100年生きられなきゃ異世界やり直し~俺の異世界生活はラノベみたいにはならないけど、それなりにスローライフを楽しんでいます~

まーくん

文字の大きさ
126 / 132
番外編

番外編 オシンさん 6

しおりを挟む
ムーン大陸で影の一大勢力を持つ地下組織「ムーラン」。

その構成員は1万人を超えると言われるが実際にどれだけいるのか、その頭目であるヒガーですら正確には分かっていない。

マイロを戦士とて、新たに発見された島を襲う計画はマイロの生みの親であるアエラが所属する国立研究所に潜入させている構成員から聞いていた。

ムーン大陸には今この国しかなく、神殿と議会が全ての力を握っている。

過去にはクルステという女神が実在し、国を主導していたと聞くが伝説でしかない。

ただ根強いクルステ信仰はこれ以上ムーランに付け入るスキを与えないのも事実であった。

ムーランの頭目になって6年。ヒガーもそろそろ実績を残さないと、今の地位を脅かされるかもしれないと少し焦っていた。

そんな時、新しい島の発見とマイロの戦士化の話しが舞い込んできたのだった。

新しい島を兵器となったマイロを使って制圧し、植民地化する。

まだどのくらいの広さかも分からないが、ムーランの本拠を移してムーン大陸制覇の拠点とするのも悪くないとヒガーは考えていた。

そんな時、突然議会にクルステが現れてマイロの兵器化にNOを唱えたのだった。

そして先日アエラが保護されてきた。

アエラはマイロの生みの親でもあり、兵器化の強硬推進派だった。

議会は大規模捜索を行い失踪したアエラを捕らえようとしたが、ここにいるからには捕まえられるはずは無かった。

アエラの研究はあと少しで完成するところまできていたのだ。

アエラが手に入ったのは俺にとって僥倖である。

もし頭目の座を狙うライバル達に渡っていたらと思うと.......

危ないところだった。


アエラを保護して半年後、殺戮兵器と化したマイロが完成したのだった。

マイロ同士を戦わせ、その戦闘力の高さを知ったヒガーは、この兵器を使ってライバル達を潰そうと考えた。

この兵器はもろ刃の刃だ。侵略の為に組織内に配ってしまうといつ俺に反旗を翻すヤツが出るかもしれない。

ならば、試験代わりにヤバそうなやつらを消しておくに限る。

ヒガーはまだ十分なテストも終えていないマイロの量産体制を秘密裏に急がせたのだ。

十分なテストなんかして時間をかけていたらライバル達に気付かれるじゃないか。

こうしてアエラの思惑から離れた殺戮兵器マイロは大陸中に散らばった地下組織の幹部達を殺害すべく散らばっていた。

「ヒガーめ、我がマイロを己の欲望に任せて好きにしよって。

まだ十分なテストも終わっておらんのに、暴走してもわしは知らんぞ。」

地下のその奥の監獄の中でアエラは呟くのだった。


はたしてアエラの予想は最悪の形で現実のものとなる。

大陸中に散らばったマイロはヒガーの思惑通り次々と幹部達を殺害していき、その本拠を次々と破壊していく。

途中、部下のひとりがマイロに強盗させるという事件があった。

議会に感づかれるのはまずいと思うヒガーは更なる増産をもくろみ、どんどん製造させていくが、やがてヒガーにも最後が訪れる。

ある日、ヒガーに裏切られた幹部のひとりが議会にマイロのことを密告したのだ。

密告により議会がヒガー達の居場所を突き止め、大規模な取り締まりが行われた。

ヒガーはそれをマイロで撃退しようとしたが逆に暴走したマイロに殺害されてしまった。

自動工場で次々生み出される殺戮兵器は止まることを知らない。

やがて地上に姿を現し、破壊のかぎりを尽くした。

クルステ達が気付いた時は時には都中でマイロが暴走し、同時期に大陸中でマイロが暴走してしまっていた。



実はその2週間前にクルステの元にひとりの少年が現れていた。

彼の名はヒロシ。姿を消した状態でオシンの後をつけてここまでたどり着いたおかしな少年だ。

彼は1万年後から来たという。そこには人は住んでおらず、奇妙な合成生物が争っているだけだったと告げるのだ。

彼の話しは兵器としてのマイロが齎した真実だろうと思ったクルステは、早々に今日が来るのを想定していた。

嫌がるヒロシを転移の魔方陣に無理やり乗せ10000年後に戻したクルステは、あらかじめ街中に用意していた魔方陣を一斉に稼働させ、マイロの殲滅を試みたのだった。

いくら魔方陣が効果を出したといえど、広範囲に拡がってしまったマイロを一気に殲滅できるわけでもなく、10日後にマイロの駆除が終わった頃には、都は一面瓦礫の惨状で、再建するために必要な民達すら消えてしまっていた。

「他の土地に行こうか。そこで再起しよう。」

オシンはクルステの寂しそうな言葉を聞いて頷く。

今の自分に出来ることは一生懸命クルステの力になることだけなのだ。

早速クルステの秘書達全員を集めて移住先を調べ始めた。

しかしながら、ムーン大陸各地に連絡を取ってみてもどこからも応答は無い。

既に大陸中が全滅に近い被害を被っていたのだ。

途方に暮れるオシン達に更なる悲劇が訪れる。

新たに生産されたマイロがこの神殿にも押し寄せてきたのだった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...