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第8部 ぽんこつMy.HERO
第19話 (チラシを)つくってあそぼ!~俺のお股がわくわくさん編~
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大和田ちゃんと行動を共にし始めて、はや数日。
選挙活動期間まで残り1日を前にした、午後4時過ぎの放課後。
俺はいつもの空き教室に……集合することなく、大和田ちゃんに連れられ、彼女の自宅へと足を伸ばしていた。
「ほほぅ? これが大和田ちゃん宅か。中々に味があるじゃないか」
「普通にボロいって言えばいいし」
世辞はいらねぇ! とばかりに、冷めた口調でそう吐き捨てる、マイ後輩。
確かに俺の目の前にあるオンボロアパートは、お世辞にも綺麗とは言えない。
壁には先住民が貼ったと思われるエロいシールがいたる所に貼られてあり、卑の意志が受け継がれている。
正直、今にも倒壊しそうで怖い。
が、そんなことは、今は関係ない。
そう、大事なのは、俺が! 後輩の! 女の子の! 家に! お邪魔するということだ!
どれだけボロかろうが関係ない。
女の子の後輩の家に、放課後お邪魔する。
それだけでプライスレス。
他のことなんて、些末なことじゃないか。
「先に言っておくけど、パイセン。チラシとポスター作りのために、しぶしぶ家に上げてあげるんだからね? 余計な動きを見せたら、即追い出すから」
「わかってる、わかってる! ……ちなみに、お家の人は?」
「……前にも言ったと思うけど、お義母さんは基本的に仕事場で寝るから、家に居ない。お兄ちゃ――兄ならまだ、この時間は帰ってきてないハズだし」
「ほほぅ? つまり、このイケてる先輩と、密室で2人きりというワケだな?」
「ちなみに、もしウチにエロいことをしようモノなら、『例のあの写真』をパイセンのお母さんに見せてやるから」
なるほど。
それはつまり『俺に死ね』と言っているんだね?
わかります。
俺はガクガク!? と身体を震わせながら、しきりに首を縦に振った。
そんな先輩の姿に満足したのか、「じゃ、行こっかパイセン☆」と、大和田ちゃんは軽い足取りで錆びついた年代モノの階段を上がって行った。
ギシギシッ! と、今にも底が抜けそうな階段をゆっくりと登りながら、ふと前を歩く大和田ちゃんのいる方向に顔を上げると……ほほぅ?
黒の水玉か、いいセンスだ。
「さて、ここがウチの家……って、なんでパイセンは鼻血を出してるし?」
「気にしないで。ただ迸る情熱が、鼻から溢れ出ただけだから」
「……まぁパイセンがおかしいのは、いつものことか」
特に言及することもなく、1人納得した大和田ちゃんは、一番右端の角部屋の前で立ち止まった。
どうやらココが彼女の家らしい。
ドアには先住民の痕跡たる卑猥なシールなどが貼り付けられていて、非常ににぎやかだ。
大和田ちゃんはポケットから家の鍵を取り出すと、すぐさま鍵穴へ挿入。
そして開かれるヘブンズゲート。
どうでもいいけどさ、女の子が鍵穴に鍵を差し込むシーンって、なんか妙にエロいよね!
なんなら御来光が差していると言っても過言ではない。
近い将来、俺がこの国を手中に収めた暁には、広辞苑に
【御来光:若い女性が鍵穴に鍵を差し込むこと。またはその光景。そこはかとなく不思議なエロさを感じる】
という意味合いを付け加えやろうと、心に決めた。
「ほんと、変なことしたら殺すからね? 比喩ではなく、マジで?」
「お邪魔しまぁ~す!」
爽やかに後輩からの殺害予告を受け流しながら、ぬるりっ! と、赤ちゃん用ウエハースよりも薄っぺらいドアの向こう側へ、身を滑り込ませた。
そして肺いっぱいに広がる、フレッシュな女の子の香り!
途端に、あまりの情報量の多さに、目の前が白く点滅する。
気がつくと、玄関先で膝をついている自分がいた。
「ちょっ!? どったのパイセン!? 急に崩れ落ちて!? お、お腹でも痛いし?」
「あぁ、ごめん。後輩の女の子の家にやってきたトキメキ指数で、気を失いかけたわ。いやぁ、良い匂いがするね、大和田ちゃん家!」
「……マジでナチェラルに気持ち悪いなぁ、コイツ」
おっとぉ?
何故か可愛い後輩の株が、暴落しているぞぉ?
突如として起きたリーマンショックを前に、何とかリカバリーしようと慌てて取り繕うべく口を開き、
「ところで、あそこで干されているピンクのブラジャーって、大和田ちゃんの? センスいいね」
「いや取り繕えし――って、あぁぁぁぁぁっ!? ちょっ、タイム! 1回タイム! パイセン、外に出てて!」
奥の部屋で干された可愛らしい刺繍が施された下着を目視した瞬間、後輩の何とも言えない声が、オンボロアパートを激しく揺らした。
刹那、強制的に回れ右をさせられた俺は、そのまま「外に出てろ!」とばかりに、グイッ! と彼女に背中を押されてしまう。
「待って!? 追い出す前に1つ言わせて? ――いいセンスだ」
「出てけぇぇぇぇっ!?」
バタン! と無慈悲に閉まる扉。
そんな扉の前で「ふむ」と、思索に耽ってしまう。
いやはや、制服の上からでも分かってはいたが、中々立派なモノを持っていらっしゃる。
あれでまだ、高校1年生だというのだから、驚きだ。
まったく、これからの将来が楽しみで仕方がないね!
ざっと見ての数値なのだが、目算で『芽衣の試される大地』×10くらいの大きさはあったな。
いや、それは大和田ちゃんに失礼か。
なんせ0に何をかけようが、0は0なのだから。
なんなのアイツ?
ゼロのメイなの?
ヤダ、すごい爆発魔法とか使ってきそう。
ほんとそろそろ我らが女神さまの眠れる乳――失礼、噛みました――眠れる獅子を起こした方がいいのかもしれない。
頑張って、芽衣の女性ホルモン!
なんてことを考えていると、突如背中から尋常ならざる寒気が体中を駆け抜けた。
まるで『それ以上余計なことを考えたらコロスゾ?』と、誰かに言われているかのような……うん。
これ以上考えるのはよそう。
俺はまだ生きていたい。
『心の底からごめんなさい』と、胸の内で謝っていると、薄っぺらいドアの向こう側から、息の上がった大和田ちゃんがチラリッ! と、顏だけ出してきた。
「ハァ、ハァ、ハァ……お、お待たせ」
「大丈夫、大和田ちゃん? すっごい疲れているみたいだけど?」
「ゴタクはいいから、さっさと中へ入れ。パイセンを家に入れている所を、誰かに見られたくない!」
はよ入れ! と、入室を許可する我が後輩。
俺は付き合いたての男子中学生よろしく、ドキドキと緊張しながら、大和田ハウスへと再び突貫。
「おぉ……っ! 外観とは似ても似つかぬ綺麗なお部屋」
「とりあえず、奥の部屋で待ってるし。お茶くらい淹れるから」
そう言って彼女の脇を通り、8畳ほどありそうな畳の部屋まで移動する。
部屋の中央にちゃぶ台がドンッ! と設置されており、『まぁ座れや』と俺に語りかけてきたので、おとなしく腰を下ろす。
……ことなく、その場で大きく背伸びをした。
「んん~ッ! さて、と。それじゃさっそく大和田兄やんの――エロ本でも探すか」
「持ってないし。そもそも兄は、そんなモノ読まない!」
バンッ! と、勢いよくちゃぶ台に湯呑みを置く、プリティガール。
その瞳は氷のように冷たく、ぶっちゃけ先輩に向けていい目じゃない。
「冗談、冗談! マイケル・ジョーダンだってばさぁ!」
「バカなこと言ってないで、さっさとチラシ作るし……って!? ナニ勝手に引き出しを開けようとしてるし!?」
「いやぁ、一応友達の家に行った時の『お約束』をしておこうかと」
「それは男友達の家に行ったときの『お約束』っしょ! なにシレッと女の子の部屋を家探ししようとしてるし!? ちょっ!? マジでそこの引き出しは洒落にならないから!?」
部屋の隅にあるオシャレな感じの収納ボックスに手を伸ばしている俺の手首を、ガッチリと締め上げる可愛い後輩。
キリキリッ! と、跡が残りそうなくらい圧迫されるマイリスト。
この必死な反応……はは~ん?
さてはここに一繋ぎの大秘法があるとみた!
「大丈夫、大丈夫! 中学の超芋臭い格好をした昔の大和田ちゃんのアルバムとか見ても、絶対に笑わないから!」
「芋臭くないしっ! 昔からウチはハイパープリチー美少女だし!」
「じゃあ『わたしの考えた最強の美少女』とかいう黒歴史満載ノートが出てきても、誰にも言いふらさないから!」
「そんなものは無い! 一切ない! いやマジで!」
グググッ! と、尋常ならざる力が俺の腕を引っ張る。
が、この程度、芽衣との力比べに比べたら児戯にも等しい。
「フハハハハッ! 力こそパワーッ!」
「負けてたまるかぁぁぁぁぁっ!? 燃えろ、ウチの中のナニカぁぁぁぁぁぁっ!?」
獣の如き雄叫びをあげながら、もはや身体ごと俺にぶつかろうとしてくる、大和田ちゃん。
結果、俺は「うぉっ!?」という驚きの声と共に、半ば彼女に押し倒されるような形となって、畳の上に転がされた。
彼女の桃色の髪が、サラサラと俺の顔をなぞる。
もはや唇を少し動かせば、簡単にキス出来るまでの距離。
状況が理解出来ていないのか、「はい?」と首を傾げる彼女。
そんな彼女の下、俺はハーレムラノベに出てくるチョロインのように、ポッ! と頬を染めながら、
「や、優しくしてね?」
と、処女を散らす覚悟を決めた。
「おいコラ!? 何を勝手に覚悟完了してるし!? ちょっ、目を瞑るな! こっちを見ろ!?」
「そ、そんな、見つめ合ってだなんて……。シロウ、恥ずかしい(ポッ)」
「頬を染めるな、頬を!? 気持ち悪い!」
お父ちゃん、お母ちゃん、ごめんなさい。
シロウは高校より先に、処女を卒業します。
目の前でピーチクパーチク囀る後輩を無視して、神への祈りを捧げていると、
――ガチャッ。
と、あの赤ちゃん用ウエハースよりも薄っぺらいドアの開く音がした。
えっ?
「痛っ!? ……す、すみません、タカさん。家まで送って貰ちゃって……」
「気にするんやなか。それよりも、ケガは大丈夫かいな? まだ痛むか?」
「えぇ、少しだけ。でも明日になれば。完治する程度のケガですか……ら……あっ?」
「「あっ」」
バッチリ。
そうバッチリである。
扉の向こうから現れたのは、この部屋の主にして、我らがキンタマ兄さんこと、大和田信愛お兄ちゃん、その人であった。
今日も今日とて九頭竜高校の真っ白な制服を身に纏いながら、何故かボロボロの姿のまま、鷹野の肩を借りて立っている、俺の心のお兄ちゃん。
その瞳はバッチリクッキリと、俺たちの姿を捉えていた。
さぁ想像してごらん?
家に帰ってきたら、実の妹が男を押し倒している光景を。
……うん、確実に夜のプロレス案件だね!
俺なら黙って扉を閉じるよ!
が、どうやら大和田のにぃにぃは、そうではなかったらしい。
兄者は「タカさん、もう結構です」と、ハードゲイの肩から手を離すと、そのままニッコリ♪ と、俺たちの方へ満面の笑みを浮かべてみせた。
「ただいま帰りました、信菜さん」
「お、おかえり、お兄ちゃ……アニキ」
「それから、ようこそ我が家へ、大神様」
「お邪魔してます、お兄たん」
どこからともなく3人で「ハハハハッ!」と笑い合う。
アットホームな、ほのぼの♪ した雰囲気が、俺たち4人を包み込む。
やがて、ひとしきり笑い終えた大和田のあにぃは、ゆっくりと俺のもとまで近づき、そっと妹をどけ、優しく俺の襟首を握りながら、
「さて、それでは――歯ぁ食いしばれや。喧嘩狼?」
「お、犯されるぅぅぅぅ!? 誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
その日、俺の泣き叫ぶ声が、森実の町に轟いたとか轟かなかったとか、真相は定かではない。
選挙活動期間まで残り1日を前にした、午後4時過ぎの放課後。
俺はいつもの空き教室に……集合することなく、大和田ちゃんに連れられ、彼女の自宅へと足を伸ばしていた。
「ほほぅ? これが大和田ちゃん宅か。中々に味があるじゃないか」
「普通にボロいって言えばいいし」
世辞はいらねぇ! とばかりに、冷めた口調でそう吐き捨てる、マイ後輩。
確かに俺の目の前にあるオンボロアパートは、お世辞にも綺麗とは言えない。
壁には先住民が貼ったと思われるエロいシールがいたる所に貼られてあり、卑の意志が受け継がれている。
正直、今にも倒壊しそうで怖い。
が、そんなことは、今は関係ない。
そう、大事なのは、俺が! 後輩の! 女の子の! 家に! お邪魔するということだ!
どれだけボロかろうが関係ない。
女の子の後輩の家に、放課後お邪魔する。
それだけでプライスレス。
他のことなんて、些末なことじゃないか。
「先に言っておくけど、パイセン。チラシとポスター作りのために、しぶしぶ家に上げてあげるんだからね? 余計な動きを見せたら、即追い出すから」
「わかってる、わかってる! ……ちなみに、お家の人は?」
「……前にも言ったと思うけど、お義母さんは基本的に仕事場で寝るから、家に居ない。お兄ちゃ――兄ならまだ、この時間は帰ってきてないハズだし」
「ほほぅ? つまり、このイケてる先輩と、密室で2人きりというワケだな?」
「ちなみに、もしウチにエロいことをしようモノなら、『例のあの写真』をパイセンのお母さんに見せてやるから」
なるほど。
それはつまり『俺に死ね』と言っているんだね?
わかります。
俺はガクガク!? と身体を震わせながら、しきりに首を縦に振った。
そんな先輩の姿に満足したのか、「じゃ、行こっかパイセン☆」と、大和田ちゃんは軽い足取りで錆びついた年代モノの階段を上がって行った。
ギシギシッ! と、今にも底が抜けそうな階段をゆっくりと登りながら、ふと前を歩く大和田ちゃんのいる方向に顔を上げると……ほほぅ?
黒の水玉か、いいセンスだ。
「さて、ここがウチの家……って、なんでパイセンは鼻血を出してるし?」
「気にしないで。ただ迸る情熱が、鼻から溢れ出ただけだから」
「……まぁパイセンがおかしいのは、いつものことか」
特に言及することもなく、1人納得した大和田ちゃんは、一番右端の角部屋の前で立ち止まった。
どうやらココが彼女の家らしい。
ドアには先住民の痕跡たる卑猥なシールなどが貼り付けられていて、非常ににぎやかだ。
大和田ちゃんはポケットから家の鍵を取り出すと、すぐさま鍵穴へ挿入。
そして開かれるヘブンズゲート。
どうでもいいけどさ、女の子が鍵穴に鍵を差し込むシーンって、なんか妙にエロいよね!
なんなら御来光が差していると言っても過言ではない。
近い将来、俺がこの国を手中に収めた暁には、広辞苑に
【御来光:若い女性が鍵穴に鍵を差し込むこと。またはその光景。そこはかとなく不思議なエロさを感じる】
という意味合いを付け加えやろうと、心に決めた。
「ほんと、変なことしたら殺すからね? 比喩ではなく、マジで?」
「お邪魔しまぁ~す!」
爽やかに後輩からの殺害予告を受け流しながら、ぬるりっ! と、赤ちゃん用ウエハースよりも薄っぺらいドアの向こう側へ、身を滑り込ませた。
そして肺いっぱいに広がる、フレッシュな女の子の香り!
途端に、あまりの情報量の多さに、目の前が白く点滅する。
気がつくと、玄関先で膝をついている自分がいた。
「ちょっ!? どったのパイセン!? 急に崩れ落ちて!? お、お腹でも痛いし?」
「あぁ、ごめん。後輩の女の子の家にやってきたトキメキ指数で、気を失いかけたわ。いやぁ、良い匂いがするね、大和田ちゃん家!」
「……マジでナチェラルに気持ち悪いなぁ、コイツ」
おっとぉ?
何故か可愛い後輩の株が、暴落しているぞぉ?
突如として起きたリーマンショックを前に、何とかリカバリーしようと慌てて取り繕うべく口を開き、
「ところで、あそこで干されているピンクのブラジャーって、大和田ちゃんの? センスいいね」
「いや取り繕えし――って、あぁぁぁぁぁっ!? ちょっ、タイム! 1回タイム! パイセン、外に出てて!」
奥の部屋で干された可愛らしい刺繍が施された下着を目視した瞬間、後輩の何とも言えない声が、オンボロアパートを激しく揺らした。
刹那、強制的に回れ右をさせられた俺は、そのまま「外に出てろ!」とばかりに、グイッ! と彼女に背中を押されてしまう。
「待って!? 追い出す前に1つ言わせて? ――いいセンスだ」
「出てけぇぇぇぇっ!?」
バタン! と無慈悲に閉まる扉。
そんな扉の前で「ふむ」と、思索に耽ってしまう。
いやはや、制服の上からでも分かってはいたが、中々立派なモノを持っていらっしゃる。
あれでまだ、高校1年生だというのだから、驚きだ。
まったく、これからの将来が楽しみで仕方がないね!
ざっと見ての数値なのだが、目算で『芽衣の試される大地』×10くらいの大きさはあったな。
いや、それは大和田ちゃんに失礼か。
なんせ0に何をかけようが、0は0なのだから。
なんなのアイツ?
ゼロのメイなの?
ヤダ、すごい爆発魔法とか使ってきそう。
ほんとそろそろ我らが女神さまの眠れる乳――失礼、噛みました――眠れる獅子を起こした方がいいのかもしれない。
頑張って、芽衣の女性ホルモン!
なんてことを考えていると、突如背中から尋常ならざる寒気が体中を駆け抜けた。
まるで『それ以上余計なことを考えたらコロスゾ?』と、誰かに言われているかのような……うん。
これ以上考えるのはよそう。
俺はまだ生きていたい。
『心の底からごめんなさい』と、胸の内で謝っていると、薄っぺらいドアの向こう側から、息の上がった大和田ちゃんがチラリッ! と、顏だけ出してきた。
「ハァ、ハァ、ハァ……お、お待たせ」
「大丈夫、大和田ちゃん? すっごい疲れているみたいだけど?」
「ゴタクはいいから、さっさと中へ入れ。パイセンを家に入れている所を、誰かに見られたくない!」
はよ入れ! と、入室を許可する我が後輩。
俺は付き合いたての男子中学生よろしく、ドキドキと緊張しながら、大和田ハウスへと再び突貫。
「おぉ……っ! 外観とは似ても似つかぬ綺麗なお部屋」
「とりあえず、奥の部屋で待ってるし。お茶くらい淹れるから」
そう言って彼女の脇を通り、8畳ほどありそうな畳の部屋まで移動する。
部屋の中央にちゃぶ台がドンッ! と設置されており、『まぁ座れや』と俺に語りかけてきたので、おとなしく腰を下ろす。
……ことなく、その場で大きく背伸びをした。
「んん~ッ! さて、と。それじゃさっそく大和田兄やんの――エロ本でも探すか」
「持ってないし。そもそも兄は、そんなモノ読まない!」
バンッ! と、勢いよくちゃぶ台に湯呑みを置く、プリティガール。
その瞳は氷のように冷たく、ぶっちゃけ先輩に向けていい目じゃない。
「冗談、冗談! マイケル・ジョーダンだってばさぁ!」
「バカなこと言ってないで、さっさとチラシ作るし……って!? ナニ勝手に引き出しを開けようとしてるし!?」
「いやぁ、一応友達の家に行った時の『お約束』をしておこうかと」
「それは男友達の家に行ったときの『お約束』っしょ! なにシレッと女の子の部屋を家探ししようとしてるし!? ちょっ!? マジでそこの引き出しは洒落にならないから!?」
部屋の隅にあるオシャレな感じの収納ボックスに手を伸ばしている俺の手首を、ガッチリと締め上げる可愛い後輩。
キリキリッ! と、跡が残りそうなくらい圧迫されるマイリスト。
この必死な反応……はは~ん?
さてはここに一繋ぎの大秘法があるとみた!
「大丈夫、大丈夫! 中学の超芋臭い格好をした昔の大和田ちゃんのアルバムとか見ても、絶対に笑わないから!」
「芋臭くないしっ! 昔からウチはハイパープリチー美少女だし!」
「じゃあ『わたしの考えた最強の美少女』とかいう黒歴史満載ノートが出てきても、誰にも言いふらさないから!」
「そんなものは無い! 一切ない! いやマジで!」
グググッ! と、尋常ならざる力が俺の腕を引っ張る。
が、この程度、芽衣との力比べに比べたら児戯にも等しい。
「フハハハハッ! 力こそパワーッ!」
「負けてたまるかぁぁぁぁぁっ!? 燃えろ、ウチの中のナニカぁぁぁぁぁぁっ!?」
獣の如き雄叫びをあげながら、もはや身体ごと俺にぶつかろうとしてくる、大和田ちゃん。
結果、俺は「うぉっ!?」という驚きの声と共に、半ば彼女に押し倒されるような形となって、畳の上に転がされた。
彼女の桃色の髪が、サラサラと俺の顔をなぞる。
もはや唇を少し動かせば、簡単にキス出来るまでの距離。
状況が理解出来ていないのか、「はい?」と首を傾げる彼女。
そんな彼女の下、俺はハーレムラノベに出てくるチョロインのように、ポッ! と頬を染めながら、
「や、優しくしてね?」
と、処女を散らす覚悟を決めた。
「おいコラ!? 何を勝手に覚悟完了してるし!? ちょっ、目を瞑るな! こっちを見ろ!?」
「そ、そんな、見つめ合ってだなんて……。シロウ、恥ずかしい(ポッ)」
「頬を染めるな、頬を!? 気持ち悪い!」
お父ちゃん、お母ちゃん、ごめんなさい。
シロウは高校より先に、処女を卒業します。
目の前でピーチクパーチク囀る後輩を無視して、神への祈りを捧げていると、
――ガチャッ。
と、あの赤ちゃん用ウエハースよりも薄っぺらいドアの開く音がした。
えっ?
「痛っ!? ……す、すみません、タカさん。家まで送って貰ちゃって……」
「気にするんやなか。それよりも、ケガは大丈夫かいな? まだ痛むか?」
「えぇ、少しだけ。でも明日になれば。完治する程度のケガですか……ら……あっ?」
「「あっ」」
バッチリ。
そうバッチリである。
扉の向こうから現れたのは、この部屋の主にして、我らがキンタマ兄さんこと、大和田信愛お兄ちゃん、その人であった。
今日も今日とて九頭竜高校の真っ白な制服を身に纏いながら、何故かボロボロの姿のまま、鷹野の肩を借りて立っている、俺の心のお兄ちゃん。
その瞳はバッチリクッキリと、俺たちの姿を捉えていた。
さぁ想像してごらん?
家に帰ってきたら、実の妹が男を押し倒している光景を。
……うん、確実に夜のプロレス案件だね!
俺なら黙って扉を閉じるよ!
が、どうやら大和田のにぃにぃは、そうではなかったらしい。
兄者は「タカさん、もう結構です」と、ハードゲイの肩から手を離すと、そのままニッコリ♪ と、俺たちの方へ満面の笑みを浮かべてみせた。
「ただいま帰りました、信菜さん」
「お、おかえり、お兄ちゃ……アニキ」
「それから、ようこそ我が家へ、大神様」
「お邪魔してます、お兄たん」
どこからともなく3人で「ハハハハッ!」と笑い合う。
アットホームな、ほのぼの♪ した雰囲気が、俺たち4人を包み込む。
やがて、ひとしきり笑い終えた大和田のあにぃは、ゆっくりと俺のもとまで近づき、そっと妹をどけ、優しく俺の襟首を握りながら、
「さて、それでは――歯ぁ食いしばれや。喧嘩狼?」
「お、犯されるぅぅぅぅ!? 誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
その日、俺の泣き叫ぶ声が、森実の町に轟いたとか轟かなかったとか、真相は定かではない。
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