みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第3部 恋するウサギはくじけないっ!

第20話 エロ本好きの下剋上 ~彼女になるためには手段を選んでいられません~

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 お空から辻ちゃんの旦那さんが姿を消して、数時間後の大神家にて。

 時刻は大体夜の8時少し前。

 戦闘不能になった失恋うさみんを連れて、もはや古羊姉妹の溜まり場と化してしまった俺の部屋で、彼女を慰めつつ、今後の方針を話し合っていた。



「うぉぉぉ~んっ!? 猿野ぉ~っ! さるのぉ~っ!?」
「お、お、落ちちゅいて!? 落ちちゅいて、ウサミさん!?」
「まずは洋子が落ち着きなさい? ハァ……毎回コレだと先が思いやられますねぇ。ねっ、士狼?」
「司馬ちゃぁぁぁぁぁ~んっ!? うぉぉ~っ!? 司馬ちゃぁぁぁ~んっ!?」
「……うるさいですよ士狼? 近所迷惑です」
「ねぇ芽衣ちゃん? なんか俺にだけ冷たくない?」



 知らないわよ バカ。と、珍しく人前で素の表情を見せる我らが生徒会長。

 死人に鞭打つどころか、泣きっ面に出来立てのクリーミーパイをぶつけてくる所業を前に、涙がアッサリと引っ込んだ。

 なんでこんなに不機嫌なんだよコイツ? 

 はっは~ん? さては『あの日』だな?

 なんて思っていると、唐突にうさみんが窓のヘリに足をかけ、紐無しバンジージャンプを敢行しようとしていた。



「これは夢、これは夢じゃぁぁぁぁっ! うぉぉぉ、目覚めろワガハイぃぃぃぃっ!」
「待ってウサミさん!? ここ2階、2階だから!? 血迷わないで!?」
「離せぇぇぇぇ~~っ! 今こそ我が肉体を破壊するときっ! 砕け散れ、我がおっぱいよ!」

「おいおい、うさみん? いくら刺激に飢えているからって、そんなハードプレイ、身体に悪いぞ? おっぱいなら、俺が揉んでやるからさ? その……元気出せよ?」

「下手くそぉっ!? 慰め方が下手くそ過ぎるよ、ししょーっ!? もういいから、ウサミさんを引き留めるのを手伝って! 見てないで手伝って!」



 しょうがないので、よこたんと共にうさみんの腰にしがみついて、無理やり部屋の中へと引きずりこむ。



「ハァ、ハァ……どうしようメイちゃん? これ以上サルノくんとシバさんに接近したら、ウサミさんが死んじゃうよ」

「う~ん、ここは作戦方針を変更するべきなんでしょうが……正直に言って手詰まりです」

「なら俺にいい案があるぜ?」
「……ロクでもない匂いがぷんぷんしますね」
「ま、まぁ一応聞いてみようよ? ししょー、いい案って?」



 いまだにシクシクと後悔と懺悔の涙に溺れるうさみんの横で、双子姫の視線を一身に浴びながら、俺は最高にイカス作戦内容を口にした。



「ようはさ、あの2人を別れさせればいいんだろ? なら話は簡単だ。司馬ちゃんか元気、そのどちらかの弱味を握って脅(おど)してしまえばいいんだよ!」

「ッ! その手があったか!」



 いやいくらなんでもそれは……、と難色を示す古羊姉妹。

 そんな彼女たちとは正反対に、「名案じゃっ!」と水を得たお魚さんよろしく、うさみんが元気よく立ち上がった。



「そうじゃ、その通りじゃ! あんな遠回りなコトをせんでも、最初からあの女狐の弱味を握ってしまえばいい話だったんじゃ! なんでこんな簡単なことが思いつかなかったんじゃろうか……下僕1号、おまえは天才か?」

「フッ、それほどでもあるがな」
「いやナイですよ。脅迫なんて、普通に犯罪ですからね?」



 と、俺を脅迫して無理やり生徒会に入部させた女が、なんか言っていた。

 いや、おまえがソレを言うのかよ? 

 そう思うんだったらさ、今すぐ俺がテメェのハリボテおっぱいを揉みしだいている、例の脅迫写真を消してくれや。



「な、なんだか急にやる気になったね、ししょー?」
「当然だ。俺には司馬ちゃんという可愛い後輩を、元気という害虫から守る義務があるからな!」
「普通に親友に彼女が出来て嫉妬しているだけじゃないですか……」
「むっ! 悪い虫はあの司馬葵という女で、猿野は虫ではないぞい!」



 芽衣には呆れた目で、うさみんには怒りの籠った瞳で睨みつけられる。

 おいコラ、そんな目で俺を見るな。

 俺がドMなら興奮している所だぞ?



「まぁ待て。そう怒るな、うさみん。本題はどうやって司馬ちゃんの弱味を見つけ、握るかってことだ」

「あっ! だったら陸上部の人たちに聞いて回るっていうのは、どうかな? ほらっ、シバさん陸上部員だし。何か知っているかもしれないよ?」

「それは無理な話だ、よこたん。陸上部は、もはや司馬ちゃんファンクラブと化している。もし知っていたとしても、話してはくれないだろう」



 むしろ陸上部の男子たちは、司馬ちゃんを元気の魔の手から救出するべく、日夜身体を鍛えている脳筋野郎たちばかりだ。

 まともな情報が得られるとは思えない。



「司馬さんのクラスメイトに聞きこんでみても、多分いい結果は出ないでしょうねぇ」

「ふむ……困ったことになったのじゃ。自白剤を用意しようにも、今は材料が手元に無いし、取り寄せるにしても時間がかかる」

「落ち着け、うさみん。さっき言ったろ、『いい案がる』ってよぉ」



 この場にいる全員の視線が俺に突き刺さる。

 ふふっ、ちょっと優越感に浸れて気持ちがいい。



「この作戦ならば、まず間違いなく、司馬ちゃんの弱味を握ることが出来るだろう。冗談でもなんでもなく、これは確定事項だ」

「す、すごい自信だね、ししょー……」
「それだけその作戦に絶対の自信があるってことですね……嫌な予感しかしませんけど」
「そ、それで!? その素晴らしい作戦とは、一体なんじゃっ!?」



 ショーウインドウに飾られたトランペットを見つめる少年のような、キラキラした目を浮かべるロリ巨乳。

 俺はそんなパツキン巨乳にフッ! と口角を引きあげながら『オペレーション:ヴェルダンディー ~女神の祝福をアナタに~』と名付けられた、今世紀最大の大作戦を口にした。
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