100年生きられなきゃ異世界やり直し~俺の異世界生活はラノベみたいにはならないけど、それなりにスローライフを楽しんでいます~

まーくん

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番外編

番外編 デニス王の回想

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ヒロシ殿と最初に会ったのは、たしか王城の謁見の間だったな。

ニルス公爵家に遊びに行っていた娘のイリヤがその帰り道にシルバーウルフの群れに遭遇し、あわやという時に助けたというのがヒロシ殿であった。

あの時護衛に付けていた王家騎士団の半数以上を失うほどの被害であったと聞き及ぶ。

イリヤが生き残ったのも、今になって思えば神の思し召しだったに違いない。

数日後イリヤが街中で彼を探し出したと聞いた時は、半信半疑であったが、謁見の間であの光景を見た時に今の運命は決まっていたのかもしれない。

彼は無欲であった。というよりも権力よりも自由を選びたかったのだろうか。

彼にはそれを選択するだけの力があったし、知恵も十分だった。

彼を力で拘束することは出来ないだろうと直感した。同時にどうしても彼を手に入れたいとも思った。

妃もそう思ってようだ。父王が愛したあの屋敷を与えたのだから。

私欲も見えず、何を求めるでもない彼は様々な奇跡を起こして見せた。

古代帝国時代の金貨を大量に見つけたにも関わらず王家に全額寄付したり、王城のみにしか存在するはずの無い湯を出してみたりと。

彼にアルマニ領を任せたのも、彼ならあの時の硬直した状況を何とかしてくれるだろうと思ったからだ。

彼に託したアルマニ領は繁栄し、その影響は大陸全土に及んだ。

途中行方不明になった3年程は結果としてイリヤとアルマニ領全体、いやエレクトス王国を骨太にしてくれた。

もしあの期間が無ければ、この新天地で新たに国造りなど成しえなかったに違いない。

そして彼が戻ってきてから、世界は神の怒りと共に大きなうねりに飲み込まれていった。

それは決して人間の及ぶものではなく、全てに破滅を齎すものとなった。

だが、ヒロシ殿はそれを許さなかった。

神に逆らい、荒れ狂う神から我々を守るために自らを犠牲にして、この新天地である伝説のムーン大陸へ送ったのだ。


この世界を取り仕切るのはクルステという女性。魔人の血を引くとも言われる彼女は数千年の時を生きこの世界を守ってきたという。

彼女はわたし達に新しく生きるための土地を提供してくれた。

それ以外にも、その優れた魔法の力を使って転移した全ての民が生きていくために必要な環境を用意してくれたのだ。

おかげで今の我々があると言っても過言ではあるまい。

そしてそれは彼女がヒロシ殿と約束していたことでもあったのだ。

神の意志をも欺き、ヒロシ殿は我々救ってくれたのだった。

その彼は今いないが、イリヤとミーアが帰ってくると信じているのだから必ず帰ってくるのであろう。

その時にわたしが生きていることは無いかもしれないが、彼の意思を引き継ぎしっかりとした国の礎を作ることが、今のわたしにやるべきことなのであろうな。




この世界は神殿を中心とした『中の世界』と我々の住む『外の世界』に分かれている。

そのことを知ったのはここに転移してきてから数日後のことであった。

神殿で2日過ごして城に戻るとそこは雪景色であった。

神殿では真夏の日差しがまぶしかったはずだった。

それから6ヶ月後、真夏に神殿に向かうとそこはまだ夏の真っ最中であった。

季節が違うことには気が付いていた。

ただ、時間の進み方が違うことは、久しぶりに話したイリヤとの会話で気が付いたことだ。

時間の流れるスピードが違うのだ。その差は80倍。

『中の世界』で1日が『外の世界』では2カ月以上になるのだ。

元々『中の世界』と『外の世界』は見えない結界により分かれており、自由に行き来することができない。

だから『外の世界』に住む者達は『中の世界』を知らない。

知らない方が幸せなのかもしれない。

魔国を含めた4カ国の首脳が集まり、これからの在り方について考えた時、『中の世界』を中央政府として進むべき道を示してもらうことにした。

中央政府には各国より主要人物を配置することになった。

あっちは時間の進み方が1/80なのであるから、我等の80倍の時間を生きることになる。

これから何年も掛かって国が造られていくだろう。

わたしが生きている間にどれだけの成果を出すことが出来るのだろう。

きっと何代も後にならないと形にならないものも多いだろう。

そして何代も続くうちに、その思想は変化し、途絶えるに違いない。

でも、『中の世界』に残る彼らは別だ。

『外の世界』の何十倍も生きる彼らであれば、『外の世界』を正しく導き続けるに違いないだろう。

イリヤとミーアは『中の世界』でヒロシ殿を待つと言った。

いつ戻るのか分からない。でも彼女達は信じている。

もしヒロシ君がここに戻ってくることがあれば、いや戻ってきた時、彼はまたわたし達の想像をはるかに超えた世界にしてくれるに違いない。

その時までに、彼に幻滅されないような国造りをしておく必要があるな。


    デニス王の回想編 完


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エレクトス王国のデニス王視線での回想です。

番外編は非定期更新で続けていくつもりです。

本編で書ききれなかったところや、補足したかったところを中心に番外編にしていくつもりです。

もしリクエストがあればお答えしたいと思いますので感想にお書き頂ければ幸いです。

宜しくお願いします。
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