100年生きられなきゃ異世界やり直し~俺の異世界生活はラノベみたいにはならないけど、それなりにスローライフを楽しんでいます~

まーくん

文字の大きさ
125 / 132
番外編

番外編 オシンさん 5

しおりを挟む
更に年月は過ぎて行く。

何人もの後輩を迎え、何人もの先輩が神に召されていった。

オシンはクルステ様の側近として最もお側に支えるようになっている。

「オシン、アリアのお見送りは滞りなく終わったのかい?」

「はい、一昨日に無事に召されました。120歳の大往生でした。」

「ご苦労様。たしかアリアはオシンの後輩だったね。」

「ええ、わたしの15年後でしたかしら。たしか10歳の可愛い少女でした。」

「そうか、しかしわたしの予感は当たりだっただろう。なあオシン。」

「そうですね。初めてクルステ様にお会いしたあの時、クルステ様は『わたしと似ているかも』とおっしゃいましたね。

まさか長寿のことだとは。」

「歳だけじゃ無い。その見掛けもな。」

「はあー、もうそろそろ137歳になるというのに、見た目は20歳過ぎですものね。」

「ふふふふ、わたしの気持ちが理解出来るのはオシンだけだからな。

わたしの慧眼と言うべきかな。」

「ええ、あのままこちらに召されませんでしたら、今頃どんなことになっていたことか。

本当にクルステ様のご慧眼でございました。」

そう、オシンは歳をほとんど取らないのだ。

それはクルステ程ではないにしろ、137歳になっても見た目が20歳過ぎでは目くそ鼻くそというものだ。


「ところでクルステ様、マイロの話しは聞かれましたか?」

「はて、マイロ?」

「ええ、未だお耳に届いてはありませんか。」

「最近ではわたしのことも神話として語られているようだから、新しく入った神子達は、わたしが実在することも知らぬらしいぞ。」

「どこでそんなお話しを?」

「どこにもおしゃべりはおるものじやな。自然と耳に入るということだ。」

「たしかにそうですね。

クルステ様が成人の儀に立たれなくなってから、結構な年月が経っております。
今では実際にお姿を見た者は僅かかと。」

「仕方あるまい。わたしがいつまでも姿を見せれば、議会の権威が上がらんからな。

引き際だったと思っておるよ。

だけどオシンが情報を持って来てくれるから、だいたいは把握しておるよ。

しかし、オシンは何歳になっても、若い子らと仲が良いのう。

羨ましい。」

「テヘッ」

オシンも本来なら神殿内において重鎮の立場になるはずなのだが、元々天然であり、どこか間延びしている性格は全然歳の差を感じさせないようで、入ったばかりの新人神子からも友達扱いされることも日常茶飯事であった。

そんなオシンだからこそ、一線を退いてクルステの秘書兼茶飲み友達をしている今でも情報通であるのだ。
「それでオシン、マイロがどうした?」

「そうそう、で、マイロとは最近開発されたヒューマノイドのことです。

虫や動物の遺伝子を組み換えて、それぞれの長所を取り入れている人工生物ですね。

主に耕作地や建築現場等人手の足りていないところで使われています。」

「人工生物か…、あまり好まんな。
それで?」
「はい、マイロの開発者、えーと何て名前でしたかしら、ちょっと度忘れしましたが、その博士がマイロの更なる改造を進めているようなのです。

主に戦闘員として。」

「戦闘員?

まさかそれは最近見つかった海の向こう相手か。」

「そのようなのです。
最近では増え過ぎた人口対策として、あちらの国を奪おうという機運が議会でも多数派らしく、後押ししているとの情報もあります。」

「それは危険なことだ。早速止めさせねば。

オシン、わたしは久しぶりに議会に出るぞ。引退したジジイ達も集めておくのだ。」

「分かりました。次の議会は3日後ですので、議事に押し込んどきます。」

「頼んだぞ。」

3日後の議会は大混乱であった。

クルステをよく知る老人達は今でも議会に対して莫大な影響力を持つ国の重鎮ばかり。

上座を仕切る彼らの前に現れたクルステ。重鎮達が頭を床に擦り付ける姿に戸惑う議員達も、やがて神話の女神クルステの存在に畏怖することになる。

「マイロの開発は一切凍結する!
また、全てのマイロは神殿の管理下とする!」

それだけ言うとクルステは姿を隠した。

ただそれだけのことであったが、それらは絶対的な決定事項として速やかに実行されたのだった。

1ヶ月後、神殿に隣接した倉庫が改装され、マイロに関するあらゆる資料と、開発者全員が集められたはずだった。

はずだった。そう、ただひとりの開発者を除いて。

そのひとりの名はアエラ。

マイロを初めて作り出し、今またマイロの兵器化の野望に取り付かれたマッドサイエンティスト。

マイロに関する通達が出されると同時に姿をくらましたアエラは、兵器としてのマイロでひと儲けを目論む地下組織に身を隠していた。

その後数ヶ月の必至の捜索もむなしく終わり、アエラは死亡したとして処理されたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...