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番外編
番外編 オシンさん 5
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更に年月は過ぎて行く。
何人もの後輩を迎え、何人もの先輩が神に召されていった。
オシンはクルステ様の側近として最もお側に支えるようになっている。
「オシン、アリアのお見送りは滞りなく終わったのかい?」
「はい、一昨日に無事に召されました。120歳の大往生でした。」
「ご苦労様。たしかアリアはオシンの後輩だったね。」
「ええ、わたしの15年後でしたかしら。たしか10歳の可愛い少女でした。」
「そうか、しかしわたしの予感は当たりだっただろう。なあオシン。」
「そうですね。初めてクルステ様にお会いしたあの時、クルステ様は『わたしと似ているかも』とおっしゃいましたね。
まさか長寿のことだとは。」
「歳だけじゃ無い。その見掛けもな。」
「はあー、もうそろそろ137歳になるというのに、見た目は20歳過ぎですものね。」
「ふふふふ、わたしの気持ちが理解出来るのはオシンだけだからな。
わたしの慧眼と言うべきかな。」
「ええ、あのままこちらに召されませんでしたら、今頃どんなことになっていたことか。
本当にクルステ様のご慧眼でございました。」
そう、オシンは歳をほとんど取らないのだ。
それはクルステ程ではないにしろ、137歳になっても見た目が20歳過ぎでは目くそ鼻くそというものだ。
「ところでクルステ様、マイロの話しは聞かれましたか?」
「はて、マイロ?」
「ええ、未だお耳に届いてはありませんか。」
「最近ではわたしのことも神話として語られているようだから、新しく入った神子達は、わたしが実在することも知らぬらしいぞ。」
「どこでそんなお話しを?」
「どこにもおしゃべりはおるものじやな。自然と耳に入るということだ。」
「たしかにそうですね。
クルステ様が成人の儀に立たれなくなってから、結構な年月が経っております。
今では実際にお姿を見た者は僅かかと。」
「仕方あるまい。わたしがいつまでも姿を見せれば、議会の権威が上がらんからな。
引き際だったと思っておるよ。
だけどオシンが情報を持って来てくれるから、だいたいは把握しておるよ。
しかし、オシンは何歳になっても、若い子らと仲が良いのう。
羨ましい。」
「テヘッ」
オシンも本来なら神殿内において重鎮の立場になるはずなのだが、元々天然であり、どこか間延びしている性格は全然歳の差を感じさせないようで、入ったばかりの新人神子からも友達扱いされることも日常茶飯事であった。
そんなオシンだからこそ、一線を退いてクルステの秘書兼茶飲み友達をしている今でも情報通であるのだ。
「それでオシン、マイロがどうした?」
「そうそう、で、マイロとは最近開発されたヒューマノイドのことです。
虫や動物の遺伝子を組み換えて、それぞれの長所を取り入れている人工生物ですね。
主に耕作地や建築現場等人手の足りていないところで使われています。」
「人工生物か…、あまり好まんな。
それで?」
「はい、マイロの開発者、えーと何て名前でしたかしら、ちょっと度忘れしましたが、その博士がマイロの更なる改造を進めているようなのです。
主に戦闘員として。」
「戦闘員?
まさかそれは最近見つかった海の向こう相手か。」
「そのようなのです。
最近では増え過ぎた人口対策として、あちらの国を奪おうという機運が議会でも多数派らしく、後押ししているとの情報もあります。」
「それは危険なことだ。早速止めさせねば。
オシン、わたしは久しぶりに議会に出るぞ。引退したジジイ達も集めておくのだ。」
「分かりました。次の議会は3日後ですので、議事に押し込んどきます。」
「頼んだぞ。」
3日後の議会は大混乱であった。
クルステをよく知る老人達は今でも議会に対して莫大な影響力を持つ国の重鎮ばかり。
上座を仕切る彼らの前に現れたクルステ。重鎮達が頭を床に擦り付ける姿に戸惑う議員達も、やがて神話の女神クルステの存在に畏怖することになる。
「マイロの開発は一切凍結する!
また、全てのマイロは神殿の管理下とする!」
それだけ言うとクルステは姿を隠した。
ただそれだけのことであったが、それらは絶対的な決定事項として速やかに実行されたのだった。
1ヶ月後、神殿に隣接した倉庫が改装され、マイロに関するあらゆる資料と、開発者全員が集められたはずだった。
はずだった。そう、ただひとりの開発者を除いて。
そのひとりの名はアエラ。
マイロを初めて作り出し、今またマイロの兵器化の野望に取り付かれたマッドサイエンティスト。
マイロに関する通達が出されると同時に姿をくらましたアエラは、兵器としてのマイロでひと儲けを目論む地下組織に身を隠していた。
その後数ヶ月の必至の捜索もむなしく終わり、アエラは死亡したとして処理されたのだった。
何人もの後輩を迎え、何人もの先輩が神に召されていった。
オシンはクルステ様の側近として最もお側に支えるようになっている。
「オシン、アリアのお見送りは滞りなく終わったのかい?」
「はい、一昨日に無事に召されました。120歳の大往生でした。」
「ご苦労様。たしかアリアはオシンの後輩だったね。」
「ええ、わたしの15年後でしたかしら。たしか10歳の可愛い少女でした。」
「そうか、しかしわたしの予感は当たりだっただろう。なあオシン。」
「そうですね。初めてクルステ様にお会いしたあの時、クルステ様は『わたしと似ているかも』とおっしゃいましたね。
まさか長寿のことだとは。」
「歳だけじゃ無い。その見掛けもな。」
「はあー、もうそろそろ137歳になるというのに、見た目は20歳過ぎですものね。」
「ふふふふ、わたしの気持ちが理解出来るのはオシンだけだからな。
わたしの慧眼と言うべきかな。」
「ええ、あのままこちらに召されませんでしたら、今頃どんなことになっていたことか。
本当にクルステ様のご慧眼でございました。」
そう、オシンは歳をほとんど取らないのだ。
それはクルステ程ではないにしろ、137歳になっても見た目が20歳過ぎでは目くそ鼻くそというものだ。
「ところでクルステ様、マイロの話しは聞かれましたか?」
「はて、マイロ?」
「ええ、未だお耳に届いてはありませんか。」
「最近ではわたしのことも神話として語られているようだから、新しく入った神子達は、わたしが実在することも知らぬらしいぞ。」
「どこでそんなお話しを?」
「どこにもおしゃべりはおるものじやな。自然と耳に入るということだ。」
「たしかにそうですね。
クルステ様が成人の儀に立たれなくなってから、結構な年月が経っております。
今では実際にお姿を見た者は僅かかと。」
「仕方あるまい。わたしがいつまでも姿を見せれば、議会の権威が上がらんからな。
引き際だったと思っておるよ。
だけどオシンが情報を持って来てくれるから、だいたいは把握しておるよ。
しかし、オシンは何歳になっても、若い子らと仲が良いのう。
羨ましい。」
「テヘッ」
オシンも本来なら神殿内において重鎮の立場になるはずなのだが、元々天然であり、どこか間延びしている性格は全然歳の差を感じさせないようで、入ったばかりの新人神子からも友達扱いされることも日常茶飯事であった。
そんなオシンだからこそ、一線を退いてクルステの秘書兼茶飲み友達をしている今でも情報通であるのだ。
「それでオシン、マイロがどうした?」
「そうそう、で、マイロとは最近開発されたヒューマノイドのことです。
虫や動物の遺伝子を組み換えて、それぞれの長所を取り入れている人工生物ですね。
主に耕作地や建築現場等人手の足りていないところで使われています。」
「人工生物か…、あまり好まんな。
それで?」
「はい、マイロの開発者、えーと何て名前でしたかしら、ちょっと度忘れしましたが、その博士がマイロの更なる改造を進めているようなのです。
主に戦闘員として。」
「戦闘員?
まさかそれは最近見つかった海の向こう相手か。」
「そのようなのです。
最近では増え過ぎた人口対策として、あちらの国を奪おうという機運が議会でも多数派らしく、後押ししているとの情報もあります。」
「それは危険なことだ。早速止めさせねば。
オシン、わたしは久しぶりに議会に出るぞ。引退したジジイ達も集めておくのだ。」
「分かりました。次の議会は3日後ですので、議事に押し込んどきます。」
「頼んだぞ。」
3日後の議会は大混乱であった。
クルステをよく知る老人達は今でも議会に対して莫大な影響力を持つ国の重鎮ばかり。
上座を仕切る彼らの前に現れたクルステ。重鎮達が頭を床に擦り付ける姿に戸惑う議員達も、やがて神話の女神クルステの存在に畏怖することになる。
「マイロの開発は一切凍結する!
また、全てのマイロは神殿の管理下とする!」
それだけ言うとクルステは姿を隠した。
ただそれだけのことであったが、それらは絶対的な決定事項として速やかに実行されたのだった。
1ヶ月後、神殿に隣接した倉庫が改装され、マイロに関するあらゆる資料と、開発者全員が集められたはずだった。
はずだった。そう、ただひとりの開発者を除いて。
そのひとりの名はアエラ。
マイロを初めて作り出し、今またマイロの兵器化の野望に取り付かれたマッドサイエンティスト。
マイロに関する通達が出されると同時に姿をくらましたアエラは、兵器としてのマイロでひと儲けを目論む地下組織に身を隠していた。
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