100年生きられなきゃ異世界やり直し~俺の異世界生活はラノベみたいにはならないけど、それなりにスローライフを楽しんでいます~

まーくん

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ムーン大陸でも国造り

どんな国が理想ですか

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俺はイリヤとミーアと3人で外の世界をモニター越しに見ている。

人工衛星みたいに空に浮いている魔道具に付いたカメラから見える光景は、昔日本で見ていたゲームの実況映像のようだ。

手元にあるリモコンを操作すると角度を変えたり拡大したりできる優れものだ。

1台の魔道具でムーン大陸全体をカバーでき、同じような衛星の魔道具が5台ほど空に浮かんでいる。

もちろん、隠蔽魔法がかかっているので地上からは見えないよ。

「ジーポン王国は毎週運動会をしているね。」

「そうだね、ジーポン王国は早くから週休2日制を取り入れたから、休みの内の1日は運動会をやっているみたいだね。」

「先日ジーポン王が報告していましたけど、運動会の参加者は国民の2割くらいらしいですが、1カ月の参加者としてみると6割くらいの人が参加している計算になるみたいですね。

高齢者や赤ん坊の数を考えると、運動会に参加できる年齢のほぼ8割強が毎月1日以上参加しているそうです。

毎回の開催費についても当初は国費の持ち出しだったのが、最近は協賛金や寄付金によって賄えるようになっているようです。

運動会で国民同士が仲良くなるケースも多く、犯罪率が低下したり、病院への通院率が下がったりと多くのメリットが出ているみたいですね。

予想しなかったケースとしては、地域の結びつきが強くなったことで、何らかの理由で困窮している家庭を早期に発見でき、地域でケアできたこともあるそうです。」


最近『定例王会議』に出席しているイリヤが報告してくれる。

「ジーポン王国の報告を聞いてエレクトス王国やインディアナ神国でも週休2日制を採用することを検討するようです。

ポルトー魔国は相変わらず通常運転ですが。」

「魔人は長命だからね~。それに医療魔法も使える人が多いし、魔法を使って個人で生活できる人が多いから、あんまり国としての活動をしていないんだようね~。」

「そうだな、転移前から生きている人もまだたくさんいるし、あまり生活を変える必要もないんだろうね。」

「でも、若い人達はだいぶ考え方が変わっているよ~。人族と結婚したり人族と一緒に事業をしている人もいるし~。

人族とのハーフもかなりいるみたいだよ~。


でも、弊害もあるんだ。人族と魔人では寿命が圧倒的に違いからね。人族と結婚した人は早くに相手を亡くしてしまうから、その後放心状態になって自殺する人も増えて来てる。

この前お父様と会った時に『婚活パーティー』って言うのかな、同じような境遇の人を集めて出会いの場を設けているって。」


「やっぱりいろんな問題があるもんだな。
地球でも様々な問題があったから、問題があるのが当たり前なんだろうけど。

でもさ、俺時々考えるんだよ。理想の国ってどんな国なんだろうな?」

「「理想の国?」」

「そう、理想の国。理想郷って言うんだけど、俺のいた世界で考えられている思想の中に、死んだ後に皆んなが平和で幸せも暮らせる世界があって、それを理想郷っていうんだ。

学校でさあ、歴史の時間に理想郷について学んだことがあって、どんな世界なんだろうなあって考えていたことがあるんだ。

でもさ、全ての人が幸せに感じるってありえないよね。

こっちの世界に来てから特に思うんだ。

誰かが幸せになるためには誰かが犠牲になっているんだから、両者が同時に幸せになるなんてことは無いよね。

ポルトー魔国は魔法があって皆んなが自分だけで生活できるから、理想郷に近いのかなって思ってたんだけど、さっきの話しを聞いて、そうでもないのかなあと思うし。」


「ヒロシ~。難しいこと考えてんな~。

幸せって心の持ちようだろ~。幸せだと思ったら幸せだし、不幸せだって思ったら不幸じゃないか~。

そんなこと国に求めるのが間違ってるんじゃないか~。」

「そうですよ、ヒロシ様。ミーアちゃんの言う通りだと思います。」

そうだよな、ふたりの言う通りだ。

健康で、好きな仕事が出来て、家族がいて、そんな当たり前なことが幸せなんだろうな。

そういう社会基盤を作ってやることが出来ればいいんだ。

そういう意味では今やっていることは間違っていないんだろう。

「今の世界は理想郷に近いんじゃないですか。わたしはそう思います。

休みがあって好きなことができる時間が十分にあるし、仕事だって好きな職業に就ける。
義務教育で裕福でも貧乏でも同等の教育が受けられるし。

これだけ国から与えられているんだから後は個人の心の持ちようだけじゃないですか。

これ以上は無理だし、やる必要も無いと思います。」

イリヤは王族だったから国の在り方についてはずいぶん学んできたんだろうな。

その目から見てそんな風に映るんだったら、本当にそうなのかもね。

「イリヤ、ミーア、ありがとうな。」

寄り添ってくるふたりを軽く抱きしめて、俺は幸せをかみしめるのだった。

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