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番外編
番外編 オシンさん 7
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神殿最上階のクルステの居室。
既に下の階までマイロは迫ってきた。ここまで来るのも時間の問題であった。
何やら壁に書いていたクルステは、用意してあった魔方陣の上に残っている秘書達に入るように促す。
全員入ったことを確認後、最後にクルステが入って魔力を流した。
激しい光が広がり、間一髪、居室に入ってきたマイロ達の眼前でクルステ達は完全に消えてしまった。
「ここはどこでしょうか?」
最初に意識を取り戻したのはオシンだった。
薄暗い日の当たらない場所。
遠くから人の気配はしているが、灰色の壁に囲まれたここは、明らかにムーンの都ではない。
ならばどこか。
見上げれば天井から小さな明かりがひとつわたし達を照らしている。
辺りを見渡すとクルステや後輩の神子達が横たわっていた。
「クルステ様!」
オシンはクルステに近づき肩をゆする。
僅かな反応の後、目を開けて見える光景に「ふふっ」とクルステはほほ笑んだ。
「上手くいったようだな。他の皆も大丈夫か?」
「はい、未だ意識はありませんが、息はしています。大丈夫かと。」
「とりあえずは…だな。
オシン、どうやらわたし達は過去にヒロシ君が住んでいた世界に来たようだ。
ほらヒロシ君の話しに出てきた地下街とかいうところじゃないかな。」
「そう言われれば、そんな気も。」
「ここにも一応神殿前に繋がる魔方陣を残しておくかな。」
「それならマイロ達が来る少し前に戻れるようにしておきませんか?
こちらで何か解決策が見つかってマイロを撃退出来るかも。」
「それは良い案かも知れないね。
ただここは魔力がほとんど無いみたいだ。
起動できるだけの魔力がわたしには残ってないがな。
まあ、皆の意識が戻る前に、とりあえず書いておこう。」
クルステが魔方陣を書いている間に秘書達が次々と意識を取り戻し、魔方陣を書き終える頃には、全員が動けるくらいまで回復していた。
「クルステ様、こちらから外に出られそうです。」
秘書のひとり、オハルが辺りを廻って出口を見つけたようだ。
そちらに全員で進んで行くと、入り組んだ通路を経て少し広い通路に出てきた。
「ほらオシン、見てごらん。ヒロシ君が言っていた地下街とかいうのとそっくりじゃないか。
人はいないが、雰囲気は聞いていたとおりだ。」
通路はピカピカで精巧な一枚岩で作られているようで、壁には様々な装飾が施され、天井には規則正しく明かりが点っている。
しばらく歩いているとあちこちに階段があり、鉄の扉に閉ざされていた。
「おそらくこれを昇ると地上に出るのであろうな。
ヒロシ君は地下街は夜になると閉ざされると言っておったから、地上はいま夜なのだろう。」
しばらく近くにあったベンチで休んでいると遠くからガガガガという音が聞こえ出す。
すぐ近くにある鉄の扉が下から上にゆっくり開き出した。
しばらくすると人が入って来る気配がした。
クルステ達は物陰に入って様子を伺う。
やがて何人目かに自分達と同年代に見える女性が入って来た。
「どうやら服装には大きな違和感がなさそうだな。
……オシンの服装は、真っ青のスーツにまっ黄色のスカーフ、……やはりこっちでも浮きそうだな。」
「ほっといて下さい!」
「オシン以外は問題なさそうだな。
皆行くぞ。」
自慢のコーデにケチをつけられて不満そうなオシンを最後尾に、クルステ達はオープン前の地下街を歩き出した。
ここの地下街は広く、オープン時間を過ぎて、昼の賑わいが一段落した頃、漸くクルステ達は元の場所に戻って来れた。
「クルステ様、凄い人混みでしたね。
あんなに沢山の人がこんな狭い通りを通るとは。」
「いやまさしく。しかしオシン、お前のその格好もたまには役に立つものだな。
お前の周りだけは皆に避けられていたから、動きやすかったぞ。」
「!! …………お腹空きましたね。」
怒りより食い気のオシンである。
そんなたわいもない会話に和んでいた時、突然大きな揺れに襲われる。
何事かと身構えていると、クルステ達は強い光に包まれていた。
光が薄まり辺りを見渡すとそこはマイロに破壊されたはずのクルステの居室で、ヒロシが微笑んでいたのだった。
クルステ達が魔方陣で避難してから1万年の時が経ったことを告げるヒロシ。
そして、この転移の犠牲になったであろうヒロシの元の世界の住人を無事に還すクルステ。
数刻の時が過ぎて、漸くひと心地ついたオシン達であった。
「さて、クルステさん達がこの世界に住むなら、マイロは一掃しとかないとね。」
ヒロシはそう言うと、マイロ討伐に向かった。
オシン達はこれからの生活の準備中。
森を開拓して畑を作ったり、クルステがどこからか持ってきた家畜の世話をしたり。
一年あまりの時間を費やしてマイロを一掃したヒロシとミーアが戻って来た頃には、何とか生活出来る環境になっていた。
「クルステさん、俺達はエレクトスに戻りたいと思います。」
マイロの最後の巣を潰したその日、ヒロシ達はクルステに帰りたいと告げる。
オシン達はふたりに残って欲しかったのだが、向こうでも待っている人達がいるからと言われると、それ以上は言えなかった。
既に下の階までマイロは迫ってきた。ここまで来るのも時間の問題であった。
何やら壁に書いていたクルステは、用意してあった魔方陣の上に残っている秘書達に入るように促す。
全員入ったことを確認後、最後にクルステが入って魔力を流した。
激しい光が広がり、間一髪、居室に入ってきたマイロ達の眼前でクルステ達は完全に消えてしまった。
「ここはどこでしょうか?」
最初に意識を取り戻したのはオシンだった。
薄暗い日の当たらない場所。
遠くから人の気配はしているが、灰色の壁に囲まれたここは、明らかにムーンの都ではない。
ならばどこか。
見上げれば天井から小さな明かりがひとつわたし達を照らしている。
辺りを見渡すとクルステや後輩の神子達が横たわっていた。
「クルステ様!」
オシンはクルステに近づき肩をゆする。
僅かな反応の後、目を開けて見える光景に「ふふっ」とクルステはほほ笑んだ。
「上手くいったようだな。他の皆も大丈夫か?」
「はい、未だ意識はありませんが、息はしています。大丈夫かと。」
「とりあえずは…だな。
オシン、どうやらわたし達は過去にヒロシ君が住んでいた世界に来たようだ。
ほらヒロシ君の話しに出てきた地下街とかいうところじゃないかな。」
「そう言われれば、そんな気も。」
「ここにも一応神殿前に繋がる魔方陣を残しておくかな。」
「それならマイロ達が来る少し前に戻れるようにしておきませんか?
こちらで何か解決策が見つかってマイロを撃退出来るかも。」
「それは良い案かも知れないね。
ただここは魔力がほとんど無いみたいだ。
起動できるだけの魔力がわたしには残ってないがな。
まあ、皆の意識が戻る前に、とりあえず書いておこう。」
クルステが魔方陣を書いている間に秘書達が次々と意識を取り戻し、魔方陣を書き終える頃には、全員が動けるくらいまで回復していた。
「クルステ様、こちらから外に出られそうです。」
秘書のひとり、オハルが辺りを廻って出口を見つけたようだ。
そちらに全員で進んで行くと、入り組んだ通路を経て少し広い通路に出てきた。
「ほらオシン、見てごらん。ヒロシ君が言っていた地下街とかいうのとそっくりじゃないか。
人はいないが、雰囲気は聞いていたとおりだ。」
通路はピカピカで精巧な一枚岩で作られているようで、壁には様々な装飾が施され、天井には規則正しく明かりが点っている。
しばらく歩いているとあちこちに階段があり、鉄の扉に閉ざされていた。
「おそらくこれを昇ると地上に出るのであろうな。
ヒロシ君は地下街は夜になると閉ざされると言っておったから、地上はいま夜なのだろう。」
しばらく近くにあったベンチで休んでいると遠くからガガガガという音が聞こえ出す。
すぐ近くにある鉄の扉が下から上にゆっくり開き出した。
しばらくすると人が入って来る気配がした。
クルステ達は物陰に入って様子を伺う。
やがて何人目かに自分達と同年代に見える女性が入って来た。
「どうやら服装には大きな違和感がなさそうだな。
……オシンの服装は、真っ青のスーツにまっ黄色のスカーフ、……やはりこっちでも浮きそうだな。」
「ほっといて下さい!」
「オシン以外は問題なさそうだな。
皆行くぞ。」
自慢のコーデにケチをつけられて不満そうなオシンを最後尾に、クルステ達はオープン前の地下街を歩き出した。
ここの地下街は広く、オープン時間を過ぎて、昼の賑わいが一段落した頃、漸くクルステ達は元の場所に戻って来れた。
「クルステ様、凄い人混みでしたね。
あんなに沢山の人がこんな狭い通りを通るとは。」
「いやまさしく。しかしオシン、お前のその格好もたまには役に立つものだな。
お前の周りだけは皆に避けられていたから、動きやすかったぞ。」
「!! …………お腹空きましたね。」
怒りより食い気のオシンである。
そんなたわいもない会話に和んでいた時、突然大きな揺れに襲われる。
何事かと身構えていると、クルステ達は強い光に包まれていた。
光が薄まり辺りを見渡すとそこはマイロに破壊されたはずのクルステの居室で、ヒロシが微笑んでいたのだった。
クルステ達が魔方陣で避難してから1万年の時が経ったことを告げるヒロシ。
そして、この転移の犠牲になったであろうヒロシの元の世界の住人を無事に還すクルステ。
数刻の時が過ぎて、漸くひと心地ついたオシン達であった。
「さて、クルステさん達がこの世界に住むなら、マイロは一掃しとかないとね。」
ヒロシはそう言うと、マイロ討伐に向かった。
オシン達はこれからの生活の準備中。
森を開拓して畑を作ったり、クルステがどこからか持ってきた家畜の世話をしたり。
一年あまりの時間を費やしてマイロを一掃したヒロシとミーアが戻って来た頃には、何とか生活出来る環境になっていた。
「クルステさん、俺達はエレクトスに戻りたいと思います。」
マイロの最後の巣を潰したその日、ヒロシ達はクルステに帰りたいと告げる。
オシン達はふたりに残って欲しかったのだが、向こうでも待っている人達がいるからと言われると、それ以上は言えなかった。
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