最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

まーくん

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第1章 キンコー王国は行政改革で大忙し

20【岩塩とペッパー】

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<<リズ視点>>
ハーバラ村からナーラ街に戻ってきた。

わたしの護衛と中間報告を兼ねた、マサルさんも一緒だ。

最初は、馬車と護衛数人なんて用意されたが、「作業の手を止めて欲しくないから。」って頼んで断った。

みんなは、わたしが気を遣ってくれてると思っているみたいだけど、それは勘違い。

やっぱりマサルさんと2人旅が良いじゃない。

一応わたしは馬に乗ったけど、マサルさんは走るみたい。

先に1人で帰るからその時にわたしの馬に乗って帰るって。

まぁ、マサルさんは馬よりも速いし体力もあるから、ある意味正解かも。

でも村の人達は、その事を知らないから、数少ない村の馬の事を考えてくれたって思ってる。

まぁ勘違いしておいて貰おう。


ゆっくり2人旅って想像してたけどね、実際にはあり得ないスピードで走ってる。

行きは、まる3日掛かったのに、早朝に出て、その日の夕方にはついちゃった。

もうちょっとゆっくりで良かったのに。残念。

途中の街道では、道行く人々が驚いていた。

ヘンリー様のお屋敷に着くと、ユーリ様やセバスチャンさん、マーガレット、キャサリンが、玄関ホールで出迎えてくれた。

「マサル様、リズちゃん、お帰りなさい。

早かったわね。

リズちゃん、疲れたでしょう?

お風呂の準備ができているから、入っておいで。」

ユーリ様がそう言ってくれたので、マーガレットと浴室に向かった。

ずっと馬で走りっぱなしだったので埃塗れだから、有り難かった。



<<マサル視点>>
「マサル様、大変お疲れのところ申し訳ありませんが、今の状況を教えて頂けないかしら。」

「マサル様、ユーリスタ様は、何度も  『ハーバラ村に行ってわたしも手伝う。  』と仰って旦那様を困らせておいででしたよ。」

「もう、セバスチャン、余計なことは言わないでね!」

と漫才のような会話が続いた。

俺はユーリスタ様の要望に応えて、セバスチャンと彼女の執務室に入っていった。

部屋に入って、俺はまとめていた厚い報告書の中から、更にそれをまとめた要約レポートをユーリスタ様に渡した。

ユーリスタ様は、そのレポートを真剣な眼差しでジッと見ていたがやがて顔を上げ、俺にニッコリと笑顔を見せた。

「マサル様、このレポートすごいですわ!

まとめ方もそうですが、これが本当であれば、村人が中心のプロジェクトでは、あり得ない成果です。

あっごめんなさい。

嘘だとは全く思っていませんよ。

ただ、本当にすごい成果ですね。」

ユーリスタ様の手からレポートを渡されたセバスチャンは、手早く内容を確認し、感嘆の声を上げた。

「なるほど、素晴らしい内容です。

これを読むと奥様ではないですが、わたしも今すぐにハーバラ村に行きたくなりました。」

「そうでしょう!
わたしもすぐに行きたいのですが、リズちゃんの入学がありますから、動けないのが残念です。

今、ハーバラ村では、現在進行形で農業の新しい歴史が作られているのにそれに立ち会えないなんて………」

ちょっとオーバーな!  と思ったが、彼女からしてみたら幼少からの夢が現実に動き出したのだから、しょうがないだろう。

次の日、クラーク様、ヘンリー様を交えて正式に報告を行った。

ユーリスタ様同様、成果を喜んでくれた。

特にジョージ騎士についての報告は、ヘンリー様を殊更喜ばせた。

その晩は、お城の晩餐会に招かれたが、事前に料理長にハーバラ村で作った各種調味料を渡して、使い方を説明しておいた。

その日の晩餐会は、大盛況だった事は言うまでもない。



<<キンコー王国宰相婦人視点>>
わたしは、学生時代からの友人であるユーリスタのところに所用で立ち寄りました。

ユーリスタとは、アカデミーの同じゼミで語り合った仲です。

わたしと彼女は共に『誰もが住みやすい国づくり』という共通の課題に対して日々議論を交わしながら勉学に励んでいました。

もちろん遊ぶ時も常に一緒で、わたしの唯一無二の親友と呼べる存在です。

彼女は才能に溢れていて、女というだけでその才能を埋もれさせてしまうのは余りに惜しかったのですが、あの当時ではしょうがないと諦めざるをなかったところです。

昨日の夜遅くに久しぶりにユーリを尋ねたら、とっても喜んでくれました。

客室に案内されたわたしは、ユーリと旧交を温める間も無く、数枚の紙を渡されました。

「久しぶりに会ったのに、ごめんなさい。

でも、これを読んでみて。」

あの冷静なユーリが、ひどく興奮しています。

わたしは、そのレポートを読み始めました。

これは!!

ユーリを見ると、

「まさに今、ウチの領内にある寒村で起こっている改革の報告書よ。」

と言い、『早く先を読め!  』と促されました。

わたしも少し興奮して読み出したが、読み進むほどに我を忘れてしまっていました。

「ユーリ、一体何があったの。」

ユーリは、マサルと言う異国の青年が、改革を進めてくれていると言いました。

俄かに信じられる話ではないが、ユーリが嘘をつくわけが無いのは、わたしが一番知っています。

ユーリの長年の夢が当時のそれよりもより具体的に実現しつつあることに、わたしは神様に感謝したのでした。

翌日、ナーラ領での仕事が終わり、わたしは城で開かれる晩餐会に招かれました。

本日の晩餐会には、昨夜ユーリが話していた異国の青年も参加するらしいので興味深々です。

テーブルに着きしばらくすると、それらしき青年が入ってきました。

確かにこの大陸の住人ではなさそうです。

どちらかというと西方の大陸に住む人々に似ているかもしれないと思います。

「マサルと申します。

本日はお招きいただきありがとうございます。」

入ってきて、テーブルまでエスコートされ、席に着くまでの所作は、この国のそれとは少し異なりますが、なかなかのものであり、育ちの良さを伺えます。

全員が揃い領主様の挨拶が終わると料理が並べられてきました。

まずスープをひとすくいし口に運びます。

深みのあるコク、これは塩の味です。

でも少し深みが濃いような気がしますがしょっぱさはそれ程感じません。

その後にくるピリッとした感じ、スープにアクセントが付き旨みが凝縮されたような味にまとまっています。

ナーラ王国の貴族社会における食事の作法は、最後の二口ほど残すのが基本です。

これは、初代国王の建国時に遡りますが、まだ食べ物が豊富でない時代に食事で少しでも家臣をねぎらおうしようとする主君に対し家臣が、
『食べ切れないほど、もう充分頂きました。』
という謝辞を込めて2口残した。 

という故事に倣ったものです。

わたしは、スープを夢中になって口に運んでいる内に、全てを飲んでしまいました。

しまった! と心の中で叫んでみたがもう遅いです。

器は空っぽになっています。

顔を上げ、周りを見渡すと皆わたしのように周りを見ており、やはり器は空っぽになっています。

領主のクラーク様が、笑い声を上げながら料理長を呼ばれました。

「料理長、今日のスープはいつもと少し異なるようだが、皆に大人気のようだ。

少し器が小さかったのじゃないかな。」

「それは大変失礼致しました。

実はスープの作り方自体はいつもと同じなのですが、本日の料理にはマサル様から頂きました岩塩とペッパーなる香辛料を使用しております。」

「マサル殿、その岩塩とペッパーなるものについて教えてくれまいか?」

クラーク様の質問にマサル様が答えられます。

「はい、まず岩塩ですが、ハーバラ村近くの森で採れた物をお持ちしました。

岩塩とは海の塩分が長い期間をかけて大きな岩のように結晶化された物です。

海から精製される塩よりも栄養が豊富で旨みが強いのが特長です。

ペッパーは、わたしの国では香辛料の基本として使用されているものです。

こちらも岩塩と同じ森で採取し、加工したものです。

お気付きかと思いますか、ピリッとした刺激がアクセントとなります。また特に肉料理ではより効果がでますのでご期待下さい。

岩塩もペッパーも、ハーバラ村で採取・加工し、出荷できるように進めています。」

「うむ、これは確かに食生活の革命になるやも知れん。

ナーラ領は海に面しておらんゆえ、塩は他領からの輸入に頼っておる。もし自領内で産出できるとなれば、これは我が領において非常に利益となるものだ。

また、ペッパーに関しては、肉の臭みをこれ程解消してくれるのであれば、これまで臭くて食えなかったオドラビットの肉等も食せるようになるやも知れん。

そうなれば、我が国の食料事情は大幅に改善されるであろう。

これは、国家機密事項として早速取り扱う必要がある。

マサル殿、もちろん村人には秘匿事項となっておろうな。」

「当然です。

採掘場所の周りに結界を張り巡らしており、村以外からの出入りについては私が監視しています。

先程も会議で説明しました通り、村内での機密事項についてはフレディ村長にきちんと管理してもらっています。」

なるほど、ユーリがあれほど興奮するわけがわかったような気がします。

その後出された料理は、全て素晴らしく大満足のうちに晩餐会は終了したのです。

しかし、海ではなく山の中で塩が採れるとは驚きです。

また、ペッパーなるものは、マサル殿がおっしゃるように肉料理の臭みを取りその刺激と共に肉の味を何倍にも美味しくしてくれました。

これは、食生活を一変させるものになるに違いありません。

翌日、王都に帰るわたしの手に、岩塩とペッパーがあったことは言うまでもありません。
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