115 / 132
エピローグ
さようなら
しおりを挟む
ある日いつものように目が覚めた。
今日はいつもより身体の具合が良いようだ。
最近身体のあちこちにガタがきているみたいで動くのが辛い。
俺も120歳になっている。
昨日はオシンさんが遊びに来ていて、一日中愚痴を言って帰ったな。
本当あの人は元気な人だ。
もしかしたらオシンさんにも魔人の血が混じっているのかもな。
ベッドの中で微睡んでいると、目の前にミーアの顔が現れた。
「ヒロシ、おはよう。体調はどう?」
「ああ、今日は調子良いようだ。」
「それは良かった。お風呂にする?ご飯にする?それともわ、た、し?」
120歳のお爺さんにそれは無いだろうと思うだろうが、これが俺達の朝のあいさつなんだ。
「朝御飯にしようか。」
「わかったよ。マリヤ、朝御飯にしようって。」
「はーい、準備出来てるわよー。顔を洗ってきて下さいねー。」
洗面所で顔を洗って食卓へ移動する。
その間、ずっとミーアがついて来ている。
これもいつもの朝のルーティン。
「お父様、おはようございます。
お体の調子は如何ですか?」
「マリヤ、おはよう。今日はいつもより良さそうだ。」
「良かったです。レーサも心配していたんですよ。」
数日前から風邪気味で体調を崩していたから心配してくれていたのだろう。
朝御飯は米のお粥とフルーツ。
ご飯を頂いた後は、外に出て散歩を楽しむ。
ミーアが横に付き添ってくれているお陰で、倒れずに歩いていられる。
「ミーア、今日は天気が良いな。
イリヤが亡くなった日もこんなに良い天気だった。」
「そうだったな。僕も良く覚えているよ。
あれから、もう60年も経っているんだよ。
早いものだね。」
「そうだな。俺も長く生きているものだ。
ミケツカミ様との約束も何年か過ぎてしまったよ。」
「ヒロシ、そんなこと言うなよな。
もう少し一緒にいようよ。
ヒロシと別れて生きるなんてもう考えられないよ。」
「ミーア、俺もそうしたいけど魔人と人間じゃ寿命が違うからね。
俺が120歳まで生きているのが不思議なくらいなんだ。」
「それでも嫌だ。そうだ、ヒロシが死んだら僕も一緒に死ぬことにするよ。
そしたらまた一緒だよね。」
「ミーア、馬鹿なことをするんじゃ無いよ。
死んだら一緒にいられる補償なんて無いんだからね。」
「むー!」
そんなことを話しながら、いつもの散歩コースを歩き終えた。
家に戻ると縁側に出てお茶を楽しむ。
しばらくミーアと話していたら昼ご飯が出来たとマリヤが呼びに来た。
食卓に行くとマリヤとレーサが準備していた。
レーサは魔人の血が濃いため見た目はミーア同様に若いままだけど、マリヤは50歳くらいかな。
実年齢は90歳を超えているはずだから、俺の長寿と関係があるのかも。
それはともかく、昼ご飯を楽しんだ。
それからしばらく昼寝をしてからまた縁側へ。
ついて来たミーアとふたりでお茶を楽しむ。
陽は傾き始め少し寒くなってきた。
今日は少し昼寝が短かったかな、少し眠い。
「…ミーア、少し眠いよ。ちょっと眠ってもいいかい……」
「ヒロシ、ヒロ…、ヒ…」
ミーアが呼んでいるみたいだけど、あんまり聞こえないや。
目の前がだんだん暗くなってきた。
あれ、俺死んじゃうのかな。
まぁもう充分生きたしな。悔いは無いや。
ミーアと最期のお別れが出来なかったのが残念だけど、しょうがないよね。
>>>>>>>>>>>>>
ヒロシが死んじゃった。
一緒にお茶を楽しんでいたら急に眠くなったって。
いくら呼びかけても応えてくれない。
そうだ、僕も死ななきゃ。
すぐに死んだらヒロシと一緒に行けるかも。
僕は死のうとして家を飛び出した。
まず最初にやったのは首を吊ること。
魔人の身体は強く、蔓の方が先に切れて失敗。
同じく谷底に飛び込むもダメ。
森の中で魔物に襲わせようとしたけど、近寄っても来なかった。
途方に暮れているとレーサが泣きながら探しにやって来た。
「お母様、止めてください。
お父様が亡くなって、お母様まで居なくなってしまったら悲しいです!」
レーサの悲痛な叫びを聞いて僕は我に返った。
そうだ、レーサやマリヤを悲しませちゃいけないんだった。
それからのことはあんまり覚えていない。
ヒロシが死んじゃった。それだけが頭の中にあって、何も思い出せないんだよ。
そうして1年ほどが経った頃、寝ている僕の夢の中にヒロシがやって来たんだ。
今日はいつもより身体の具合が良いようだ。
最近身体のあちこちにガタがきているみたいで動くのが辛い。
俺も120歳になっている。
昨日はオシンさんが遊びに来ていて、一日中愚痴を言って帰ったな。
本当あの人は元気な人だ。
もしかしたらオシンさんにも魔人の血が混じっているのかもな。
ベッドの中で微睡んでいると、目の前にミーアの顔が現れた。
「ヒロシ、おはよう。体調はどう?」
「ああ、今日は調子良いようだ。」
「それは良かった。お風呂にする?ご飯にする?それともわ、た、し?」
120歳のお爺さんにそれは無いだろうと思うだろうが、これが俺達の朝のあいさつなんだ。
「朝御飯にしようか。」
「わかったよ。マリヤ、朝御飯にしようって。」
「はーい、準備出来てるわよー。顔を洗ってきて下さいねー。」
洗面所で顔を洗って食卓へ移動する。
その間、ずっとミーアがついて来ている。
これもいつもの朝のルーティン。
「お父様、おはようございます。
お体の調子は如何ですか?」
「マリヤ、おはよう。今日はいつもより良さそうだ。」
「良かったです。レーサも心配していたんですよ。」
数日前から風邪気味で体調を崩していたから心配してくれていたのだろう。
朝御飯は米のお粥とフルーツ。
ご飯を頂いた後は、外に出て散歩を楽しむ。
ミーアが横に付き添ってくれているお陰で、倒れずに歩いていられる。
「ミーア、今日は天気が良いな。
イリヤが亡くなった日もこんなに良い天気だった。」
「そうだったな。僕も良く覚えているよ。
あれから、もう60年も経っているんだよ。
早いものだね。」
「そうだな。俺も長く生きているものだ。
ミケツカミ様との約束も何年か過ぎてしまったよ。」
「ヒロシ、そんなこと言うなよな。
もう少し一緒にいようよ。
ヒロシと別れて生きるなんてもう考えられないよ。」
「ミーア、俺もそうしたいけど魔人と人間じゃ寿命が違うからね。
俺が120歳まで生きているのが不思議なくらいなんだ。」
「それでも嫌だ。そうだ、ヒロシが死んだら僕も一緒に死ぬことにするよ。
そしたらまた一緒だよね。」
「ミーア、馬鹿なことをするんじゃ無いよ。
死んだら一緒にいられる補償なんて無いんだからね。」
「むー!」
そんなことを話しながら、いつもの散歩コースを歩き終えた。
家に戻ると縁側に出てお茶を楽しむ。
しばらくミーアと話していたら昼ご飯が出来たとマリヤが呼びに来た。
食卓に行くとマリヤとレーサが準備していた。
レーサは魔人の血が濃いため見た目はミーア同様に若いままだけど、マリヤは50歳くらいかな。
実年齢は90歳を超えているはずだから、俺の長寿と関係があるのかも。
それはともかく、昼ご飯を楽しんだ。
それからしばらく昼寝をしてからまた縁側へ。
ついて来たミーアとふたりでお茶を楽しむ。
陽は傾き始め少し寒くなってきた。
今日は少し昼寝が短かったかな、少し眠い。
「…ミーア、少し眠いよ。ちょっと眠ってもいいかい……」
「ヒロシ、ヒロ…、ヒ…」
ミーアが呼んでいるみたいだけど、あんまり聞こえないや。
目の前がだんだん暗くなってきた。
あれ、俺死んじゃうのかな。
まぁもう充分生きたしな。悔いは無いや。
ミーアと最期のお別れが出来なかったのが残念だけど、しょうがないよね。
>>>>>>>>>>>>>
ヒロシが死んじゃった。
一緒にお茶を楽しんでいたら急に眠くなったって。
いくら呼びかけても応えてくれない。
そうだ、僕も死ななきゃ。
すぐに死んだらヒロシと一緒に行けるかも。
僕は死のうとして家を飛び出した。
まず最初にやったのは首を吊ること。
魔人の身体は強く、蔓の方が先に切れて失敗。
同じく谷底に飛び込むもダメ。
森の中で魔物に襲わせようとしたけど、近寄っても来なかった。
途方に暮れているとレーサが泣きながら探しにやって来た。
「お母様、止めてください。
お父様が亡くなって、お母様まで居なくなってしまったら悲しいです!」
レーサの悲痛な叫びを聞いて僕は我に返った。
そうだ、レーサやマリヤを悲しませちゃいけないんだった。
それからのことはあんまり覚えていない。
ヒロシが死んじゃった。それだけが頭の中にあって、何も思い出せないんだよ。
そうして1年ほどが経った頃、寝ている僕の夢の中にヒロシがやって来たんだ。
1
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる