最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

まーくん

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第11章 ランスの恋

1 【春が来た】

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<<イリヤ視点>>
今年も春がやって来ました。

ここマサル共和国は、冬になっても比較的温暖な気候で、あまり雪は降りません。

それでも、温かな風を運んできてくれる春は大好きです。

昨年は建国やら、国作りやらで大騒ぎだったので、あまり季節を感じることがなかったので、今年がこの国で感じる初めての春になります。

もちろん、桜の木も持って来ましたよ。

少し前から、蕾がほころび昨日辺りから花を咲かせています。

お父様も嬉しそうにお酒を持ち出して、桜を楽しんでいます。

「お父様、上機嫌ですね。」 

「イリヤか。やっぱり桜は良いものだな。

また、王達やクラーク様、お義父様達を呼んであげないといけないなぁ。」

「あら、マサルさん、もう来てらしたのね。

あの方達は、もうお声掛けしていますよ。

そろそろ来られるんじゃないですか。」

お父様の呟きに呼応するかのように、ユーリスタさんが大きな荷物を持ってやって来ました。

どうやら本格的に花見をする気のようです。

「マサルさん、この庁舎の中庭の桜は既に満開ね。

昨日までは未だ蕾も多かったのにね。」

「昨日の夜にマリス様が現れて、咲かせて行ったんですよ。

少しでも早く、花見がしたかったみたいで。

この桜達もマリス様の加護をもらっていましたから、長期間花を咲かせていると思いますよ。」

「まぁマリス様が!
粋な計らいをされるわね。
長い期間花見が出来るのは嬉しいわね。」

キンコー王国の行政改革大臣を引退して、完全にこの国に移住して来たユーリスタさんもとっても嬉しそうです。

「マサル殿、早速始められておりますな。

我々も加えて頂けますかな。」

「これはネクター様、ガード様、レイン様、クラーク様、ヘンリー様、よくお越し下さいました。歓迎致します。」

お父様が手を振ると、桜の木が移動して、皆んなで花見をするには充分な場所が出来ました。

「全くマサル殿の魔法は相変わらずだな。

ところで、ここの桜は他のところよりも開花が早いようだな。」

「あなた、ここの桜はマリス様の加護を頂いているそうよ。」

旦那様であるヘンリーお爺様に久しぶりに会ったユーリスタさんも楽しそう。

大陸の3大国の元首とそれぞれの宰相、外務大臣、その家族等たくさんの人達で、花見会場は大賑わいです。

お母様やスポックさん、ヤングさん、その他閣僚の方達も庁舎から集まってきて、いろんなところで挨拶が交わされています。

もちろん、マクベスさん達は庁舎を囲むように厳重な警備をしておられます。

「いやあ、マサル殿、こんなに大人数で突然押し掛けて済まぬな。

お忍びで5人だけで来ようとしたら見つかってしまってな。

これでも参加者はだいぶ絞ったのだがな。」

ネクターおじ様が申し訳無さそうにおっしゃっています。

「いえ、わたしもそろそろお呼びしようと思っていましたから。

この桜達は、マリス様の加護を受けていましたから、しばらくは咲いていると思います。

今回来られなかった方々もお越し頂けたらと思います。

出来れば、警備の都合もあるので、お誘い合わせの上、スポックさんに一声掛けてから来て頂ければ助かります。」

「マサル殿ありがとう。我が国でも皆んな来たがって困っていたのですよ。」

レインおじ様が嬉しそうに話してる。

女性陣はと言うと、各国の王妃様とユーリスタさん、お母様が中心となってお茶会ね。

いつの間にかお兄ちゃんも戻って来ていて、おじ様達にからかわれているわ。

わたしもお母様達のお茶会に入れて頂きますね。



<<ランス視点>>
新しい街の整備作業から戻って来たら庁舎の中庭で花見をしていた。

「お父様、わたしも混じってよろしいでしょうか?」

おじ様達もいるし、各国の重鎮もたくさんいるので、丁寧な言葉使いをしておく。

「おお、ランス君じゃないか。
しばらく見ないうちにまた大きくなったな。

やけに他人行儀に話すじゃないか。

おじさんは悲しいぞ。」

レインおじ様がふざけて言うんだ。

「いえ、各国の重鎮ばかりなので、この方がいいかと思いまして。」

「気にする必要など無いわ。
のおネクター。」

「そうだぞ、ランス君。皆んな君らの事は子供のように思っているからな。」

ガードおじ様とネクターおじ様にまでそう言われると、普通の話し方に戻さないとって思っちゃう。

お父様も笑顔で頷いてくれているので、話し方を戻す。

「おじ様達、ご無沙汰してます。

僕もご一緒させて頂きますね。」





「ところでマサル殿、ダンジョンが見つかったとか。」

「ええ、早速冒険者ギルドを開設してもらい、探索して頂きました。

ギルド長曰く、S級相当だとか。」

「その噂は聞いておる。

実は先日、我が国にA級の魔物が現れてな、その退治に冒険者達を駆り出したのだが、この国に要請して来てもらった冒険者のレベルが異常にたかくてな。

指揮をしとったギルド長が絶賛しておったわ。」

「ありがとうございます。
ダンジョン攻略でかなり訓練を積んでいましたから、実力はかなり上がっていたと思います。」

「うむ、あちこちの冒険者ギルドから、訓練参加の申し込みが殺到するかもしれんから、事前にギルド長に伝えて置いて欲しい。」

「承知しました。」

「ランス君も活躍したらしいね。

その冒険者がランス君のことを大褒めしてたらしいよ。」

話すヘンリーお爺様の顔が桜の花のように赤くなって綻んでいた。

少し恥ずかしくなって、辺りに目が泳いでいると、一際大きい桜の木に寄り添うように、ひとりの女の子が佇んでいるのが見えた。

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