みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第9部 聖夜に水星は巡航する

第17話 GTO ~グレート・チ●コ・オオカミ~

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 かくして大神士狼少年の事件簿が幕を開けたワケだが……。



「何でよこたんと亀梨少年が居るワケ?」



 野球部が練習しているグラウンドに向けて歩いている俺の隣には、今日も今日とてお胸のバイオ兵器をたぷたぷ♪ 揺らしているよこたんと、そのバイオ兵器に釘づけの亀梨少年が居た。



「め、メイちゃんがね? 『士狼1人だとやっぱり不安だから、洋子も一緒に行ってあげて』って」
「オイラはジャーナリストすからね! 真実を追求するのがオイラの仕事っす!」
「相変わらず亀梨少年は熱いなぁ……」



 それにしても、「Dカップ以下は女じゃない!」と豪語していた亀梨少年が、こうも爆乳わんのバイオ兵器に釘づけになるということは、やっぱりよこたんのヤツ、D以上はあるんだな。

 な、なんだろう?

 年甲斐もなく、オラ、わくわくすっぞ!



「うぅ~、なんだか邪な視線を感じるよぉ……」



 よこたんは何故か顔をしかめながら、

 ――むぎゅっ! 

 と、その細腕で己の核弾頭を抱きしめるような形で、亀梨少年から隠そうとする。

 が、余計に胸のデカさを強調するポーズとなってしまい、気がつくと亀梨少年が身体を『く』の字に折り曲げて、満面の笑顔で鼻血を出していた。

 別に俺が見る分には構わないのだが、なんていうか……うん。

 他の男共に、マイ☆エンジェルよこたんをエロい目で見て欲しくなかった。

 俺は何となく不愉快になったので、亀梨少年の視界から爆乳わん娘が見えないように、さり気なく壁になる位置へと移動してしまう。

 別に彼氏でも何でもないのに、そんな事をしてしまう自分の矮小さが、少しだけ情けなかった。



「あ、ありがと、ししょー。……えへへ」



 ぽしょりっ!、 と頬を赤くしながら、うつむき気味にお礼の言葉を口にするマイ☆エンジェルに、背中が痒くなってくる。

 う~ん、なんか妙な雰囲気だぞ?

 ここは1つ、とびきりの1発ギャグで、この場を爆笑の渦へと叩き落とすべきか? 

 なんて事を考えていたから、つい『ソレ』が校舎の影から飛び出してきた瞬間、反応が遅れてしまった。



 さて、話は少し過去へ遡るが【わが目を疑う】という言葉をご存じだろうか?



 意外なモノを見た時、自分の目が正常に動いていないじゃないかと疑うことを指す言葉なのだが……案外この世の中、わが目を疑う出来事が多いと俺は思う。

 とくに俺が自分の目を疑ったのは、アレだ。

 中学1年の冬、体育での出来事だな。

 その日の体育は男女混合で、体育館でバスケットボールをやっていた。

 そんな中、一際ひときわ輝いていたのが、【動けるデブ】の異名を持つ我が偉大なる級友、けるたんだった。

 けるたんは、1度見た漫画の技を完全にコピー出来るナゾの能力があり、試合直前に《黒子●バスケ》を読んでいたヤツは、コートのどの位置に居ようが、スリーポイントを決めるという荒業を披露して、女の子にキャーキャーッ! 言われていた。

 そして体育の授業も終わり、みな脱ぎ捨てていたジャージを拾い上げていたタイミングで、ソレは始まった。

 当時クラスのマドンナであった美少女、中谷さんが青い顔で、こう呟いた。

『わたしのジャージが無い……』と。 

 瞬間、我らがマドンナの危機と知った野郎共が、一斉に体育館内を捜索し始めた。

 が、一向に中谷さんのジャージは見つからない。

 これはひょっとして、誰かが中谷さんのイイ匂いがするジャージを持ち帰ろうとしているんじゃないのか?

 そんな陰謀論までささやかれ始めたタイミングで、俺は発見した。発見してしまったのだ。



 我が友、けるたんの名前が刺繍されたジャージを。



 もちろん、キスすると子どもが出来ると本気で信じていた、当時の純粋無垢なピュアピュア☆ハートを持った俺は、素直にソレを、けるたんの元へと持っていた。

 ……のだが、なんか着てるのね、アイツ。上着を。

 どうした、ブラザー? と、キョトンとしているヤツの胸元には、さも当たり前のように『中谷』の文字が踊り狂っていて……もうどうしたらいいのか、分からなかった。

 あまりにも分からな過ぎて、思わず『僕は、影だ』と某バスケット漫画の主人公のようなセリフを口にしていた。

 ブラサー? と、ヤツが真顔で小首を傾げだしたときは、そのあまりのプリチーさに、首だけ抱きしめてやろうか? と、本気で思った。

 やがて俺の沈黙に気づき始めたクラスメイト達が、言葉を失い、中谷ちゃんの嗚咽おえつだけが静かに体育館に木霊した。

 中谷ちゃんが泣いちゃうのも、無理はない。

 なんせ奴のしたたる肉汁――間違えた、汗で、中谷ちゃんのジャージはドロドロになっているし、サイズが合っていないから、ピッチピチ♪ のパッツパツ☆ だし、けるたんの身体からはジャージを貫通して湯気が上がっていて、もう軽いギアセカンド状態だし……俺が女の子でも号泣している自信がある。

 おまけに、当事者であるハズのけるたんは『みんな、どうしたの?』と、まだ気づいていない有様で……正直、アレほど我が目を疑った出来事はなかった。

 そして今、ソレと同じか、ソレ以上のインパクトが、俺達の目の前で起こっていた。



「か、亀梨少年! 股間がっ! 股間がっ!?」
「うん? なんすか、大神先輩? 股間? オイラの股間に何かあるんずか?」



 そう言って、亀梨少年は自分の下半身に視線を落とした。

 彼の視線の先、そこには。



 ――亀梨少年の股の間に噛みついて離れない、ヘビが居た。



「……きゅぅ」
「うわぁぁぁ~っ!? か、カメナシくぅ~ん!?」
「亀梨少年が死んだ!?」



 バタンッ! と、勢いよく背後からぶっ倒れる亀梨少年。

 その勢いにビビったのか、亀梨少年の股に食いついていたヘビは、パっ! と離れて、何処どこかへ消えて行った。

 俺とよこたんは、ヘビが居なくなった事を確認するなり、慌てて倒れている亀梨少年へと近づいた。



「大丈夫か、亀梨少年!? ムスコは無事か!?」
「その前に保健室だよ、ししょーっ!」
「そ、その前に……毒を吸い出してください。毒を……」



 苦し気に、そう口にする亀梨少年。

 いや、毒を吸い出せって言われても……。



「ど、毒を吸い出すって、どうやって? よこたん、知ってる?」
「確か、噛まれた箇所に口をつけて、チュ~って吸い出すんじゃなかったっけ?」
「噛まれた箇所を?」
「チュ~、と」
「「…………」」



 俺達の視線が、自然と亀梨少年の股間に集まった。

 アレを、チュ~と。

 亀梨少年のアレを、チュ~♪ と。

 ……うん、MU・RI☆



「ごめん、よこたん。俺には無理だ」
「諦めないで、ししょー!? 人命が掛かってるんだよ!?」
「でも、男のアレを吸うだなんて、何のプレイだよ!?」



 ファーストキスだってまだなのに、アレにキスなんか出来るか!

 渋る俺達に痺れを切らしたのか、亀梨少年の怒声が俺達の鼓膜を震わせた。



「言い争ってないで、はやく毒を吸い出してください! 古羊先輩!」
「えっ、ボクぅっ!?」
「この男、さり気なく指名してきやがったぞ」



 一体ナニを期待しているのか、亀梨少年の股間が、傍目から見ても分かるほど、むくむくっ! 成長し始めた。



「ほらっ! 先輩が渋るから、もうこんなに腫れちゃいましたよ!?」
「い、いやぁぁぁぁぁっ!? ムクムクしてる!? ムクムクしているよぉぉぉっ!?」
「もう完全にナニする気マンマンじゃねぇか、コイツ」
「はやくっ! はやく毒を吸い出してください、ハリーアップ!」



 もう完全にエロい事する気マンマンなのが見え見えの、下心マシマシの瞳でラブリー☆マイエンジェルに熱い視線を送る亀梨少年。

 すげぇ心配して損したわ。

 マジで俺らの心配を返して欲しい。



「それだけ元気なら問題ないな。行くぞ、よこたん」
「えっ? わわっ!? ひ、引っ張らないでよ、ししょーっ!?」



 爆乳わん娘の手を握って、スタスタとグラウンドの方へ歩いて行く。

 途端に亀梨少年の焦った声音が、背後から響いてきた。



「あ、あれ!? ちょっ、待ってくださいよ先輩!? お、オイラを置いて行かないでぇっ!?」



 慌てた様子で俺達のあとを付いてくる亀梨少年を無視して、俺は野球部の居るグラウンドへと足を進めた。
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