みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第3部 恋するウサギはくじけないっ!

第17話 王様げぇむ ~猥褻王政、樹立おめでとうございます~編

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 我が友、猿野元気とその哀れな被害者、司馬葵ちゃんとのデートを尾行して3日経った、ある日の放課後にて。

 俺、大神士狼と数人の男女は――



「第1回っ!『王様は誰だっ? 俺か!?』わくわく♪ 王様げぇぇぇぇぇぇぇ――むッ!」

「「「「「イエェェェェ――ッ!」」」」」




 ――カラオケ屋の1室にて、猥褻王政の樹立を目指し、失われた闇のゲームの名を口にしていた。




「……なぁ相棒、これは何や?」


 会場のボルテージと反比例するように、俺の目の前に座っていた元気が、死んだ魚のような目で問うてくる。

 それをヤツの右隣に陣取っていたうさみんが、とぼけたような口調で遮った。



「なんじゃ猿野、王様ゲームを知らんのか?」

「いや、もちろん王様ゲームは知っとるで? そうやなくて、ワイが聞いとんのは、この茶番はなんや? ってことや」



 そう言って珍しくジロリッ! と俺を睨みつけてくる我が親友。



「お、おい、やめろよ元気? そんな情熱的な目で俺を見るなよ……孕みそうだ」

「ワイは久しぶりに相棒が男同士でカラオケに行きたい言うから、ハニーに断りを入れて、渋々しぶしぶついて来たいうのに……なんやこの集まりは? 合コンかっ!? ワイは帰るでっ!」

「まぁまぁ、落ち着けよ猿野ぉ~っ」



 ガシッ! と席を立とうとする我が親友の肩を、乱暴に抱き寄せるアマゾン。

 途端にうさみんの視線が鋭くなり、元気の身体越しからアマゾンを睨みつける。

 ……が、もちろんあのバカは気づかない。



「別にこれは合コンとかじゃなくて、普通にみんなで遊ぼうぜ! ってだけの話なんだからさぁ。そんなカッカすんなよ? なっ、大神?」

「アマゾンの言う通りだ。気にし過ぎなんだよ、おまえは。それに今日は俺に付き合ってくれるって言ってくれたじゃねぇか。あの言葉は嘘だったのかぁ? んん~?」

「んぐっ!? そ、それは……」



 元気は苦しげな声を上げながら、むぐぐぐっ!? と眉根を寄せた。

 う~む。この様子からして、もうひと押しと言ったところか。


「司馬ちゃんのコトを気にしてんなら、ソレこそ心配無用だわ。よく見ろ、この場を。見知った顔しか居ないだろうが」


 俺がグルリと辺りを見渡せば、釣られて元気の視線も周りのメンツへと移ろいでいった。

 元気の両隣で我らがロリ巨乳うさみんと、残念な友人その2ことアマゾンが脇を固め、そんな奴の目の前にテーブルを挟んで俺が座っている。

 そしてそんな俺の両隣を、芽衣とよこたんが我が物顔で占拠しながら、申し訳なさそうに元気に声をかけた。



「ごめんなさい、猿野くん。たまには皆さんでパァーと遊びたかったんですが……迷惑だったでしょうか?」

「ど、どうしても嫌なら、ムリせず帰ってくれてもいいからね?」

「なっ? この場には倦怠期の人妻よろしく、簡単に股を開く女なんか居ないんだよ」

「古羊はん、妹はん、相棒カスぅ……」



 芽衣とよこたんの言葉を受け止めた元気は、「ハァ……」と小さく頭を振りながら、しょうがないと言わんばかりに苦笑を浮かべてみせた。

 どうでもいいけど、俺の扱い酷くない?


「まぁ、たまにはええか。ほなっ、みんなで遊ぼか?」


 自動ドアよろしく、簡単に股を開く女には、心を開かない元気のドアが、ちょっとだけ開いた。

 キタッ!

 バカが罠にかかったぞっ!

 瞬間、俺は間髪入れずに、その心のドアの隙間に指先を突っ込んで、無理やりこじ開けにかかった。



「そうこなくっちゃ! よっしゃ、よこたんっ! 説明を頼む!」
「う、うん」



 よこたんはバックの中から6本の割り箸を収納している空のアルミ缶をコトッ、と机の上に置いた。



「えっと……ここに1から5までの番号を書いた数字の割り箸と、『王様』と書かれたクジがあります。この王様のクジを引いた人は、他の番号の人に何でも命令することができます」



 例えば1番が3番にデコピンをするとか、4番がなにか面白い話をするとかです、とエンジェルよこたんは、やや緊張気味にみなに説明していく。

 そして最後にちょっとだけ困ったような笑みを頬にたたえながら、こう締めた。



「そして、王様の命令は?」

「「「「「ぜったァァァァァいっ!」」」」」



 瞬間、元気の両隣に陣取っていたアマゾンとうさみんの顔がニッチャリ♪ と邪悪に歪んだ。

 流石は俺の残念な友人たちの中でも、トップを独走する2人である。

 下卑げびた思惑が、真夏のJKのブラジャーのごとく、顔面に透けて見えているではないかっ!

 おかげでビックリしたよこたんが「ひぁうっ!?」と可愛らしい悲鳴をあげて、チマッ! と俺の制服の裾を握りこんでくる始末だ。

 可愛いな、オイ?

 抱きしめてやろうか、コイツ?



「みなさん、準備はいいですか? それでは、いきますよ? ……せーのっ!」

「「「「「「王様だ~れだ?」」」」」」



 かくして芽衣の言葉を合図に、欲望まみれの王様ゲームの幕が開けた。

 みなアルミ缶から伸びた割り箸を適当に摘み上げながら、自分の番号を確認する。



「か、確認なんだけどさ? 王様は何でも命令していいんだよな? なっ!?」
「もちろんじゃともっ! なんせ王様なんじゃからっ!」



 そう言って、発情期のわんちゃんのように、フスフスッ! と鼻息を荒げながら自分の番号を確認する、アマゾンとうさみん。

 その間に俺と双子姫は、素早くアイコンタクトを飛ばし合う。



(俺は5番だ)
(ボクは1番だよ)
(アタシが王様ね。宇佐美さんは……2番ね、了解)



 素早く伸びをするフリをして、芽衣にピースサインを向けるうさみん。

 これで元気の番号は、3番か4番に搾られた。

 確率は2分の1、か……。

 チラッ、と芽衣を見ると、元気とアマゾンにバレないように小さく頷くのが分かった。

 どうやら作戦開始らしい。



「あっ、最初はわたしが王様のようですね」



 芽衣が静かにそう告げた途端、アマゾンから盛大なため息が漏れた。

 芽衣は王様のクジをピコピコ動かしながら、



「では4番が2番に『好き』と言ってください」
「4番は……ワイか」
「2番はワガハイじゃなっ!」



 そう言って、うさみんが嬉しそうな声をあげた。

 その表情は、初めてエロマンガを目撃する男子小学生のようにキラキラしていて……うん、やめよう。



「あぁ~、古羊はん? 流石にこの命令はちょっと……」
「ダメだよ、サルノくん?」
「王様の命令は『絶対』ですからね?」



 元気の逃げ道を塞ぎにかかる古羊姉妹に、うさみんが人知れずほくそ笑む。

 これぞ今回俺が立案し、芽衣が中身を詰めた作戦、その名も『猿野元気に宇佐美こころをお持ち帰りさせよう!』計画であるっ!

 その名の通り、元気にうさみんをお持ち帰りさせて、無理やり男女の関係にさせたあげく、その不倫情報を司馬ちゃんに横流して、破局させちゃおう♪ という血も涙も無い作戦だ。

 俺たち生徒会チームが裏で協力し合い、この王様ゲームをうさみんが有利になるように進めながら、最終的に『それじゃ●番が●番をキチンと家まで送り届けること』という命令を下して、元気とうさみんを2人っきりにさせるのが、今回のプロジェクトである。

 もちろんその後のことは、うさみんに丸投げだが……まぁ、アイツも1人の女だ。

 ヤルときはヤルに違いない。

 というワケで、元気とアマゾンの知らないところで俺たちの計画は確実に、かつスピーディーに展開されていき、今に至るのであった。



「おい、猿野! 次がつかえてんだから早くしろっ!」
「ぬぐぐ……ハァ。しょうがない」



 目先の欲望に目がくらんだアマゾンのナイスアシストにより、元気は気乗りしない雰囲気バリバリのまま、隣に居るうさみんと向き合い。



「好きやで」



 と言った。

 うさみん氏、これにはニッコリ☆



「さ、猿野……ッ! ワガハイも大す――」
「はいはいっ! 次いこう、次っ!」



 頬を染めて愛の告白を敢行しようとしたロリ巨乳の言葉を、空気を読まずアマゾンが遮る。

 途端に、乙女のようにトロンっ♪ としていたメス顔うさみんの目が一転。

 まるで一流のアサシンよろしく、今にもアマゾンの息の根を止めんばかりに睨みつける。

 ヤバいヤバいッ!?

 逃げろアマゾン!

 超逃げろぉっ!

 なんて思っていると、元気が「ちょい待ってくれいや」と声を張り上げた。



「どったべ元気?」
「いや、王様の命令なんやがな? ここは王様が命令するんやのうて、それぞれ命令の書いた紙を抽選箱か何かに入れて、王様がソレを引くっていうスタイルに変えんか?」



 おそらく今のやり取りで、何か作為的なモノでも感じ取ったのか、そんな提案をしてくる元気。

 チッ、ヤツの野生じみた直感が成せるワザか。

 俺たちが素早く「どうする?」とアイコンタクトを飛ばし合う前に、これまたアマゾンが勝手に話しを進めてしまう。



「おっ、いいじゃん! オレちょうど抽選箱を持って来てるし、ソレで行こうぜ!」



 そう言って、どこに仕舞ってあったのか、机の下から抽選箱を取り出し、それに入るような紙切れを全員分に配って回すアマゾン。

 なんでこの男は、普通に抽選箱とか持ち歩いてんの?

 バカなの?

 ……バカだったわ。

 得意満面の笑みを浮かべるアマゾンに、コイツ余計なことをっ!? と目で語る女子陣営。

 もちろんニブチン☆マイスターであるアマゾンは、そんなコトお構いなしに「何の命令にしようかなぁ♪」と、ウッキウキで紙切れに命令を書いていく。

 それに続くように元気も書きはじめてしまい……ハァ。

 こうなっては仕方がない、と俺たちは覚悟を決めてお互いに小さく頷いた。



「そうですね。では猿野くんの案で、これからはやっていきましょうか」
「えっと、この紙切れに命令を書けばいいんだよね?」
「三橋倫太郎、くたばれ」
「あれ? 誰か今、オレのこと罵倒しなかった?」



 かくして、俺たちは何枚かの紙切れに命令内容を書いて、抽選箱に入れていった。

 ……これがまさか、神様さえ予想していなかった悲劇、いや喜劇の始まりになろうとは、このときの俺たちは知るよしもなかった。
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