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番外編
番外編 オシンさん 4
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「オシンさん、クルステ様がお会いになられるそうです。
あなただけ、こちらに。」
驚くオシンの父母。
ひとりで向かわせる娘のことが気掛かりであるが、それよりもクルステ様がお会いになられることの方が驚きである。
オシンはといえば、いつも通りののほほん加減。
お母さん達はひどく恐縮しているみたいだけど、本人は昨日の綺麗なお姉さんに会いに行くだけの気持ち。
「じゃあ、行ってきま~す。」
と、神子様に連れられて奥へと行ってしまった。
唖然とする父母は、どうすることも出来ないし、神聖なこの場所に居るのも躊躇われ、娘の心配をしながらも帰路に着くしかなかった。
オシンは神子様に手を引かれ、建物の奥、エレベータ前に来ていた。
もちろんこの世界のどこにもエレベータなんてものは無い。
どこからか持ち込まれたこの異様の技術はここだけのものなのだ。
ガラス張りのようなキラキラしたその空間は神話に出てくる神の国のようで、オシンのワクワクは止まらない。
しかし、いくら天然のオシンでも、神聖な雰囲気をビンビンにさせている神子様に気軽に声を掛けることも出来ず、黙ったままでいた。
やがてエレベータの扉が開き、神子様に手を引かれて乗り込む。
「ふわあ~!」
初めて乗ったエレベータの浮揚感に少し気分が悪くなるが我慢していると、ほんの数十秒で止まった。
ドアが開くとそこは全くの異世界であった。
いやオシンが知らないだけかもしれない。
だってオシンが知っている世界はあまりにも小さいから。
しかしオシンの感想はあながち間違ってはいない。
中世ヨーロッパを思わせるこの世界において、現代の無機質なオフィスビルにも似たその内装はあまりにも違和感があるのだ。
神子様に手を引かれたオシンはエレベータを降りてピータイルに似た素材の廊下を歩く。
やがて重厚感のある扉の前で立ち止まると、神子様が扉に向かって声を掛けた。
「クルステ様、オシンを連れて参りました。」
「有り難うセシル。中に入りなさいな。」
部屋の中少し遠いところで声が聞こえた筈なのに突然開く自動ドアに驚くオシン。
思わず中に飛び込み扉を確認するも、誰も居なかった。
「ふふふふ、やはりその反応だね。
オシンちゃんいらっしゃい。
昨日の今日で少し驚いたけど、問題ないわ。
もっとこっちにおいで。」
神子様に背中を押され、クルステの元に歩き出すオシン。
彼女のあまりにも長い人生はこの瞬間に始まったのだ。
ちなみにこの神殿の起源は誰も知らない。
この国にクルステが来る前からあったとされるが現在を姿ではなかっただろう。
ただ、クルステが神の力を使って今の形にしたのだと言うのが定説になっているのだ。
この神殿に入った者は2度と外に出られない。
神の神子様として生涯を捧げ、そして神に召されるのだ。
オシンの父母もオシンが神殿に召されたことの意味を理解していた。
神子様に選ばれることはこの国では最上級の栄誉なのである。
十数年に1度、新しい神子様の選定が行われる。
選定基準は誰にもわからない。
議員の子供に片寄ることも無ければ、庶民の出も多い。
貧民から選ばれることも少なくないのだ。
ただ選ばれたからといってその家に金品や栄誉が得られるわけではない。
噂では、何らかの吉事がその家に舞い込むといわれているのだが。
例えば、悪徳商人に苦しめられていた家族には悪徳商人ヘの鉄槌だとか、重い病に苦しむ家族にはその病の快癒だとか。
ちなみにオシンの実家であるギズモ工房にはこの3ヶ月後に既に諦めていた待望の跡継ぎが生まれたのだった。
オシンは神殿に住むようになってからから、高等教育を受けさせてもらった。
学舎に通うのではなく、神子様の中にいる元先生にマンツーマンで習うのだ。
決して勉強が好きじゃないけど、頑張ったら皆んなが褒めてくれたから楽しく学ぶことが出来た。
本来なら3年かかるはずのところも半分で終了となる。
それからは神子様見習いとしての生活が始まった。
掃除や洗濯、議会との文書のやり取り等、工房の手伝いとそう違うものでもなかったから、難しいことではなかった。
お父さんやお母さん、工房の皆んなのことを思い出すとちょっとオセンチになるけど、毎日が楽しくって頑張れるオシンであった。
オシンが神殿に来てから何年かの月日が経ち、オシンも神子様になることが出来た。
たまに外に出ることもあり、ある日議会堂からの帰り道、オシンは懐かしい工房の前を通りかかる。
店先には5歳くらいの男の子がいて、お母さんに文字を習っていた。
「あ!」とオシンは気付いた。
弟が出来たんだ。
オシンは自分が居なくなった後、工房の跡継ぎだけが心配だったのだ。
弟が出来たんだったら、もう大丈夫だね。
オシンは声をかけようか迷ったが、神子様の影響力がとんでもない事を知った今では、そんな迂闊な行動をとれるわけもなく、小さく「元気でね。」と呟いて神殿に戻ったのだった。
あなただけ、こちらに。」
驚くオシンの父母。
ひとりで向かわせる娘のことが気掛かりであるが、それよりもクルステ様がお会いになられることの方が驚きである。
オシンはといえば、いつも通りののほほん加減。
お母さん達はひどく恐縮しているみたいだけど、本人は昨日の綺麗なお姉さんに会いに行くだけの気持ち。
「じゃあ、行ってきま~す。」
と、神子様に連れられて奥へと行ってしまった。
唖然とする父母は、どうすることも出来ないし、神聖なこの場所に居るのも躊躇われ、娘の心配をしながらも帰路に着くしかなかった。
オシンは神子様に手を引かれ、建物の奥、エレベータ前に来ていた。
もちろんこの世界のどこにもエレベータなんてものは無い。
どこからか持ち込まれたこの異様の技術はここだけのものなのだ。
ガラス張りのようなキラキラしたその空間は神話に出てくる神の国のようで、オシンのワクワクは止まらない。
しかし、いくら天然のオシンでも、神聖な雰囲気をビンビンにさせている神子様に気軽に声を掛けることも出来ず、黙ったままでいた。
やがてエレベータの扉が開き、神子様に手を引かれて乗り込む。
「ふわあ~!」
初めて乗ったエレベータの浮揚感に少し気分が悪くなるが我慢していると、ほんの数十秒で止まった。
ドアが開くとそこは全くの異世界であった。
いやオシンが知らないだけかもしれない。
だってオシンが知っている世界はあまりにも小さいから。
しかしオシンの感想はあながち間違ってはいない。
中世ヨーロッパを思わせるこの世界において、現代の無機質なオフィスビルにも似たその内装はあまりにも違和感があるのだ。
神子様に手を引かれたオシンはエレベータを降りてピータイルに似た素材の廊下を歩く。
やがて重厚感のある扉の前で立ち止まると、神子様が扉に向かって声を掛けた。
「クルステ様、オシンを連れて参りました。」
「有り難うセシル。中に入りなさいな。」
部屋の中少し遠いところで声が聞こえた筈なのに突然開く自動ドアに驚くオシン。
思わず中に飛び込み扉を確認するも、誰も居なかった。
「ふふふふ、やはりその反応だね。
オシンちゃんいらっしゃい。
昨日の今日で少し驚いたけど、問題ないわ。
もっとこっちにおいで。」
神子様に背中を押され、クルステの元に歩き出すオシン。
彼女のあまりにも長い人生はこの瞬間に始まったのだ。
ちなみにこの神殿の起源は誰も知らない。
この国にクルステが来る前からあったとされるが現在を姿ではなかっただろう。
ただ、クルステが神の力を使って今の形にしたのだと言うのが定説になっているのだ。
この神殿に入った者は2度と外に出られない。
神の神子様として生涯を捧げ、そして神に召されるのだ。
オシンの父母もオシンが神殿に召されたことの意味を理解していた。
神子様に選ばれることはこの国では最上級の栄誉なのである。
十数年に1度、新しい神子様の選定が行われる。
選定基準は誰にもわからない。
議員の子供に片寄ることも無ければ、庶民の出も多い。
貧民から選ばれることも少なくないのだ。
ただ選ばれたからといってその家に金品や栄誉が得られるわけではない。
噂では、何らかの吉事がその家に舞い込むといわれているのだが。
例えば、悪徳商人に苦しめられていた家族には悪徳商人ヘの鉄槌だとか、重い病に苦しむ家族にはその病の快癒だとか。
ちなみにオシンの実家であるギズモ工房にはこの3ヶ月後に既に諦めていた待望の跡継ぎが生まれたのだった。
オシンは神殿に住むようになってからから、高等教育を受けさせてもらった。
学舎に通うのではなく、神子様の中にいる元先生にマンツーマンで習うのだ。
決して勉強が好きじゃないけど、頑張ったら皆んなが褒めてくれたから楽しく学ぶことが出来た。
本来なら3年かかるはずのところも半分で終了となる。
それからは神子様見習いとしての生活が始まった。
掃除や洗濯、議会との文書のやり取り等、工房の手伝いとそう違うものでもなかったから、難しいことではなかった。
お父さんやお母さん、工房の皆んなのことを思い出すとちょっとオセンチになるけど、毎日が楽しくって頑張れるオシンであった。
オシンが神殿に来てから何年かの月日が経ち、オシンも神子様になることが出来た。
たまに外に出ることもあり、ある日議会堂からの帰り道、オシンは懐かしい工房の前を通りかかる。
店先には5歳くらいの男の子がいて、お母さんに文字を習っていた。
「あ!」とオシンは気付いた。
弟が出来たんだ。
オシンは自分が居なくなった後、工房の跡継ぎだけが心配だったのだ。
弟が出来たんだったら、もう大丈夫だね。
オシンは声をかけようか迷ったが、神子様の影響力がとんでもない事を知った今では、そんな迂闊な行動をとれるわけもなく、小さく「元気でね。」と呟いて神殿に戻ったのだった。
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