みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第7部 大乱闘スマッシュシスターズ

第3話 SISON NO OWARI ~悲しみのポコチンブレイク編~

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「ほんっっっっと信じらんない! 女の子の家に無断で上がるなんて、普通に犯罪よ、ソレ!? 親しき仲にも礼儀ありって言葉を知らないの?」

「ししょーはもっとデリカシーを身に着けるべきだと思います」
「ほんとソレ! 洋子の言う通りよ、まったく」
「すいません、マジで反省してます……」



 居間に置かれたテーブルで3人仲良く……とは言えないが、俺が買ってきたショートケーキをパクパクと頬張る双子姫さま。

 まったく体調不良を感じさせない、元気ハツラツなその食べっぷりに、つい不満が唇からまろび出てしまう。



「というか、やっぱり体調不良はウソだったんだな。おまえ誕生日だからって、学校をズル休みするのは、生徒会長としてどうかと思うぜ、俺は。妹の方はちゃんと学校に来てんのによぉ」

「ハァ? 何言ってんのよ士狼? 誕生日? 誰の?」
「おまえだよ、おまえ。今日が誕生日だって、よこたんが言ってたぞ」
「い、言ってない! そんなこと、一言も言ってないよ!?」



 ブンブンッ!? と、残像が見えるくらい素早く左右に首を振る、よこたん。

 それどうやってんの?

 俺にも教えて?



「……洋子は『違う』って言っているけど?」

「いやいや、言っていたって! 『メイちゃんは女の子の日だから、そっとしておいてあげて』って!」

「なんで『女の子の日』が誕生日になっちゃうのよ……。そうなったらアタシ、毎月誕生日を迎えるじゃない」

「あれ? 誕生日じゃねぇの? じゃあ何なんだよ『女の子の日』って?」
「えっ!? いや、だから、それは、その……洋子っ!」



 助け舟を求めるように、よこたんに視線を移動させる芽衣。

 だが、よこたんはよこたんで、何故か頬を赤くして無言で「無理です!」と首を横に振っていた。

 2人の行動の意味がよく分からず、「なぁ、女の子の日ってなんだよ?」と再度たずねてしまう。

 そのたびに、芽衣が言いづらそうに「だ、だからそれは……うぅ~っ!?」と口ごもりながら、こそっ、と俺から視線を外した。



「なぁ? 『女の子の日』って、なんだよ?」
「そ、そんなふしだらな事、アタシに聞くんじゃないわよ!」

「ふしだら?『女の子の日』って、ふしだらなの? どの辺が、ふしだらなワケ? なぁなぁ、どの辺がふしだら?」

「ちょっ、やめて? そんなビー玉みたいにんだ目で、アタシを見ないで!?」



 俺から逃げるように顔を逸らす芽衣。

 その度に「ねぇねぇ、何がふしだらなの? ねぇねぇ? ねぇねぇ?」と、どちて坊やよろしく、何度もしつこく声をかける。

 瞬間、ぷっつーん! と芽衣のこめかみで、怒りの導火線が弾けた。



「うるせぇぇっ!? どこのどちて坊やだ貴様ぁぁっ!? アタシは一休さんじゃないんだよ! 一休みどころか、永遠の休みをくれてやろうか? あぁん?」

「お、落ち着いてメイちゃん! 言葉づかいがヤクザさんチックだよ!?」



 ウガーッ! と荒ぶる姉を何とかなだめようとする妹。

 だがその程度ではメイ・コヒツジ神の逆鱗げきりんは収まる事などもちろんなく、ジロリッ! と俺をめつけながら、宣言するかのように、こう言った。



「そんなに知りたきゃ教えてあげるわよ! 生理よ、生理! 生理痛でお腹が痛くて休んでたのよ、バァーカ! どうだ参ったか!?」

「せ、せいりつう?」
「そうよ……って、何言わせてんのよ!? このデリカシーナシ!」



 夕日に負けないくらい顔を赤くする芽衣。

 それが怒りからくるモノなのか、それとも羞恥からくるモノなのかは、俺には判断できなかった。

 なんせ、俺も同じように顔を赤くしていたんだから。

 芽衣の口から飛び出た衝撃ワードに、何て返事をすればいいのか分からず「す、すまん……」とかすれた声をあげるので精一杯。

 妙な沈黙が場を支配する中、何故かよこたんも、俺たちと同じように顔を赤くして、押し黙ってしまう。

 く、苦しい……っ!?

 このままじゃ、陸にいるのに窒息してしまう!?

 お、落ち着け、シロウ。

 トークの魔術師オオカミ・シロウよ。

 この程度の窮地など、幾度いくどとなくくぐり抜けてきたじゃないか。

 さぁ、今こそおまえの口先が火を吹くときだ!

 俺はこの場を爆笑の渦に叩き落とすべく、満を持して口をひらいた。



「な、なぁ? ちょっとした疑問なんだけどさ? 生理痛って、どれくらい痛いの?」



 言って後悔する。

 違う、絶対この切り口じゃない。

 げんに古羊姉妹も「なに言ってんだ、コイツは?」みたいな顔してるし……。

 ほんと、何言ってんだ俺?

 というか、ナニ聞いてんだ、俺は?

 女の子に聞く話題じゃねぇよ、コレ。

 おいおい、トークの魔術師返上か?

 下ネタの貴公子として、世界を轟かせるか?

 ……なんだよ下ネタの貴公子って?

 それ普通の変態だよね?

 もう自分で自分が分からない!

 と自分自身に絶望していると、芽衣が小さくめ息をこぼしながら。



「『どれくらい』って言われても、痛みにも種類があるし。なんとも言えないわね」
「そ、そうだよね。人によってはお腹が重く感じたりするし、一概いちがいには説明しづらいよね」



 なんだかんだ言いながらも、俺の話に乗ってきた双子姫。

 たまにコイツらの優しさで、瞳からお小水が漏れそうになる。

 ほんとデリカシー無くてごめんね?

 心の中で何度も2人に頭を下げながら、つい好奇心に負け、この話題を広げてしまう。



「じゃあ具体的に『どれくらいの痛み』なのか、教えてくれない? 例えば、母ちゃんにビンタされたくらいの痛みとかさ」

「具体的に……そうねぇ」



 芽衣は「ふむ」と下顎をすりすり擦りながら、



「士狼が今まで生きてきた中で『1番痛かったヤツ』って、なに?」

「俺が今まで生きてきた中で、1番痛かったヤツ? そうだなぁ……。まぁ、ごくありふれた話しにはなるが、好きだった女の子に、おティムティムを蹴り飛ばされたときが、肉体的にも精神的にも1番痛かったかなぁ」

「じゃあその痛みが1日中、お腹の奥からする感じね」
「ふぁっ!?」



 思わず変な声が漏れてしまった。

 えっ?

 ウソ、マジで? 

 そ、そんなに痛いの?

 一瞬冗談かと思って芽衣の顔を確認するが……アカン、マジの顔だ。



「う、ウソだろ!? 丸1日、腹の奥からポコチン・ブレイクだと!?」
「1日というか、数日ね」
「えっ!? じゃあエブリディ、腹の奥からポコチン・ブレイクなの!?」



 しゃ、洒落しゃれにならねぇ!?

 毎日ポコチン・ブレイク☆カーニバル・ファンタズム♪ とか……そんなのSEKAI NO OWARIじゃん!

 いや、どちらかと言えば、SISON NO OWARIか。

 ヤベェ、ドラゲナイしている場合じゃねぇぞ、コレ!



「お、女の子は毎月そんな痛みと戦っているのか……。す、スゲェ! 女の子、マジスゲェ! というか、おまえらスゲェ!」



 なんだか目の前に居る2人が、偉人のように思えてきたぞ。

 俺が尊敬の眼差しを2人に送っていると、よこたんが訂正するかのように口をひらいた。



「あっ、で、でもね、ししょー? 女の子の身体ってね、男の子の身体と比べて、痛みに対する耐性が強いみたいだよ」

「マジでか。初めて聞いたぞ、ソレ」



 つまりアレか?

 女の子はオギャ―ッ! と生まれた瞬間から、防御力が高めに設定されているってことか?

 おいおい、なんかズルくねぇか、ソレ?

 俺なんか、オギャ―ッ!? と生まれた瞬間から、ステータス状態異常『下痢』なのに。

 いやでも、それくらい痛いなら、防御力に極振りしたくもなるよなぁ。

 バカにしてごめんね、メイプルさん?

 なんて思っていると、突然、芽衣が何か思い出したかのように「あっ!」と口をひらいた。
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