100年生きられなきゃ異世界やり直し~俺の異世界生活はラノベみたいにはならないけど、それなりにスローライフを楽しんでいます~

まーくん

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番外編

番外編 オシンさん 8

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「ヒロシさんとミーアちゃんが行っちゃいましたね。もっと一緒にいたかったなあ。」

「オシンさん、無理言うんじゃないですよ。彼らには彼らの世界があるんですからね。」

「だってーー」

「オシンさん、しようがないですよ。さあ、さあ、さっさと掃除しましょ。」

「オハルちゃんは切り替えが早いよねー。中々割り切れないんだよなー。」

「オシンさんは人見知りのくせに気に入った人には感情が入り過ぎです。」

「そーかなー。なんかでもさ、ヒロシさん達って神出鬼没だから、突然現れたりしてーー。そんなこと無いか。ハハハハハ。

えっ、ええっ。ヒ、ヒロシさん!!」

ヒロシ達が去ってまだ1時間ちょっとしか経っていないクルステの居室では、オシンやオハル達が掃除をしながらペチャクチャと話していた。

そこへ突然ヒロシと数名の人間が現れる。

「あれヒロシ君、さっき転移したばかりなのにどうしたんだい?」

ヒロシがオシン達に向こうでの異変について説明していたらクルステが入ってきた。

ヒロシ達が向こうの世界を心配しているのでクルステは水晶にインディアナ神国の現状を映した。

そこに映る惨状を目の当たりにしてヒロシ達は大急ぎで元の世界へと戻る。

クルステやオシン達は戻って行ったヒロシ達の安全を祈るしかなかったのだった。




そして1週間ほど経ったある日、ヒロシが再びムーン大陸に現れた。

「オシンさん久しぶりです。」

「久しぶりってほどでもないですけど。」

「ああ、そうでしたね。たしかこっちの時間の進み方は向こうの80分の1くらいでしたね。

ところでクルステさんはおられますか?」

「執務室におられると思いますが。」

「分かりました。行ってみます。」

ヒロシの話しによると、向こうの世界は間もなく消滅するとのこと。

その前に向こうの住人を国ごとこちらに持ってきたいとのことだった。

「分かった。是非協力させてもらおうと思う。
しかし、土地がこれだけでは少な過ぎないか?」

クルステの言葉に、ヒロシは時間魔法を使って10000年前まで遡らせる。

海に沈んでいた島全体が10000年前のように隆起し、建物や地形を含め10000年前に戻る。

残念ながら人々は戻らなかったが。

土地の広さが確保できたことが確認できるとヒロシは元の世界に戻っていった。




そしてすぐに、大勢の人達がムーン大陸に転移してきたのだった。




「ミーアちゃん、ヒロシさんは?」

泣きじゃくるミーアちゃんを慰めながらオシンが尋ねると、隣にいた女性が代わりに答えた。

「ヒロシ様は、皆をここに送るために、自らを犠牲にされたのです。」

涙ぐみながらも気丈に話す彼女はたった今この地に降り立った4つの国のひとつ、エレクトス王国の王女であり、ヒロシさんの奥さんだという。

「あのヒロシさんが?まさか。」

事情を知ったクルステ様も水晶を覗き込んで行方を探してくれているようだがわからないようだ。

「あの人は、ヒロシ様は必ず帰って来ます。

必ずです!

だってヒロシ様は何度も何度……も」

「そうだよ、イリヤのいう通りなんだから。

あのヒロシが死ぬわけ無いんだからね。

たとえ死んでたとしても、ミケツカミ様に生き返らせてもらって戻って来るんだからな。」

顔を臥せてすすり泣くイリヤさんの代わりにミーアちゃんが力強く言い放つ。

「そうだな。ヒロシは必ず戻って来る。

未だ俺との決着もついていないのに、戻って来ないはずはないだろう。」

「そうだともイリヤ。シルベスタさんの言うとおりだ。ヒロシ君は必ず帰って来るさ。」

ミーアちゃんのお兄さんのシルベスタさんとイリヤさんのお兄さんのフランシスさんがふたりを励ましている。

シルベスタとフランシスの美形にオシンは悲しむ気持ち半分、目の保養半分の複雑な心境。

どちらかと良い仲になりたいと思うが今のこの重い雰囲気で何かを出来るほどオシンは器用ではなかった。

しかし、ここで行動しなかったことが、後の大いなる後悔になることをこの時のオシンは知るよしもなかった。



月日は無情にも流れる。


実はこの大陸には大きな問題があった。

神殿の一角だけが時間の流れる速度が異常に遅いのだ。

実際には、ヒロシの時空間魔法による大陸の復元が影響しているらしく、神殿以外の時間が80倍速になっているのだ。

そのため、長期に渡る復興を見守るために若い世代が集められて神殿に集まり、クルステ達と一緒にこの大陸の運営を決めていくことになり、彼らの献身的な活動により、順調に復興は進んでいた。

そして神殿の中ではもうすぐ3年、外では既に240年の月日が経とうとしていた。

「時間は全てを洗い流すとは言うけど、あれから3年かー。


あっ、ヒロシさん。お久しぶりですねえ。


……って、ヒロシさん?!」

秘書室でスケジュールの確認をしていると、窓からヒロシさんが覗いている。

彼はいつも唐突に現れるからこんな程度じゃ動じないんだけど、ヒロシさんって行方不明だったよね。

外側から来て全く事情を知らないヒロシさんに簡単に説明して、クルステ様のところへ案内する。

「ミーアさんやイリヤさんは、昔あなたが住んでいた家に今も住んでおられると思いますよ。

早く行って顔を見せてあげて下さい。」

クルステ様はこれまでの経過を端的に説明すると、ミーアちゃん達が待っていることを教える。

ふたりの元へ急ぐヒロシを見送り、オシンは安堵のため息をつく。

良かったね、ミーアちゃん、イリヤさん。

でもこれでまた独り者はわたしだけになっちゃったな。

この3年の間に、オハルちゃんはフランシスさんとくっついちゃったし、
シルベスタさんとハリス王子は結婚しているし。
クルステ様は...元々男に興味が無いみたい。

「ハーー」

オシンのため息はとっても深かった。
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