奴隷に落ちた貴族令嬢 ~最強魔法戦士は戦わない スピンオフ② ~

まーくん

文字の大きさ
15 / 20

すれ違い

しおりを挟む
モーグル王国に無事入国できました。

門の前ではモーグル王国で経理部門を担当して下さるマースさんが待っていてくれました。

「皆さん、モーグル王国へようこそ。

モーグル王国王都物流センターで経理を担当させて頂きますマースです。
よろしくお願いします。」

「お世話になります。経理部のミルクです。よろしくお願いします。」

「早速ですが、物流センターの方にご案内させて頂きます。」

わたし達は、マースさんの案内で物流センターに向かいました。

「ミルクさん、お泊まりは寮でとお聞きしていますが、良かったのでしょうか?」

「ええ、物流センターまで近いですし、1人で気楽ですから。」

「まぁそうかもしれませんね。
警備は万全だし、何より食堂が美味しいですものね。

カトウ運輸の食堂は何処もあんなに美味しいのでしょうか?」

「そうですね。わたしもあまり多くは知りませんが、確かに何処も美味しいです。

あの料理のレシピは、会頭が考案されているのですよ。」

「そうなんですか。会頭は、マサル様でしたよね。」

「ご存知でしたか。」

「ええ、マサル様はこの国では神の使徒たる存在ですから。

この荒廃した国を救っただけでなく、全ての民を救済し、雇用と経済を活性化させて下さったのですからね。

ほら、あの広場にある像をご覧下さい。

熱心な信者達が、絶えずお参りしていますよ。

かくいうわたしもその1人ですが。」

広場にある巨大な銅像はまさしく会頭ご本人でした。






「ミルクさん、お疲れ様でした。

本日は、ささやかながら夕食会を用意しておりますので、それまでこちらでごゆっくりなさって下さい。」

物流センターに隣接した寮に着いて、やっとひと心地つきました。

ベッドに横になって目を閉じると、疲れていたのかそのまま眠ってしまったのです。



扉をノックする音で、わたしは目が覚めました。

指定されていた夕食会の時間です。

扉を開けると、隣の部屋のハリスさんが立っていました。

「そろそろ時間だな。一緒に行こうか。」

ハリスさんってば、ゴツい強面なのに優しいんですよ。

「ふふっ。」

「何か可笑しいことでもあったのかい?」

「ええ、ハリスさんって、相変わらず優しいなって。」

「からかうんじゃねーよ。」

ハリスさんの顔が真っ赤です。

「チッ、早く行くぞ。」

「はい。」

マースさんから指定された物流センターの食堂に行くと大勢の人達に迎えられました。

「ハリスさん、ミルクさん、お待ちしておりました。

さあ、こちらにどうぞ。」

席に案内されると、そこには壮年の男の人がおられました。

「ハリスさん、ミルクさん、ご紹介します。

宰相のカッパ様と外務大臣のハッカ様です。」

「「えっ?宰相様と外務大臣様?」」

思わずハリスさんと2人でハモっちゃいました。

「カトウ運輸の物流センターは、我が国の国家プロジェクトですからなぁ。

瀕死の我が国が復活を掛けるだけのきっかけを頂いたんです。

マサル殿には足を向けて眠れないですな。

まだ、本格的には動き始めていませんが、絶対に失敗出来ないプロジェクトですな。

なぁ、ハッカ。」

「その通りです。
わたしが国外との交易や、折衝を担当し、内務大臣が国内の行政改革を担当します。

そして今回の核となる物流センターは、行革担当長官のマースが担当させて頂きます。

少なくとも5年間、国内の経済基盤が確固とするまでは、わたし達が最前線で頑張りますよ。

よろしくお願いしますね。」

国を運営されている責任者の御三方が最前線に出て来られるということで、モーグル王国の全力の覚悟を痛感しました。

これは責任重大です。

ハリスさんも緊張して、カチカチですね。

物流センターの食堂なので、通常の仕事中の方達もたくさんおられます。

遠巻きに見ている人や、お偉いさんに挨拶に来る人などで、てんやわんやな状態になっています。

でもマースさんが行革担当長官だったなんて驚きです。

失礼の無いようにやれるかどうか心配ですが、女は度胸ですね。

頑張りたいと思います。






怪我はすっかり治ったのだが、相変わらず記憶が戻らない。

この山小屋での生活も2年を越え、記憶が戻らないことに対する焦りもある。

今日も薪や炭、薬草、動物の毛皮等、現金に換えるために街に下りる。

「こんにちは、リッツさん。」

「やあ、マックさん。今日もすごい荷物だね。

また薪と炭を買わせてもらうよ。

マックさんのところのは、評判が良いからね。
本当助かるよ。」

俺は街ではマックと名乗っている。

怪我の中には刀傷もたくさんあったから、恐らく何かのトラブルに巻き込まれていた可能性が高い。

まだ記憶が戻らない以上、マクベスの名は名乗らない方が良いと判断したのだ。

「マックさん、毛皮は無いかい?」

「いろいろあるよ。先にカトウ運輸に薬草を持って行って、それから戻ってくるから、それでも良いかい?」

「ああ良いよ。ついでに食堂でお昼も食べて来るんだろ。」

「そうだな。あそこの料理は格安なのに無茶苦茶美味いんだ。

たまに山から下りた時のご馳走だからな。」

カトウ運輸に薬草を納めた後、いつものように社員食堂に来た。

うん?今日はいつもよりかなり混雑しているな。

厨房のおばさんに聞いてみると、本社からお客様が来ていて、宰相様達が来て歓迎会をしているらしい。

宰相様らしき人が座っている席に若い女の人がちょこんと居場所が無さげに座っている。

何か引っかかるものがあったが、皮職人が待っているのを思い出し、ハンバーグ定食を頬張って、早々に食堂を後にしたのだった。











しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

悪役令嬢の役割は終えました(別視点)

月椿
恋愛
この作品は「悪役令嬢の役割は終えました」のヴォルフ視点のお話になります。 本編を読んでない方にはネタバレになりますので、ご注意下さい。 母親が亡くなった日、ヴォルフは一人の騎士に保護された。 そこから、ヴォルフの日常は変わっていく。 これは保護してくれた人の背に憧れて騎士となったヴォルフと、悪役令嬢の役割を終えた彼女とのお話。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...