣服を急いで身に着けました。
まだ男との余韻が残っている中で、扉がノックされました。
コンコン
「ミルクさん起きられましたか?」
「はい。」
まだ幼さが残る声に少し安堵したわたしは、思わず答えてしまいました。
ガチャ
扉が開けられ、10歳くらいの男の子が入ってきました。
「お頭からミルクさんの世話をするように頼まれました。ペーターです。」
「ペーターさん、メグ領に何が起こったのか教えて頂けないかしら?」
わたしはダメ元でペーター少年に尋ねてみました。
「いいですよ。
ハーン帝国がナーカ教国に攻めてきたので、ナーカ教国では傭兵を集めたのです。
俺達も傭兵で、ナーカ教国の募集に対して集まったのです。
ハーン帝国の奴ら、都に向かう途中の村々を焼き払いながら進んできやがったんで、俺たちも応戦してたんです。
そしたら、ナーカの都の方から激しい光が飛んできてハーンの兵だけが倒れていきました。
俺達は、ナーカ教国から派遣されている司令官の指示で、メグ領を陥落させるように指示を受けました。
同時に、ナーカの村々がやられたように、街を焼き尽くし、略奪し、蹂躙して来いと。
それで、俺達はメグの街を襲ったのです。」
なんということでしょう。
勝利を確信していた攻撃軍は壊滅し、その彼らが犯した罪をメグの街が受けたのだとは。
わたしの中で『なんてことをしてくれたのだという憎しみと怒りの思いと、自業自得だという思い』がごちゃ混ぜになっています。
純粋に憎しみと怒りだけでない感情を持った自分が不思議でした。
「あの男の人、あっ、お頭って呼んでましたよね。あの方がこの傭兵部隊のリーダーなのですか?」
「ミルクさん。敬語はやめて下さいよ。むずむずするんだ。
そうですよ、マクベス様がこの傭兵部隊の隊長です。
俺も、戦災孤児でマクベス様に拾われたんですよ。」
「それでマクベス様はどちらに?」
「ナーカの指揮官のところですよ。今回の任務が終了したので、報告と報奨金を受け取りに。
多分もうすぐ戻ってこられるんじゃないですかね。」
「おーいペーター!いつまで中にいるんだ。早くこっちに来て祝勝会の準備をせんか!!」
「いっけね。ミルクさん、俺行くね。」
「待って、わたしもお手伝いするわ。」
わたしの言葉にペーター君ちょっと固まっていたけど、頷くとわたしの手を引いて外に出て行った。
外に出ると、大きな鍋を焚火にかけて肉と野菜を煮ている。
その隣りでは、大きな鹿が足を括られて焚火に掛けられていた。
わたしは鍋のところに近づき、その場にいた40歳くらいの女の人に声を掛ける。
「ミルクって言います。
わたしにも手伝わせて下さい。」
「おや、あんた見かけない顔だね。
あー、お頭が攫ってきた子だね。
手が足りなかったんだよ。
あっちに出来たものから並べてくれるかい。」
少し離れたところに大きな焚き火があり、周りにムシロがたくさん並べてあります。
全てのムシロには木の板が置かれています。
「あの木の板が机代わりさ。
あの上に並べていっておくれさ。」
わたしはワゴンを押しながらムシロの上に置いてある木の板の上にまだ熱々の料理を並べていきます。
何度か鍋とムシロを往復すると料理を作っていた女の人がやって来ました。
「あら上手いもんだねぇ。
並べ方ひとつで料理が余計に美味しそうにみえるねぇ。
あんたメイドでもしてたのかね?」
「はい、貴族のお屋敷で侍女をしていました。」
「なら料理も出来るのかい?」
「簡単なものなら。」
「じゃあ、お頭に話しておくからさ、許可が貰えたらわたしの手伝いをしてくれるかい?」
「はい、喜んで。」
「わたしの名はハンナ。よろしくね。」
こうしてわたしは、ハンナさんの仕事を手伝うことになりました。
何もしないでいると、体が鈍るし罪悪感があったから、仕事が見つかって良かったです。
男との行為によって気を失ったわたしが目覚めたのは、しばらくしてからでした。
男は既に部屋にはおらず、わたしは散らばっている下着や衣服を急いで身に着けました。
まだ男との余韻が残っている中で、扉がノックされました。
コンコン
「ミルクさん起きられましたか?」
「はい。」
まだ幼さが残る声に少し安堵したわたしは、思わず答えてしまいました。
ガチャ
扉が開けられ、10歳くらいの男の子が入ってきました。
「お頭からミルクさんの世話をするように頼まれました。ペーターです。」
「ペーターさん、メグ領に何が起こったのか教えて頂けないかしら?」
わたしはダメ元でペーター少年に尋ねてみました。
「いいですよ。
ハーン帝国がナーカ教国に攻めてきたので、ナーカ教国では傭兵を集めたのです。
俺達も傭兵で、ナーカ教国の募集に対して集まったのです。
ハーン帝国の奴ら、都に向かう途中の村々を焼き払いながら進んできやがったんで、俺たちも応戦してたんです。
そしたら、ナーカの都の方から激しい光が飛んできてハーンの兵だけが倒れていきました。
俺達は、ナーカ教国から派遣されている司令官の指示で、メグ領を陥落させるように指示を受けました。
同時に、ナーカの村々がやられたように、街を焼き尽くし、略奪し、蹂躙して来いと。
それで、俺達はメグの街を襲ったのです。」
なんということでしょう。
勝利を確信していた攻撃軍は壊滅し、その彼らが犯した罪をメグの街が受けたのだとは。
わたしの中で『なんてことをしてくれたのだという憎しみと怒りの思いと、自業自得だという思い』がごちゃ混ぜになっています。
純粋に憎しみと怒りだけでない感情を持った自分が不思議でした。
「あの男の人、あっ、お頭って呼んでましたよね。あの方がこの傭兵部隊のリーダーなのですか?」
「ミルクさん。敬語はやめて下さいよ。むずむずするんだ。
そうですよ、マクベス様がこの傭兵部隊の隊長です。
俺も、戦災孤児でマクベス様に拾われたんですよ。」
「それでマクベス様はどちらに?」
「ナーカの指揮官のところですよ。今回の任務が終了したので、報告と報奨金を受け取りに。
多分もうすぐ戻ってこられるんじゃないですかね。」
「おーいペーター!いつまで中にいるんだ。早くこっちに来て祝勝会の準備をせんか!!」
「いっけね。ミルクさん、俺行くね。」
「待って、わたしもお手伝いするわ。」
わたしの言葉にペーター君ちょっと固まっていたけど、頷くとわたしの手を引いて外に出て行った。
外に出ると、大きな鍋を焚火にかけて肉と野菜を煮ている。
その隣りでは、大きな鹿が足を括られて焚火に掛けられていた。
わたしは鍋のところに近づき、その場にいた40歳くらいの女の人に声を掛ける。
「ミルクって言います。
わたしにも手伝わせて下さい。」
「おや、あんた見かけない顔だね。
あー、お頭が攫ってきた子だね。
手が足りなかったんだよ。
あっちに出来たものから並べてくれるかい。」
少し離れたところに大きな焚き火があり、周りにムシロがたくさん並べてあります。
全てのムシロには木の板が置かれています。
「あの木の板が机代わりさ。
あの上に並べていっておくれさ。」
わたしはワゴンを押しながらムシロの上に置いてある木の板の上にまだ熱々の料理を並べていきます。
何度か鍋とムシロを往復すると料理を作っていた女の人がやって来ました。
「あら上手いもんだねぇ。
並べ方ひとつで料理が余計に美味しそうにみえるねぇ。
あんたメイドでもしてたのかね?」
「はい、貴族のお屋敷で侍女をしていました。」
「なら料理も出来るのかい?」
「簡単なものなら。」
「じゃあ、お頭に話しておくからさ、許可が貰えたらわたしの手伝いをしてくれるかい?」
「はい、喜んで。」
「わたしの名はハンナ。よろしくね。」
こうしてわたしは、ハンナさんの仕事を手伝うことになりました。
何もしないでいると、体が鈍るし罪悪感があったから、仕事が見つかって良かったです。
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